ファンド分析~投資のソムリエ

ファンドの特徴

このファンドは、アセットマネジメントONEが運用するファンドで、日本の債券・先進国の債券(安全資産)および日本の株式・先進国の株式、新興国の株式・債券および日本と先進国のリート(不動産投資信託)(リスク資産)に投資するファンドです。このファンドは、ファンドファミリーファンド形式で運営されています。

それぞれの投資先ファンド(マザーファンド)の運用はパッシブ運用になっています。このファンドの特徴は、「金利水準」、「為替動向」、「世界の経済成長」を価格変動の3つの要因とみなしている点です。3ファクターモデルがその背景にあることが推定されます。ただし、変動要因(ファクター)は時間とともに変動する可能性を謳っていますから、正確には3ファクターモデルというわけではありません

また、基本配分比率も動的なものとして定義されています。つまり、基本配分比率は時とともに変動するのです。目論見書に明記されているのは、リスクの数値です。年換算のリスクが4%になるようにファンドは運用されています。マザーファンドはパッシブ運用ですから、アセットアロケーションだけでリスクコントロールしているということになります。リスクは年換算で4%と決められていますので、年金基金などの機関投資家よりは大きめのリスク量を想定しています。

※ 2020年8月末時点の情報で記入しています

ポートフォリオ

日本の債券・先進国の債券(安全資産)および日本の株式・先進国の株式、新興国の株式・債券および日本と先進国のリート(不動産投資信託)(リスク資産)に投資します。

運用体制

アセットマネジメントONE・USA・インク(投資顧問会社)

アクティブ・パッシブ

パッシブ運用(マザーファンド)
アクティブ運用(ベビーファンド)

販売会社

みずほ銀行、七十七銀行、第一生命保険、東海東京証券、楽天証券など

資産残高の推移

ファンドは2012年10月に設定。設定以来、純資産残高は基本的には右肩上がりで上昇。2020年8月では約2770億円

購入時手数料

購入時手数料上限3.3% 

信託報酬

1.54%程度(年額) 

収益分配金

毎年、1月と7月に分配金を支払う。2015年1月より2020年1月までは、毎回、(1万口当たり)30円の収益分配金を支払ってきたが、2020年7月には80円の収益分配金を支払う

このファンドに対するコメント

このファンドは、目標リターンを定めるのではなく、リスクの目標を定めて、その枠内でできるだけ高いリターンを目指すタイプの運用を行っています。したがって、市場のリスクが一時的に高くなったと判断されるときには、安全資産への投資配分を増やしてリスクを一定に保とうとします。競合ファンドのトレンド・アロケーション・オープンでは、過去の最高値からダウンリスクを15%以上下落しないような仕組みが導入されていますが、このファンドではそのような仕組みは導入されていないため、市場価格が下落したときでも、運用担当に裁量の余地が残されている運用スタイルです。

過去5年間のリスク・リターンを競合ファンドと比較すると、このファンドの運用成果が良好なことがわかります。そのため、2019年にはモーニングスターのバランス(成長)型部門で優秀ファンド賞を受賞しています。購入時手数料や信託報酬が高いことがマイナスポイントです。

GPIFの資産運用【2020年第1四半期】

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、2020年度第1四半期の運用状況(速報)を公表しました。GPIFとは、公的年金(国民年金と厚生年金保険)のお金を運用する組織です。全額政府がっ出資する法人で、管轄は厚生労働省になります。

最初は、この四半期(2020年4月~2020年6月)が始まる直前のポートフォリオの確認です。

内側のグラフは基本ポートフォリオです。基本ポートフォリオとは、名前のとおり、基本になるポートフォリオです。外側のグラフは、四半期の始まる時点での実際のポートフォリオです。国内債券、外国債券、外国株式に“アンダーウェイト(under weight:基本ポートフォリオより投資割合を下げること)”し、日本株式と短期資産には、“オーバーウェイト(over weight:基本ポートフォリオより投資割合を上げること)”していたことがわかります。

GPIFは、『日本株式はきっとほかの資産より値上がりするだろう。国内債券、外国債券、外国株式はほかの資産ほど値上がりしないかもしれない。リスクもあるので資産の一部は非難させよう』と思っていたようですね。

2019年度末のポートフォリオ

次の円グラフは、第1四半期が終了した時点のものです。内側が基本ポートフォリオ、外側が実際のポートフォリオです。気が付くことがありませんか?そう、基本ポートフォリオが変わっているのですね。国内・外国、株式・債券と区分した資産クラスをすべて等分にしたのです。

オーバーウェイトの資産クラスは、外国株式と国内債券、アンダーウェイトの資産クラスは、国内株式と外国債券となりました。

2020年6月末のポートフォリオ

運用の点検もしておきましょう。下図は、市場の代表的な指数とGPIFの運用を比較したものです。国内債券以外は、GPIFのほうが、少しずつ良くなっていますね。

ポートフォリオ全体でみると、次のようになります。GPIFは市場に勝っていたといえそうですね。

2020年第1四半期の騰落率

市場

GPIF

2020年第1四半期

7.3%

8.3%

参考資料:2020年度第1四半期運用状況(速報)、2019年度業務概況書

おまけ・・・筆者がFacebookに書きこんだ内容

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用のニュースが載っている。8月5日(昨日)公表されたようだけど、8月6日朝の時点でGPIFのウェブサイトで同様の情報を見つけられない。【8月7日にGPIFはウェブサイトで、「2020年度第1四半期運用状況(速報)」を公開しました。】
マスコミに公表するのと、一般投資家に公表するタイミングがずれているなら問題マスコミに公表すると一般投資家も見るからよいというのは2つの点で間違い
一つは、タイムラグを利用してアービトラージ(裁定取引)ができるということ
もう一つは、マスコミがまとめるとバイアス(歪み)が発生する
今では、上場企業であれば、アナリスト向け資料は一般投資家でも閲覧できるようになっているし、企業が公表するとすぐにウェブでも閲覧できるようになっているはず。

おまけ・・・その2

GPIFは理事長が運用状況に関して、8月7日(速報をウェブで公開した日)、下記のようなコメントを出していますが、ファンドマネージャーがコメントするような内容ですね。

GPIFの理事長は、マネジメントというよりは、CIO(チーフ・インベストメント・オフィサー)のような位置づけなのでしょうか?

2020年度第1四半期の運用状況の公表にあたっての宮園理事長コメント

2020年度第1四半期(4月~6月)は、新型コロナウイルスを封じ込めるためのロックダウンが各国において徐々に解除に向かい、経済活動の再開や各国政府による手厚い財政政策・金融当局による積極的な金融緩和策を受けて米国を中心に経済指標が改善し、国内外の株式市場は大幅な上昇となりました。また、為替は対ドルでは概ね横ばいも、対ユーロでは円安が進行しました。このような結果、4月から6月までの運用資産全体の運用実績はプラス8.30%となりました。