金利と保険~後半

前半はこちら

今後、金利はどのようになるだろうと質問を受けることがあるが、本当のところはわからない。ただし、市場のコンセンサスは確認することができる。それが、イールドカーブである。縦軸にイールド(利回り)、横軸に残存年数をとって、その国の最もリスクの低い債券である国債について、イールドをプロットし、プロットした点をつないだものをイールドカーブという。

 

 

あなたが人にお金を貸すことを考えてみよう。1年後に返済されるケースと、10年後に返済されるケースを比較して、どちらのケースの金利を高くするだろう。10年後に返済されるケースの金利が高くなることが、合理的な考え方である。同じことが、国の借金(国債)にも当てはまる。だから、イールドカーブは、通常、右肩上がりになる。しかし、現在の、米国のイールドカーブは、そのようになっていない。右肩下がり、あるいは、フラット化している。

このことが意味しているのは、将来、金利が低下するということである。なぜ金利が低下するかといえば、企業がお金を借りなくなる、消費が停滞して価格が上がらなくなるからである。それは、つまり、景気の停滞を意味している。米国のイールドカーブの背景にあるコンセンサスは、近い将来、米国の景気は停滞・後退することである。そうなると、株式市場は低迷する。「株式市場=投資信託」と考えるのであれば、『景気が低迷してきたときは、投資信託より、保険が有利』という結論にたどり着く。

実は、この結論を上手に使っているのは、マネー雑誌である。景気が低迷すると、特集が組まれるのは保険、景気が良いと、投資信託を中心とした特集が組まれることが多いことにお気づきだろうか。

注意していただきたいのは、保険が相対的に有利になっているのは、外貨建て保険であって、円建て保険については、あまり魅力を感じないことである。

なぜなら、日本の金利は低いままであるからである。財務省によれば、令和4年末には、普通国債の残高は1,026兆円になると見込まれている。ただし、残高は年々増加しているのであるが、利払費は横ばい状態にあることは注目すべきである。そして、その理由は、国債の金利が下がっているからである。日本には金利が上がると国債の利払いの負担が増えるというマイナス要因が存在することがわかる。これかを考えると、日本の金利が上昇するイメージはあまり持てない。金利が上がる前に、景気が悪くなって金利を上げられないのではないだろうか。

最近の景気や市場の動向を考えると、今は、新たに投資を始めるより、新たに保険に加入するのに適したタイミングなのかもしれない。ただし、ここでいう保険とは外貨建て保険のことであり、円建て保険の魅力度はそれほど上がっているとも思えない。

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

イ ンシュアランス掲載記事

 

金利と保険~前半

米国は4.25~4.5%、ユーロ圏は2.5%、オーストラリアは3.1%(2022年12月22日時点)

各国の政策金利の水準である。日本の無担保コール(オーバーナイト)はマイナス金利になっている。ほかの条件が同じであれば、貯蓄をするのであれば、日本円ではなく、外貨で行いとと考えるのが普通の考えである。

日本の人が、外貨で貯蓄をするには、外貨に換える必要がある。外貨の需要が高まり、市場には、円安の圧力がかかる。この状態で、一番うれしいのは、外貨をすでに保有している人である。円安の効果で為替差益が期待できる。

保険への影響はどのように考えればよいだろうか。すでに外貨建て保険に加入していて、その保険の予定利率等が市場の環境に応じて変動するタイプの場合、金利上昇の恩恵を、直接、享受することができる。

これから保険に加入しようとしているケースでは、長期間、予定利率等が変動しないタイプの保険でメリットを受けることができる。そのメリットとは、予定利率等が高くなることによって保険料が安くなるというメリットである。

続く

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

イ ンシュアランス掲載記事