数十年ぶりに物価の上昇が話題になり、参議院選挙の争点にもなっている。与党側は、「日本の物価上昇は欧米に比べて低く抑えられている。だから政権運営はうまくいっている」と主張している。一方、野党側は、「確かに、日本の物価は欧米ほど上がっていないが、欧米は賃金が上がっている」と主張している。この主張、どちらも間違っていない。しかし、二つ合わせるともっとわかりやすい主張になる。「賃金の伸びから物価の上昇を差し引いた数値がプラスであれば、私たちのくらしは安心」ということである。
日本が世界各国と比べて少し異なるのは、政府の借金が多いことである。対GDP比で、日本政府の債務(国債残高)は250%を超えている。アメリカは133%、イギリスは109%、ドイツは73%であることを考えれば日本の国の債務の大きさがわかるであろう。2022年度末には1,026兆円になると見込まれている日本の国債の発行残高をベースに簡単な試算をしてみよう。もし、利回りが1%なら、金利負担額は1026×1%=10.3兆円である。利回りが2%であれば、その倍となり、20.6兆円となる。金利が1%増加するだけで、支出は10兆円も変動する。2022年度予算の国の歳出(支出)は107.6兆円なので、10兆円は9%に相当する。欧米各国に比べて、日本は「金利が上がってほしくない」と思うより強い理由が存在することがわかる。金利が上がらなければ、物価は上がらない。日本の物価が上がらないのは、金利が上がらないことが一因である。
(後半に続く)
この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。