傾聴とバーンアウト~その2

(前半部分はコチラ)

ところが、最近になって、「私に傾聴の大切さを教えてくれたFPの方は、ごく限られた範囲で相談をしていたから、傾聴が大切と感じていたのではないだろうか」と思うようになった。つまり、閉ざされた集団で相談をしていたということである。閉ざされた集団の場合、その集団に帰属しているということが、相談者の品位を保つことにつながり、相談を受ける側は傾聴していればよいという結論につながる。

反対に開かれた集団コールセンターのようなところを考えてほしい。テレマーケティングの会社でなければ、コールセンターに入ってくる連絡のかなりの割合はクレームかもしれない。クレームを、すべからく傾聴していったらどうなるだろう。聞いているオペレーターは心を病んでしまうだろう。通話時間が長時間化して、本当に必要な連絡を受けられないかもしれない。

あなたが相談部門を担当するマネージャーであるなら、傾聴を勧める前にすべきことが2つあることが理解できるだろう。一つは、クレームに類する相談を最小化することである。金融機関などに電話したとき、「サービスの向上のために話を録音します」と流れるメッセージはこのためである。クレームを事前に撃退して、本来の相談に時間をより多く配分するためである。そして、もう一つは、相談員がバーンアウトしないようなスキームを導入することである。あなたが、相談員としての能力があるのであれば、スーパーバイザーとなって部下に接すればよい。ここでいう、スーパーバイザーとは、専門家としての視点から部下を励まし、教育し、評価することによって成長を促す者という意味である。

“傾聴”や“相談者に寄りそって”ということを繰り返すマネージャーを散見するが、そういったマネージャーは無意味であるばかりでなく、部下のバーンアウトの原因になっている場合が少なくない。そんなマネージャーなりたくないが、一方で、スーパーバイザーになる自信がない人には、一つ、よい方法が残っている。それは、相談員同士でケース会議を開催させることである。そうすれば、横からの目線で、相談員同士で最適解を考え始める。そして、それと同時に、他の相談員も苦労していることに気づく。情報交換もできて、サービスの質は均一化する。しっかりした背景があって、はじめて、本当に傾聴することができる

この記事は、「週間インシュアランス(生保版)」に掲載した記事を転載したものです。