2021年の投資環境~その1

2020年のふり返り

2020年はコロナウィルスの問題で、東京オリンピックは延期され、世界各国でロックダウンが相次ぎ、IMFの統計によれば、世界全体のGDP成長率はマイナス4.4%になった。日本でも、経済活動の維持と医療崩壊の防止をテーマに、メディアでは、連日、議論が交わされている。

一方で、株式市場に目を転じてみると、少し違った光景が目に入ってくる。2020年の世界全体の株式市場は、円ベースで約8%の上昇になった。米国株式は約10%、中国株式は約15%の値上がりになっている。『景気が減速しているのに、株価だけ上昇するのはおかしいのではないか』という意見もある。

図表1 資産クラスごとの騰落率

PER(株価収益率)で測る

少し、データに基づいた話をしよう。PER(株価収益率)という言葉を聞いたことがある人は多いであろう。PERの意味は、「投資家からの評価である株価が、その企業の1株当たり利益の何倍になっているかを示す指標」である。株価と利益を比較するのはなぜ?と思うかもしれないが、株式の性質を考えると理解できるだろう。つまり、株主は企業の最終利益を受け取る権利がある。そして、その権利は、配当というしくみによって実現される。配当の原資はどこかといえば、利益である。利益もないのに配当を出しているとその企業は倒産する。だから、投資家はその企業の収益は配当を支払うための力とみなすわけである。配当を支払うための力と現在の市場評価(株価)を比較したものがPERと考えればよい。

PER(株価収益率)

株価収益率は、アメリカでは、「PE Ratio」と表記されています。YahooやBloombergなどでPERを探しても載っていないと思うときは、PE Ratioを探してみてください。

では、現在、PERはどのくらいかというと、アメリカの代表的な株価指数であるSP500の予想PERは2020年12月末時点で27.53倍日本の代表的な株価指数である日経平均株価の予想PERは、2021年1月22日現在、26.09倍。ちなみに、PERには前期ベースの数値もあり、こちらは、SP500が34.24倍、日経平均株価は20.93倍である。前期ベースが前期の利益をベースに計算したものであり、予想PERは企業の業績予想を基に計算したものである。資産運用でPERというと、一般的には、予想PERを指す

図表2 2020年の月次騰落率

さて、PERの平均はだいたい20倍程度である。利益のすべてを配当に回したとして、20年あれば、配当で投資金額を回収できる。PER20倍の水準とはそのように解釈することができる。それでは高いPERはなぜ生じてしまうのだろう。それは、企業収益が急激に上昇するようなことが見込まれるときである。それ以外の状態でPERが30倍を超えていると少し要注意である。ちなみに、SP500の過去を振り返って、前期ベースのPERが30倍を超えた時は、リーマンショックのときとITバブルの時である。ちなみに、いずれも、そのあとに株価が値下がりしている。いわゆる「調整が入る」という状態である。株価が50%以下に下がることにはならなかったが、それに近い状態まで調整が入っている。

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※ この記事は2021年1月に執筆されたものです

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

インシュアランス掲載記事

2月第3週の市況

2021/2/15    月

米国市場では、バイデン政権の景気対策への期待感から、エネルギー、金融、素材といったセクターやテクノロジー関連の大型銘柄が堅調で市場は上昇。新型コロナウィルスの感染者数や入院者数は減少に転じている。ロイターは、大型景気対策の影響で年内にはコロナ以前の水準に経済が戻ると予想。ウォルト・ディズニーは堅調な決算を公表したがすでに株価に織り込み済みであったので、株価は下落。欧州市場でも株価上昇。IT部品のASMLが世界的な半導体の不足をコメントし、株価が3%上昇。化粧品のロレアルは売り上げの急激なリバウンドを予想し、株価は8か月来の高値を付けた。オランダの銀行INGは四半期決算が好調で6.7%株価上昇

2021/2/16    火

米国市場はプレジデントディで休場。欧州市場では、米国の景気対策とワクチンの普及に対する期待感「リカバリー・トレンド」から1年来の高値を付けた。銅価格が8年来の高値を付けたことから、Rot Tinto,BHP Group,Anglo Americanといった鉱業関連が上昇。銀行やエネルギーも「リカバリー・トレンド」を追い風に上昇。フランスのコングロマリットVivendiはユニバーサル・ミュージックに出資する計画を公表し、同株は19.6%上昇。また、Vivendiの株主であるGroupe Bolloreも14.6%株価上昇。ロイターの調査では、エコノミストの第1四半期のユーロ圏のGDP成長予想は0.6%から0.8%に上昇

2021/2/17    水

米国市場ではダウは史上最高値を更新し、テクノロジー株が下落したのでNASDAQは値下がり、SP500はほぼ横ばいとなった。バイデン政権の景気刺激策への期待感からイールドが上昇。金融株には上げ要因となり、公益、住宅建築、不動産などには下げ要因となった。コロナの感染者数は急減している。ビットコインが5万ドルを超えたために、デジタル通貨金融業者のSilevegate Capital,Riot Blockchain, Marathon Patentなどは8%~21%の値上がりとなった。原油価格が値を上げたためエネルギーも強い。欧州市場でも、鉱業やエネルギー、銀行が値を上げたが、その他の業種は値を落とし、全体でみれば横ばい。Glencoreは2%株価を上げここ7年で最高値となった。BHPビリトンも半期利益が史上最高となり、史上最高の中間配当を公表し、株価は1.5%上昇

2021/2/18    木

米国市場では、アップル、Paypal、Nvidiaなどのテクノロジー関連が軟調でNASDAQは値下がり。SP500は横ばい。ウォーレンバフェットのバクスシャー・ハザウェイが投資先を公表し、ベライゾン・コミュニケーションが5.2%、シェブロンが3%の上昇となり、ダウは値を上げた。テキサス州で原油生産が停滞し原油価格が上がったことから、エネルギー関連も上昇。ウェルズ・ファーゴはFedがリスク管理とガバナンスのやり方変更を承認し5.2%の株価上昇。欧州市場では、ドイツでインフレ予想からイールドがここ1年で最高に上昇。グッチブランドの販売が第4四半期に10%以上下落したKeringが値を下げ、ブリティッシュ・アメリカン・タバコは利益が予想以上であったにもかかわらず株価は下落。ドイツのBiersdrofは2021年の売り上げが上がっても利益は横ばいになるとの予想を示し、株価は5.9%の下落

2021/2/19    金

米国では、新規失業保険申請者数が予想外に増加し労働市場の弱さが露呈された。公益株と一般消費財以外のセクターは値を下げる。Facebookはオーストラリアでメディア使用料の問題が勃発し株価は1.5%の値下がり。ウォルマートは四半期の利益が予想以下となり、2022年の売り上げの伸びも低い一桁にとどまりそうとの予想を公表し、株価は6.5%減少。マリオットインターナショナルは四半期の損失を計上したが、株価は0.5%上昇。欧州市場では商品価格の上昇と通貨のユーロ高に懸念し株式市場は下落。ノルウェーのNel ASAは四半期の損失が拡大し、RDSはアルバータの資産を売却すると公表し、いずれも株価下落。エアバスは年間の損失を公表し配当を停止することを公表し2.8%の下落。フランスのテレコも最大手のオレンジも第4四半期のコア利益が下落したことを公表し株価は2.6%の下落  

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