外貨投資を考えるときのポイント

外資投資を考えるときのポイントは“米ドル中心”

外貨投資を考えるとき、円を中心に考えると通貨の分散という言葉を 過信します。通貨は米ドルを中心に動いているのです。たとえユー ロに投資しても、円―ユーロの為替レートが、円―ドルの為替のレー トから独立して決まるわけではありません。為替は基軸通貨である 米ドルを中心に考えるようにしましょう。

円を中心に考える

通貨の分散という言葉をときどき耳にします。円建て資産だけで保有し ていると円安になったときに困るから、外貨も保有したい。外貨も、ドル だけでなく、ユーロも、豪ドルもという具合にたくさんの通貨を保有して おけば分散投資効果が働く。例えば、ユーロとドルに半分ずつ投資する ポートフォリオを組んでいたとすると、円高になってもポートフォリオに 与える影響は半分で済むと考えます。

米ドルを中心に考える

しかし、実際の為替の世界は、図 に示すように米ドルを中心としたものです。この考え方の下では、仮に円とドルの為替が円高になると、そ れと同程度以上に米ドルとユーロの為替レートがユーロ高にならない限り、円とユーロの関係も円高になります。

ドルを中心に考えるのであれば、円ドル為替の変動は、円とほかの通貨のすべての為替レートに影響を及ぼすことになるのです。言葉を代えるのであれば、『ドル建資産に投資している割合が50%であるから、円ドル為替の変動から受ける影響が50%である』とする考え方は、通貨の分散という言葉を過大評価した結果になっているのです。

分散投資という考え方そのものが間違っているわけではありません。しかし、為替や株式といった資産クラスは、グローバル化の進展に伴い、より相互依存性が増しています。この相互依存性を低く見誤ると、予想している以上のリスクをとっている事態に陥ってしまうのです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

保険のランキングの本

保険のランキングの本

友人のFP(ファイナンシャルプランナー)がSNSに、「今年も協力させていただきました」と投稿していた。協力させていただいたのは、生命保険のランキングの本。保険商品の実名を挙げて商品のランキングをすることが本の趣旨。SNSに投稿した友人に他意はない。単純に本を見てくださいという意味。私はというと、数年前まで協力させていただいていたが、数年前に協力するのをやめた。2,000円の図書カードをもらって、商品のランキングを提出し、編集はそれを集計して、『有名FP〇名によるランキング』として記事にする。2,000円しかもらえないなら、その程度の仕事になるのは当然である。そんな仕事を続ける意味が見いだせなかったのでやめたわけである。

ランキング本はプロ向け

報酬の話は別にして、この手の本の存在価値に疑義があるのは、私の別のFPの友人が発した言葉に表れている。彼女が発したのは、『この本読むのは(消費者じゃなくて)プロだよね』という感想。私もそうだと思う。保険代理店の募集人が商品を勧める証拠のために、保険会社の直販社員が自社の保険商品の位置づけのために読むのだと思う。改めて見返しても、一般の消費者目線で書かれている本ではない

ライフプランに基づくキャッシュフロー分析が抜けている

さらに時代遅れだと考えるところは、保険を商品単位で比較しているところである。商品担当者が金融庁に説明するための資料ではないので、保険商品を比較しても意味がないのではないかと、私は思う。むしろ、FPが一般消費者に説明するのであれば、『あなたの(世帯の)ライフプランを基に将来の収支を予想するとこのような保障が必要です』というキャッシュフローや資産・負債の将来予想に基づく分析に立った保障ニーズを明らかにすることが必要であると思うが、そのような記述は全く見当たらない。

実は、FPの中で、将来のライフプランを予想して、キャッシュフローや資産・負債を予想することができる人はとても少ない。そこで、保険会社は自社のツールを作成している。FPの方に聞くと、キャッシュフロー表の作成は、〇〇生命のツールを使っているという人が多いように思われる。保険会社の作るツールが悪いというわけではないが、FPとして最適の保障を提供するための調整弁となるところが固定されてしまっているケースが少なくない。その結果、どのソフトを使っても結構高額な保障が必要という結果になる。FPが指摘するのであれば、『もっと必要保障額は少なくて大丈夫ですよ』と指摘するのが筋だと思う。

わからないから商品を比較して勧善懲悪型の結論を導く

結局、保険商品を比較するのが楽なのである。しかも、そこで登場するのは単品の保険商品だけである。アカウント型保険などは、『ダメな保険』という烙印を押されて撃沈することになっている。そして、収入保障保険や就業不能保険など、わかりやすい保険が登場して、あれこれと解説を付けられて、『最後は、A商品よりB商品のほうが保険料が安いのでよい商品』と締めくくられる。どうも、水戸黄門式の勧善懲悪のストーリーが背景にあるようである。勧善懲悪のストーリーになると、消費者にも受け入れられるということであろうか。確かに、こういった雑誌が、保険の窓口や保険見直し本舗の店頭に置いてあり、消費者がその本を見ながら保険の見直しの順番を待っているというシーンを想像するのであれば、勧善懲悪型の雑誌は役に立つかもしれない。

商品から出発してもニーズに辿りつけない

私たちは、FP側から、そろそろ保険商品から出発するというアプローチをやめる時期に来ているのではないだろうか。商品から出発するではなく、ニーズから出発する。それも、『入院すると平均して1日あたり〇万円必要です』というような作られたニーズではなく、消費者の本当のニーズである。消費者の本当のニーズを見つけ出すには、保険商品を当てはめるという意図抜きの面談を行って、消費者のニーズを明らかにした後で、保険には何ができるだろうと考えるステップが求められる。保険のランキングの本は役に立つだろうか?

この記事は、週刊インシュアランス(生保版)に掲載した記事です。