銀行窓販の問題と改善点~その1

先日、雑誌の特集記事で、外貨建て保険について執筆してほしいという依頼があった。外貨建て保険については、毎年のように記事を執筆させていただいているので、今年はどのような角度から記事を書こうかと考えていたら、編集部から届いた企画書はいつもの年とは少し違う内容であった。編集部からの要望は、『外貨建て保険が合理的な選択となる消費者の属性』であった。私の記事の後に掲載される記事は、国民生活センターへのヒアリング記事になっていた。

確かに外貨建て保険に関するトラブルは多いと聞いている。国民生活センターが、2019年4月に公表した「国民生活センターADR制度開始後10年の申請状況等について」を見ると、商品・役務別で最も申請件数が多いのが、「金融・保険サービス」であり、その中でも最も申請件数が多いのが「生命保険」になっている。同センターのウェブサイトでは、ADRの実施状況とその結果概要を公表してくれているが、外貨建て保険に関して目を覆いたくなるような案件が掲載されている。そして、私が見た限りでは、そのすべてが銀行窓販によるトラブルであった。

公表されている銀行側の言い分を見ていると特徴がある。それは、『銀行はしっかりしたルールを作っています』、『販売においてはそのルールをしっかり守っています』、『だから、銀行は悪くありません』という論理である。10年以上前になるが、リーマンショックの後、保険会社は変額年金保険の販売を一斉に停止した。

その時、銀行員のみなさまを対象にした講習で講師をさせていただいたことがある。私は、「みなさまは、お客様のフォローにどのようなことをしていますか?」と問いかけた。その時、関西地方のとある銀行の行員の方が答えられた内容をいまだに私は覚えている。彼は、『うちの銀行では資産が半分以下に目減りしたお客様のところには必ず訪問するようにしています。コンプライアンス上そのように決まっています』と回答した。私が尋ねたかったことは、その先である。「資産が半額に減ったお客様にどのようなフォローをしているのですか?」ということである。お客様に損失が発生した時に個別にフォローできないのであれば、最初から、そういったリスクのある商品を扱うのが間違いなのである。

<続く>

この記事は、週刊インシュアランスに掲載したものを許可を得て転載しています。