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二つ目は、意見具申についてであった。意見具申とは、上官の意見と逆の考えを伝えることである。自衛隊という組織上、『意見具申などもってのほか』と思われそうであるが、区隊長は私たちに意見具申しろと伝えてくれた。
ただし、「意見具申をしたうえで、命令が変わらなかったら、その命令に従え」というのが区隊長の教えであった。この教えも、実は、民間企業で働くようになっても忠実に守ってきた教えである。
『組織はそのトップの能力以上に成長しない』といわれることがある。これは、部下から意見具申がされるかどうか、そして、その意見具申が時に応じて採用されるかどうか。そういう風土が備わっていない組織だと、『トップの能力以上に成長しない』という意味だと理解している。今となって、区隊長の言われたことは「『よい意見具申は、上司にとっても役に立つし、その上司が懐の深い人だと良い意見具申は聞いてくれるから、一度話してみなさい』ということであった」と理解している。
ところで、意見具申という言葉は、『アイデア出し』という言葉に置き換えると、いまどきの話になる。特に、非正規のメンバーからアイデア出しをもらうことができれば、組織は成長できるように思える。ところが、非正規のメンバーの組織への帰属意識が低く、言われたことだけをこなしているというのはよくありがちである。
マネジメント層だけでなく、いろいろな立場のメンバーが、アイデア出しを行うことによって、相互に気づきが生まれ、組織が成長していく。意見具申は、組織の成長のための原動力ということであろう。
この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。