コロナ禍で家計の貯蓄・負債はどう変わったか~その2

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2019年から2020年にかけて、世界中で新型コロナウィルスが拡散され、経済活動が停滞した時期であり、2020年の日本のGDPは4.7%の減少となった。経済状態は悪化し社会不安も増大した。一方、2020年に関しては、特別定額給付金というプレゼントがあって、世帯で平均すると30万円弱の臨時収入があったわけで、その7割が貯蓄されたとしても20万円程度の貯蓄額の上乗せになっていたはずである。実際は、二人以上の勤労世帯でみると貯蓄額は2万円ほど上がったに過ぎない。さて、もう少し詳しく見てみよう。2020年、家計の資産ポートフォリオには、社会・経済状態を反映した動きがあったことがうかがえる。

ポイント1は、『すべての五分位で定期性預貯金の金額が減った』ことである。そして、その結果、すべての五分位で通貨性預貯金が増えていることがわかる。コロナ禍にあって、世帯では緊急事態にすぐに取り出せるように資金を、定期預金から普通預金にシフトさせたことがわかる。

ポイント2は、『年間所得が低い世帯では“生命保険など”が増え、高い世帯では“生命保険など”が減った』ことである。第1五分位と第2五分位では、金額がいずれも32万円ほど増加している。別に掲載されている、外貨建て保険を含む“外貨預金・外債”では金額が減少していることから、リスクを回避して、より安全な、そして、貯蓄性の高い保険にシフトした可能性がある。

つづく

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コロナ禍で家計の貯蓄・負債はどう変わったか~その1

2021年5月に、2020年の「家計調査 貯蓄・負債編」が公表された。家計調査は、国が行う重要な統計として、統計法による「基幹統計」で指定されている統計である。その結果は、毎月、公表され、四半期、暦年、年度ベースで平均値が公表されている。標本の数が約9000件と少ないために、調査対象者の入れ替えによる影響などが考えられるが、たくさんの属性で分析することが可能で、現在では「e-Stat」を経由して、データを必要な属性ごとにダウンロードすることが可能になっている。

さて、今回筆者がチェックしたのは、『2019年から2020年にかけて、家計の資産・負債ポートフォリオはどのように変化したのか』ということである。軸として用いた属性は、「年間収入」である。実際には、1年間の世帯の収入を合計したものを、金額の多少により20%ずつグループにして、小さいグループから第1五分位、第2五分位、最も年間所得が多い20%を第5五分位と分類した五分位を、「年間収入」を代表する指標として利用している

資産の区分は、通貨性預貯金、定期性預貯金、生命保険、有価証券、金融機関外の5つに分類されている。金融機関外とは、勤め先の共済組合への預貯金などを含む区分である。なお、公的年金や企業年金は、家計調査の“貯蓄”には含まれていない。

つづく

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