プリンシプル・ベースの考え~その1

金融庁が、2020年9月に「顧客本位の業務運営に関する原則(改訂案)」を公表した。この改訂案は、2020年8月に公表された、金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「顧客本位の業務運営の進展に向けて」(以下「報告書」)を踏まえての改訂ということになる。そして、報告書で、謳われているのは“プリンシプル・ベース・アプローチ”である。プリンシプル・ベースについては、平成19年当時の、金融庁長官がウェブサイト上で解説してくれている。引用させてもらうと、『プリンシプル・ベースのアプローチは規制対象の金融機関が尊重すべき重要ないくつかの原則や規範を示したうえで、それに沿った行政対応を行っていくということです。金融機関の自主的な取り組みを促進する、あるいは金融機関の経営の自由度を確保するといった点でメリットの大きいものです。』とある。プリンシプル・ベースについて、簡単に説明するのであれば、「規制当局から事細かな規制は列挙しませんが、原則を提示します。原則をどのように実践するかは金融機関で考えてください」ということであろう。

プリンシプル・ベースの対局となる概念が、ルール・ベースである。金融商品取引法は、有価証券の定義を行ったり、法律違反となる行為を列挙したり、法律にすべてが記載されているというルール・ベースに基づいている。法令順守という観点からすると、ルール・ベースの金融商品取引法はとても対応しやすい。なぜなら、「法律を守っていれば違反はない」と考えられるからである。一方で、金融庁は、「顧客本位の業務運営は、ルール・ベースでは達成できないので、プリンシプル・ベースを採用する」と、原則を通じて伝えている。そして、報告書では、原則が十分に現場に浸透していないとも言及している。

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

インシュアランス掲載記事