コロナ禍で家計の貯蓄・負債はどう変わったか~その3

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ポイント3は、『相対的に年間収入が高い、第4五分位、第5五分位では、ほぼすべての分類で金額が減少している』ことである。ポイント2で指摘した“生命保険など”の金額の減少は、保険に限ったことではなく、すべての資産区分に当てはまることであった。

負債についても2019年から2020年の変化を見てみよう。家計調査で負債は、住宅・土地のための負債、住宅・土地以外の負債、月賦・年賦という区分で金額が表示されている。いずれの区分でも金額が減少したのは、第2五分位(年間収入463万円~606万円)である。資産も処分し、その他の負債も返済を進めたということになるであろう。

第1五分位では、住宅・土地のための負債のみ減少したが、その他の区分は増加している。家計の赤字が、そのまま、負債の増加につながっているのであろう。

ところで、五分位は5つのグループに等分に分けているという点がありがたい。2020年の家計調査における平均値は1378万円であり、平均値以下の世帯は約3分の2も存在する。一部の人の資産が大きすぎて平均値は高い金額になってしまっている。平均値で話を進めてしまうと、どうも合点がいかないことが多くなってしまうことがあるが、五分位では統計と感覚の差異が縮まる

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

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コロナ禍で家計の貯蓄・負債はどう変わったか~その2

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2019年から2020年にかけて、世界中で新型コロナウィルスが拡散され、経済活動が停滞した時期であり、2020年の日本のGDPは4.7%の減少となった。経済状態は悪化し社会不安も増大した。一方、2020年に関しては、特別定額給付金というプレゼントがあって、世帯で平均すると30万円弱の臨時収入があったわけで、その7割が貯蓄されたとしても20万円程度の貯蓄額の上乗せになっていたはずである。実際は、二人以上の勤労世帯でみると貯蓄額は2万円ほど上がったに過ぎない。さて、もう少し詳しく見てみよう。2020年、家計の資産ポートフォリオには、社会・経済状態を反映した動きがあったことがうかがえる。

ポイント1は、『すべての五分位で定期性預貯金の金額が減った』ことである。そして、その結果、すべての五分位で通貨性預貯金が増えていることがわかる。コロナ禍にあって、世帯では緊急事態にすぐに取り出せるように資金を、定期預金から普通預金にシフトさせたことがわかる。

ポイント2は、『年間所得が低い世帯では“生命保険など”が増え、高い世帯では“生命保険など”が減った』ことである。第1五分位と第2五分位では、金額がいずれも32万円ほど増加している。別に掲載されている、外貨建て保険を含む“外貨預金・外債”では金額が減少していることから、リスクを回避して、より安全な、そして、貯蓄性の高い保険にシフトした可能性がある。

つづく

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