保険業界の契約動向~後半

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さて、日本の生命保険会社(日本社)には「転換」という制度がある。そこで、転換を新契約と同列と考えて、「新契約+転換契約」という指標で比較してみよう。

この指標では、件数ベース、金額ベースともに2016年度、2020年度ともに日本生命がトップになる。第一生命も、2016年度の件数ベースで第7位になっている以外は、すべて、第2位になっている。新契約の金額の比較で上位にランクされた、ソニー生命やプルデンシャル生命は、2020年度、「新契約+転換契約」の比較でも、それぞれ、第3位と第5位にランクインしている。転換は、囲い込んでおいた自社の顧客と新たに契約を締結するもので、保険会社にとっては、まさに顧客の囲い込みに相当する。

日本社各社が、どの程度、転換契約に依存しているのか分析してみよう。ここでは、「転換契約÷新契約」という指標で比較する。

対象となる会社は、日本生命、第一生命、住友生命、明治安田生命、朝日生命、太陽生命、富国生命、大樹(三井)生命、大同生命、アクサ生命、マニュライフ生命の11社である。

金額ベースでみると、2016年度、住友生命など7社では、「転換契約÷新契約」の数値が100%を超えている。2020年度では、第一生命など6社が100%を超えている。転換の制度が、生命保険会社の経営に不可欠な制度になっていることがわかる。

それでは、どの程度の期間で転換を求められているのであろうか。ここでは、「保有契約÷転換契約」という指標で見ることにする。数値が20を切る水準を分水嶺と考えると、2016年度においては、件数ベース、金額ベースともに2社。2020年度は、件数ベースで5社、金額ベースで2社が該当する。

「どのような商品の売れ行きが好調で新契約の業績が伸びた」とか、「平均すると既契約者は〇年ごとに契約を転換している」といった情報が、消費者に届くようになると、保険商品を選ぶ際に、有益な情報になると思われる。

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

イ ンシュアランス掲載記事

 

保険業界の契約動向~前半

株式会社保険研究所が発行している「インシュアランス統計号」の別冊「生命保険統計号」は、保険会社の営業に関する統計情報が満載されており、大変役に立つ。さて、最近発行された、都道府県別契約成績〔個人保険・個人年金編〕(2016~2020年度)を使って、2016年度から2020年度の業界の変化を数字で追ってみたいと思う。以下、数値は、すべて「インシュアランス統計号」の個人保険ベースのデータに基づいて計算したものである。

各社別で、保有契約(件数)の全体に占める各社の比率(占率)を比較すると、2016年度、上位3社は日本生命、アメリカンファミリー生命(以下、アフラック)、JA共済の順になっている。2020年度になると、日本生命、アフラック、第一生命の順になっている。

(保険)金額ベースの占率を計算すると、2016年度は、日本生命、JA共済、第一生命の順であり、2020年度は日本生命、第一生命、住友生命の順になっている。保有契約ベースで比較すると、2016年度、2020年度で大きな変動はなく、伝統的な生命保険会社が上位を占めている。

販売動向の勢いが反映される新契約について見てみよう。件数ベースで、2016年度のトップはかんぽ生命、2020年度のトップは日本生命。金額ベースでみると、いずれもトップは日本生命。ちなみに、かんぽ生命は2020年度、件数ベースでも、金額ベースでもトップ10に入ってこない。営業自粛の影響が反映されていると推測される。

新契約の金額ベースの占率のトップは日本生命であるが、2位以下は、ソニー生命、プルデンシャル生命、FWD富士生命、ジブラルタ生命と外資系の保険会社が続いている。2016年度でも、プルデンシャル生命(第4位)、ソニー生命(第5位)、ジブラルタ生命(第8位)は含まれていたが、この3社はいずれも順位を上げ、FWD富士生命は初めて上位10社にランクインした。

(続く)

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

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