6月第1週の市況

2021/5/31    月

米国市場では、4月のコアインフレが0.7%増と予想以上となり、対前年同月比では3.1%増となり、Fedの目標水準である2%を大きく超えた。Salesforce.comは通年の収益の予想を上方修正し株価は5.4%増。ボーイングはFDAが生産問題のトラブルから787の出荷を中断していること認めたことから、同株は1.5%の下落。欧州市場では、史上最高値を更新。イングランド銀行は予想よりも早期に利上げに踏み切ることを示唆し、銀行や保険株は値を上げる。経済センチメントも回復しており、特にサービス分野で大きく回復。ドイツでは6月上旬に青少年に新型コロナウィルスのワクチンを接種する計画で市場は0.7%上昇

2021/6/1    火

英米市場は休日。欧州市場では史上最高値から市場は下落。ドイツのドイッチェバンクが米当局からマネーロンダリングの防止措置について対応が不十分と指摘され株価は1.3%下落。イタリアの保険会社CattolicaはライバルのAssicurazioni Generaliから買収を持ち掛けられ、Cattolicaは13.5%株価上昇。ドイツの4月の消費者物価指数はECBの目標を超えた。

2021/6/2    水

米国市場では、ヘルスケアとテクノロジー株が値を下げSP500は値を下げたが、金融株や原油価格が値上がりし過去4か月で最大の値上がりとなったエネルギー株が貢献してダウは値上がり。Abbott Laboratoriesは予想利益が芳しくなく株価は9.3%の下落。ISM製造業指数は上昇したが、労働と原材料の不足により未完の業務がつみあがった。小型株中心のRussell2000は1.1%の上昇。欧州市場では、金属や石油の価格が上昇し鉱業やエネルギー関連が上昇。ユーロ圏の工場出荷の伸びは史上最高になった。HISのユーロ圏の工場活動指数は予想を超え1997年以来最高になった。ドイツのダイムラーはNokiaに特許使用料を支払うことになり、株価は2.6%の上昇

2021/6/3    木

OPECが6月から7月に供給を基に戻す計画があることから、原油価格が上昇し欧米市場でエネルギー関連が上昇。米国市場では、Teslaが3.0%値を下げ、素材関連も0.9%値を下げたが、市場全体としては上昇。フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は資産購入のプログラムを減速させるタイミングを考慮する時期に来ているとコメント。AMG Entertainmentは個人投資家の動きで95.2%上昇。欧州市場では市場は横ばい。エネルギーと消費関連が市場を支える。ユーロ圏の5月のインフレは2.0%の上昇となった。スウェーデンのVolvoはUDトラックの売り上げを株主に還元すると公表し3.5%株高に。ドイツのメディアProsiebenSat.1 MediaはCEOが外部からの支援は不要をコメントし、株価が4.2%下落

2021/6/4    金

米国では、民間非農業部門の就労人口の伸びがほぼ100万人に達し、予想を大きく上回る。Fedが昨日コメントした、債券購入プランと非常時貸し出し機能の縮小も相まって市場はインフレ懸念が再燃。市場ではテクノロジー株が下落し、エネルギー・金融といった株式が値を上げたものの全体としては値下がり。個別企業では、GMが半期の業績がとても良かったことを公表し、株価が6.4%上昇。欧州市場では、米国の労働市場の回復に加え、ユーロ圏におけるサービス部門の成長がここ3年で最高の上昇となったが、市場では幾分の値下がりとなった。英国市場では配当落ちの影響で市場は0.6%の下落。
 

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イールドの上昇と資産運用~その2

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債券やテクノロジー株だけではなく、公益株や不動産投資信託(REIT)も影響を受ける。なぜなら、こういった投資先は、国債の代替投資先と考えられているからである。公益株には、電力会社やガス会社などが含まれる。これらの会社は大きな成長は見込めないが、その代わりに、高い配当を出して株主にアピールしている。REITは、法律で収益の大部分を配当として還元することが義務付けられている。その結果、高い利回りになる。いずれも、高配当が売り物なのであるが、安全資産である国債のイールドが上昇すると、相対的な魅力度が薄れてしまう。これが、株価が下がる理由である。

『イールド』が上がると困るのは株式投資家だけであろうか?そうではない。実は、最も影響を受けるのは年金生活者である。ここからは日本の話になる。日本の公的年金は、「マクロ経済スライド」が導入されている。そして、2021年からは、マクロ経済スライドに加えて、「賃金・物価スライドの見直し」が導入されている。公的年金は、インフレに応じて増加するのが原則である。インフレに応じて増加しなければ、実質的な受取額が削減されてしまうからある。そして、「インフレになるということ」と、「イールドが上がるということ」は、別の問題ではない。通常の経済のサイクルで考えると、「イールドが上がる⇒景気がよくなる」わけであり、「景気がよくなる⇒インフレになる」という結果になる。しかしながら、「インフレの増加分ほどは上昇しない」というのが公的年金である。

公的年金の話は日本に限ったことではない。世界各国とも財政赤字に苦しんでいる。財政赤字を解消するには、増税が一番手っ取り早いのであるが、増税は国民の賛同を得られない。そこで、その代替策として、インフレを誘導して、公的年金の支出を実質的に抑制し財政の健全化を図ろうというのが、各国政府が考えていることであるといわれている

コロナ禍で支給した費用はどこかで回収しなければならない。米国政府では、2021年3月にイエレン財務長官がすでに増税について言及している。金利と税は、資産運用を考えるときの視点の一つである。

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

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