収益性と存在価値~前半

生命保険会社を二つの側面から考えてみたい。一つは、収益を挙げるという営利企業としての側面もう一つは、組織を維持するという側面である。

収益を挙げるためには、売り上げを上げる必要がある。製造業と異なり、形のないものを売る生命保険ビジネスは、売り上げが販売担当者の力量に依存する側面が強い。だから、販売担当者(募集人)の教育に注力する。

利益率の高い商品を売ることも大切なことである。かつては、単に保険料収入が高いというだけで評価されていたが、その保険の生み出す将来価値までも踏まえた収益性(エンベデットバリューのようなもの)で評価するようになった。収益性を表示して販売推進するわけではないので、コミッションを通じて、商品ごとに推進の度合いに差をつける

新商品も収益性の観点から位置付けることができる。同じ商品を販売し続けると、商品説明のスキルが上がる、募集人ごとの説明力のムラがなくなるといった良い面があることは事実である。しかし、新たなマーケットの開発の余地がなくなる、募集人のモチベーションが下がるなどの欠点もある。だから、新商品を投入する。それゆえ、新商品は、全く新しいコンセプトというより、既存の商品の改良版のほうが好まれる。時代より半歩先を行く新商品が受け入れられやすいと思う。

続く

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

イ ンシュアランス掲載記事

生命保険と意思決定支援~後半

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例えば、『長年加入していた終身保険を解約するかどうか判断する』ことを考えてみよう。自分で判断できないのであれば、誰かに相談して、どのようにするか決めるしかない。

「終身保険の解約返戻金が900万円で、保険金額は1,000万円」といったような情報を取り寄せて、解約と契約継続の差異を説明する。「保険料の支払方法が終身払であるなら、保険料払込期間を変更して同時に減額する」といった選択肢を見つけ出す。こういった対応は保険の知識の備わったFPが担当するのがよいであろう。

一方、認知レベルの低下した人に対しては、簡単な図を用い、あるいは、意思決定を補助する道具などを使って説明を行うことが必要になる。福祉施設の職員が得意とする分野である。

成年後見制度を利用する予備軍と考えるとわかりやすいと思うが、この人たちに対して金融商品に関する意思決定の支援をする人や組織は希薄である。

シニア世代のために必要なことは、意思決定の代理ではなく、意思決定の支援である。生命保険は、その入り口(新契約)については保険会社だけで対応できるが、その出口(保全)については生命保険会社だけでは対応することが難しい

意思決定の支援のためには、ご本人の意思の表出が必要であり、意思が表出できないときはその意思を推定する必要がある。そしてそのためには、日ごろから継続してご本人にコンタクトしておく必要がある。見知った人であれば、ご本人の意思をより正確に把握することができる。

介護・医療サービスの担当者や、行政サービスの担当者などが考えられる。成年後見制度を利用していないシニアであっても、日ごろ付き合いのある介護・医療あるいは行政の担当者から要請のあったFPなどの金融の知識を持った人が支援に加わることにより、意思決定支援がよりスムーズに行われるはずである。

その際、保険会社が、(1)ご本人以外の人からの要請に応じてデータを提供する(2)意思決定支援にかかる費用の一部を負担することができれば、生命保険は、本当の意味で“生涯保障”を謳う金融商品といえる。

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

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