終生期とケア・プランニング~後編

さて、日本医師会は、「人生の最終段階における医療・ケアに関するガイドライン(令和2年5月)」を公表した。このガイドラインには、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)という考え方が盛り込まれている。ACPはADを一歩前に進めた概念である。ADは、あくまで書面。一方的なコミュニケーションということになる。ACPは、ケア・プランニングという言葉が使われていることから、医療介護計画ということになる。ACPはADと対立しているわけではなく、ADを包括した概念と説明されている。そして、計画を立てる段階で、本人は自分の意思を書面に残すだけでなく、関係者にも伝えることになる。それゆえ、コミュニケーションは双方向的になる。医師や看護師といった医療関係者、日常の生活を支援する介護関係者、そして、ご家族が本人の意思を確認しながらプランニングできるのであれば、理想的といえるであろう。

今回の医師会のガイドラインには、医療と介護の連携が明記されている。医師会の作成したガイドラインなので、かかりつけ医が中心になって多職種チームを構成するとなっている。ガイドラインには明記されていないが、多職種チームは、かかりつけ医を中心としたマルチディシプリナリーチームが想定されている。マルチディシプリナリーチームでは、それぞれの専門家が、協力しながら自分たちの専門分野を担当するというイメージである。

私見では、ACPという概念を活かすには、かかりつけ医が中心になるよりも、ケアマネージャーが中心になったほうがよいと思う。なぜなら、関係者が多くなるほど調整が必要になり、その調整役を(時間的な制約がある)医師が担えるとは思えないからである。

さらに私見を加えると、このチームに成年後見人やファイナンシャルプランナー、税理士など医療・介護分野以外の専門家も加えるとよいと思う。終生期の医療をどうするのかを考えるときには、自分の死後の財産や家族のことも考えたいと思うのが普通だからである。ACP(アドバンス・ケア・プランニング)になぞるのであれば、AFP(アドバンス・ファイナンシャル・プランニング)であり、ALP(アドバンス・ライフ・プランニング)である。

現役世代であれば、死亡リスクとライフプランニングは分離できるかもしれないが、シニア世代になると死亡リスクとライフプランニングは不可分なものになっていく。にもかかわらず、それぞれの専門分野の間には確たる連携が構築されていないのが現状である。ACPのさらに発展したものができることを期待したい。

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この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

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終生期とケア・プランニング~前編

『終末期という言葉は使わないでほしい。私の尊敬する日野原先生は終末期という代わりに、終生期という言葉を使っています』。筆者が理事を務めるシニアコンシェルジュ協会のセミナーで指摘されたことである。私たちの協会は、それ以来、終末期を言う言葉を避け終生期という言葉を使っている。わたしたちにとって終生期をどう生きるかはとても大切な問題である。

エンディングノートは作成する機関・立場によってその内容が異なるものである。私たちの協会は、葬儀、散骨、遺品・生前整理、成年後見、相続、保険などの専門家がメンバーになっている。そのため、エンディングノートは、リタイアメントから、成年後見、生前整理、相続、葬儀までを幅広くカバーする内容になっている。そして、わたしたちのエンディングノートでは、終生期に対する準備のページが設けてある。このページは、「終末医療指示書(AD:アドバンスディレクティブ)」に類するものである。

エンディングノートは2016年(平成28年)に第1版が作成されている。その時期は、全日本病院協会が「終末期医療に関するガイドライン」を公表した時期でもあった。このガイドラインに、「終末医療指示書[1]」が明記されていた。私たちの協会も、事前に了解をいただいたのち、公的機関の公表している「終末医療指示書」を参考にして当該ページを作成した。


[1] ガイドラインでは、「終末期医療における意思表明(リヴィング・ウイル)」とされている

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