インフレの水準を考える~前半

日本の所得水準が大幅に低下していると報じられている。OECDのデータによれば、1990年には日本の所得水準は、22か国中12位であった。ところが、30年経った2020年には、35カ国中24位になっている。2020年の所得水準は第1位の米国の半分にも達していない。1990年から2020年までの30年間に、日本の所得水準は4%上昇したが、スイスでは26.5%、米国では49.2%も上昇している。『過去30年で賃金が伸びなかったことで世界における相対的な地位が下落した。所得水準は落ち、為替も円安になり、海外旅行にも行けなくなり、実に嘆かわしい』という記事も散見される。

家計相談を受けるFPとしては、収入のほかに、インフレにも着目しておきたい。1990年から2020年までの30年間における、インフレは0.03%である。びっくりすることに、日本では、過去30年間、消費者物価指数はほぼ変動していないということがわかる。30年間の米国の年平均のインフレ率は2.4%、スイスは1.1%になっている。

これらを基に、過去30年間でモノの値段がどの程度上がったかを計算してみると、日本0.6%、米国61.0%、スイス23.2%となる。賃金上昇率から物価上昇率を差し引くと、日本3.4%スイス3.3%米国△11.7%となる。少し評価が変わったであろうか。

さらに、FPが考えておきたいことは、その人やその家族のお金の収支そのものではなく、お金の収支を通して得られる幸福度(満足度)ということになる。「所得が伸びない=幸福度が低下する」と決めつけるのはよくないと思う。

(続く)

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

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