FPのニーズとその伝え方~後半

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ところで、講義を担当するとき気を付けていることは、『受講生は金融機関の営業をするためにFP講座を受講しているわけではない』ということである。あくまで、社会人としての基礎知識を身につけてもらうための手段としてFP資格を使っていると言ってもよいだろう。受講生の主な関心事は働くことである。働くために、FPの知識が役に立つということを伝えればよい。FPの資格を取って金融の仕事に就くというよりは、どのような仕事に就いてもFPの知識は役に立つと伝えるように心がけている。残念ながら、たった15回のコースなので、受講生が本当に知りたいところにたどり着けないというのも事実である。だから、私たちの仕事は、FPに関する全体像をなんとなくわかってもらうことなのかもしれない。

技術的な面では、私たちの講座でも、一昨年から動画を取り入れている。10年ほど前、大学で講座を担当していたときも、講義の動画を撮って学生はいつでも見られるようになっていた。

新型コロナの影響で、私たちはYou tubeやzoomといったツールをより使うようになった。これらのツールは比較的安価で利用できるので、FP3級の講座で、授業の復習動画を作成して受講生向けに配信した。社会人になると、授業の復習にあてる時間があまりないかもしれないので、効果的に授業の内容を復習してほしいという理由で動画を作成した。

動画を見た行政側の担当者が気に入ってくれたようで、今年は、FP2級のコースも立ち上げることができた。FP2級のコースでは、復習動画だけではなく、教科書の内容をあらかじめ学ぶことができる予習動画も加えてもらった。FP3級に比べて、対策すべき量が増え、その質もワンランク高いものが求められるFP2級なので、対面の授業で対応できないところを動画にして補おうという考えである。『移動しながら、家事をしながら、スマホでちょっと見られる動画』が目指すところである。

さらに、対面の授業については、新型コロナの再流行のリスクをヘッジするために、zoomによるライブ配信を同時に行うことになった。実は、「ライブ配信をしても視聴する側の通信環境によって見られない人が多いので配信することは良いことか?」という問題を提起された。そこで、通信環境が整わない人は通所してもらって、リモートがよいという人はzoomを利用してもらうことで決着した。おそらく、通所が基本でどうしても参加できないときはリモートという参加者が多くなるだろうと予想している。

FPの知識・ノウハウを身につけたいというニーズ、そして、その伝え方も数十年のうちに様変わりしたことを実感する。

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

イ ンシュアランス掲載記事

 

FPのニーズとその伝え方~前半

毎年この時期になると、FP(ファイナンシャル・プランニング)講座の準備に追われる。担当する講座は、川崎市母子・父子福祉センターが主催する講座受講生の大半はシングルマザーである。

最初に、FPの資格を取得したいというニーズがあったのは、金融機関であった。販売員(募集人)にFPの資格を取らせて販売の強化につなげようとする金融機関がお金を出して資格の取得を推進した。次にニーズが顕在化したのは学校である。大学では、学部を問わず、「FP=金融教育」と認識してもらうことができた。さらに、単位が取得できるとなれば、FP講座は人気の講座になった。さらに、2022年からは、高校で金融教育が始まった。

頭の中でイメージしていただきたい。最初に、金融商品を取り扱う側にFPの考え方が導入された。そして、大学や高校でFPが授業に取り入れられると、若い世代の人たちの共通の認識としてFPがインプットされていく。年を経るにしたがって、FP教育を受けた人は少しずつ拡大されていく。FP教育を受けていない人は、すでに大人になっていた人たちだけになってしまう。そういった環境の下、シングルマザーの方にFPの知識・ノウハウを身につけてもらうことはとても意義がある。

つづく

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

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