元本払戻金に変更された特別分配金

分配金の説明で最重要な「元本払戻金」

ファンドが収益分配金を支払うと、支払った金額に応じて、基準価額が下がります。場合によっては、収益分配金を支払うと、投資したときの基準価額(個別元本)を下回ることになります。このとき、個別元本を下回った部分を、従来は「特別分配金」と呼んでいましたが、「元本払戻金」と呼ばれるように取扱いが変更されました。

金融庁の監督方針の変更

運用会社や証券会社を監督する立場にある金融庁は、2012年2月に、その監督方針を一部変更しました。この中に、「投資信託の分配金に関して、分配金の一部又は全てが元本の一部払戻しに相当する場合があることを、顧客に分かり易く説明しているか」というチェック項目が加えられることになりました。

金融庁の動きを受けて、投資信託協会では、2012年3月、ファンドを購入するときに受け取る目論見書と、原則として決算ごとに交付される運用報告書の内容を改正することを決めました。これが、私たちが受け取る書類に直接影響を及ぼす内容です。どういったファンドであるか概要がわかるようになっていますが、その中で、「ファンド購入後の運用状況により、分配金額より基準価額の値上がりが小さかった場合、分配金の一部又は全部が、実質的には元本の一部払戻しに相当する場合がある」ことが明記されるようになります。

特別分配金がなくならない理由

ところで、その時まで目論見書や運用報告書では、「特別分配金」という言葉が使われていました。特別分配金には、『分配金であるけど元本の払い戻しと考えられるので、この分配金には課税しない』という意味があります。この特別分配金の表記が、「元本払戻金(特別分配金)」に変わったのです。これなら、元本の払戻しの意味がすぐにわかります。単に「元本払戻金」だけでよいように思うのですが、所得税法施行令という政令に「特別分配金」の言葉が入ってしまっているので、カッコ書きで残したようです。特別分配金は税法上の言葉になっているので残しておかなければならなかったわけです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

8月第5週の市況

先週の市況はコチラ

2018/8/27    月

米国のジャクソンホールで開催されていた中央銀行のミーティングでパウエルFRB議長が、緩やかな利上げ政策を維持することをコメントしたことを市場は好感。SP500やRussell2000は史上最高値を更新。7月の資本財の受注も予想以上の増加となった。欧州市場では、米中の関税対話で成果が見られなかったことに警戒し市場は横ばい

2018/8/28    火

米国とメキシコの間の関税問題の議論がまとまったことが欧米市場にプラスに影響。米国ではフォードやGMといった自動車銘柄が大きく値を上げ、SP500とNASDAQはいずれも史上最高値を更新。ボーイングやキャタピラーなどの貿易関連銘柄も上昇。プライベート化を断念したTeslaは米国市場でもドイツ市場でも値下がり。欧州市場では米国とメキシコの関税合意のほか、先週末のパウエルFRB議長のスピーチが好感され市場は上昇。欧州でも自動車株が大きく値上がり

2018/8/29    水

米国ではテクノロジー株が上昇してエネルギー株の下落を補う。SP500もNASDAQも史上最高値を更新。個別企業ではティファニーが好決算となり1%上昇。Sears HoldingはAmazonとの提携が全米に拡大し大幅に上昇。小売りのBest Buyは売り上げの伸びが減少し株価も下落。欧州でも、米国とメキシコの関税対話が合意に達したことが好感され自動車株が上昇。ドル安に伴い金属価格が上昇し、資源関連株が上昇

2018/8/30    木

米国市場では、アップルが史上最高値を更新し、Amazonも史上2番目の時価総額1兆ドル超えが近くなり3.4%上昇。テクノロジー株主導でSP500とNASDAQはまたも史上最高値を更新。米国の第2四半期GDPは上昇修正され年率4.2%増となりここ4年で最高。カナダと米国の関税交渉は、カナダが懐柔的なスタンスで市場は好感。欧州市場も値を上げる。ただし、EUがBrexit後も密接な関係を維持すると表明した英国については、ポンド高となり株価は下落

2018/8/31    金

ユーロとカナダドルが軟化し、アルゼンチンでは通貨ペソの価値暴落を食い止めるため金利を60%引き上げる。トランプ大統領は中国に対して新たな関税を課すると発言し、WTOからの脱退も示唆。米国では産業株が最も値下がりし、新興国市場のリスクが増大。米国債と欧州の中核の国債は値を上げる。中国では関税問題のほか、工場稼働率も3ヵ月連続で低下したため関連の深いドイツのDAXは1%近く値下がり