家計が困っている~後半

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現在の、日本の現状を考えると、家計レベルでやりくりできなくなっている世帯にこそ、そこから脱出できる道を示すことが必要なのだと思う。国や地方公共団体の給付金は、逆効果であろう。生活困窮者自立支援法の「家計改善支援」などがイメージとしては近い。ただし、同法は第2のセーフティネットを形成するための法律で、抵抗感もあるだろうから、同じような内容のサービスを提供するのがよいだろう。多くの世帯で陥っているのは、何にいくら使って、今月はどの程度余裕がある、または、不足するという見積もりの欠如である。

『これだけ余るので投資しましょう』とか、『この保険に加入しましょう』といった解決策ではない。自分たちで1か月の収支が計算できるように、そして、その先には収支が見積れるように、その方法を伝えていくことが必要である。それでは、誰がそのサービスを提供するのかという問題になるが、その前に、誰もが使える社会インフラが整備される必要がある。収入と費用を入力したら、あるいは、どこかから数値をダウンロードしたら、誰もが見てわかるようなものに加工してくれるアプリのようなものである。

もし、国がこのアプリを開発し、セキュリティに責任を持ち、その普及に努めてくれるのであれば、保険会社はそのアプリの結果を利用すればよい。企業が担当すると、このゲートウェイの機能を持つアプリを自社で開発しようとし、その結果、相互に互換性のないものが出来上がってしまう。だから、コアとなる部分は国が開発・運営し、無償で国民に提供すればよい

家計部門が復活しなければ、日本の経済は復活しない。そして、家計部門は、投資ができないので困っているのではなく、負債の管理がうまくできないので困っている。やりくりすることができなくなっているのである。企業に対する減税と同じような水準で、家計のやりくり支援ができれば、給付金を連発するより効果的な経済対策になる

 

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

イ ンシュアランス掲載記事

 

家計が困っている~前半

2022年の家計調査(貯蓄・負債編)が、5月に公表された。日本の世帯の状況を簡単に分析できるので家計調査は、有益な統計である。2022年、日本の世帯の資産は、普通預金等に35%定期預金等に24%生命保険に20%株式や投資信託などに12%に分配されている。

20年前の2002年と比較してみると、その比率が下がったのは、定期預金等と生命保険である。逆に比率が上がったのは、普通預金と有価証券である。ここで、問題にしたいのは比率が上がった資産である。定期預金はほとんど利息が付かないから、他に投資することもできないので普通預金に寝かせておこうという行動が、普通預金等の比率の上昇につながっている。実質的な“タンス預金”といってもよいであろう。有価証券は、2002年10%であったものが、2022年には12%になっている。ようやく数値が上がったと思うのは間違いで、政府がiDeCOやNISAで大きく“貯蓄から投資へ”の流れを作っているにも関わらず、たった2%の上昇と考えるのが正しい。

投資教育が不足しているというのが一つの結論であろうと思うが、ここではもう一つの側面を考えたい。それは、日本の世帯の貧困化が進んでいるということである。携帯のキャリアなどが提供する「後払い方式」。サブスクリプション方式を使って高額商品を販売するなど、売り手側は、家計に隠れて大きな負担を強いる手段を拡充させている負債の知識もなく、また、購入時にそれほど考えない消費者は、簡単に隠れた負債を抱え込む。入ってくる収入(給料)はあまり上がらない。そのため、家計の中でやりくりできる範囲が非常に狭くなっているのが実情である。

直感的な話になって申し訳ないが、やりくりできる家計を維持できている世帯は、投資の必要性を理解できるし、投資を始めることにあまり抵抗はないであろう。

後半に続く

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