“ジェロントロジー”という言葉を聞いたことがあるだろうか。日本応用老年学会によれば、『老年学(ジェロントロジー)は、人間の加齢変化や社会に内在する問題を研究し、高齢社会のあらゆる課題を解決するための新しい学問』と定義されている。ジェロントロジーが注目されるにようになったことの背景は、人生100年時代といわれるように寿命が延びたこと、そして、その結果として高齢者の数が増えたことによる。
高齢社会対策を推進することを目的にしている高齢社会対策基本法では、「社会参加」、「地域社会」、「健康」の3つを基本理念として掲げている。この法律では、前文で、「雇用、年金、医療、福祉、教育、社会参加、生活環境等に係る社会のシステムが高齢社会にふさわしいものとなるよう、不断に見直し、適切なものとしていく必要」を指摘しているが、これは私たちの日常社会生活全体でシニア(高齢者)の問題を考える必要があることを意味している。つまり、現在の日本では、どのような社会問題を考えるにしてもシニアの意向は無視できない。だから、ジェロントロジーの視点が必要になってくるというわけである。
金融ジェロントロジーという言葉もよく耳にするようになった。この言葉は、すでに述べてきたジェロントロジーの金融版といえるべきものである。健康寿命とは、WHO(世界保健機関)によって提唱された新しい健康指標で、「日常生活に制限ない期間の平均」のことを指す。健康寿命の考え方そのものはジェロントロジーの領域に含まれるものであるが、「資産にも寿命がある」と指摘されることが多い。資産を取り崩していくと、いつかは資産が底をつく。これが資産寿命といわれるものである。健康寿命を延長できるようにするのと同時に、資産寿命も延長できるようにしなければならない。資産寿命の話は、金融ジェロントロジーの入り口である。日本の金融資産の3分の1は、70歳以上の人が保有しており、2035年にはその割合は4割に達するとみられている。
(続く)
この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。