GPIFの資産運用【2020年第1四半期】

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、2020年度第1四半期の運用状況(速報)を公表しました。GPIFとは、公的年金(国民年金と厚生年金保険)のお金を運用する組織です。全額政府がっ出資する法人で、管轄は厚生労働省になります。

最初は、この四半期(2020年4月~2020年6月)が始まる直前のポートフォリオの確認です。

内側のグラフは基本ポートフォリオです。基本ポートフォリオとは、名前のとおり、基本になるポートフォリオです。外側のグラフは、四半期の始まる時点での実際のポートフォリオです。国内債券、外国債券、外国株式に“アンダーウェイト(under weight:基本ポートフォリオより投資割合を下げること)”し、日本株式と短期資産には、“オーバーウェイト(over weight:基本ポートフォリオより投資割合を上げること)”していたことがわかります。

GPIFは、『日本株式はきっとほかの資産より値上がりするだろう。国内債券、外国債券、外国株式はほかの資産ほど値上がりしないかもしれない。リスクもあるので資産の一部は非難させよう』と思っていたようですね。

2019年度末のポートフォリオ

次の円グラフは、第1四半期が終了した時点のものです。内側が基本ポートフォリオ、外側が実際のポートフォリオです。気が付くことがありませんか?そう、基本ポートフォリオが変わっているのですね。国内・外国、株式・債券と区分した資産クラスをすべて等分にしたのです。

オーバーウェイトの資産クラスは、外国株式と国内債券、アンダーウェイトの資産クラスは、国内株式と外国債券となりました。

2020年6月末のポートフォリオ

運用の点検もしておきましょう。下図は、市場の代表的な指数とGPIFの運用を比較したものです。国内債券以外は、GPIFのほうが、少しずつ良くなっていますね。

ポートフォリオ全体でみると、次のようになります。GPIFは市場に勝っていたといえそうですね。

2020年第1四半期の騰落率

市場

GPIF

2020年第1四半期

7.3%

8.3%

参考資料:2020年度第1四半期運用状況(速報)、2019年度業務概況書

おまけ・・・筆者がFacebookに書きこんだ内容

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用のニュースが載っている。8月5日(昨日)公表されたようだけど、8月6日朝の時点でGPIFのウェブサイトで同様の情報を見つけられない。【8月7日にGPIFはウェブサイトで、「2020年度第1四半期運用状況(速報)」を公開しました。】
マスコミに公表するのと、一般投資家に公表するタイミングがずれているなら問題マスコミに公表すると一般投資家も見るからよいというのは2つの点で間違い
一つは、タイムラグを利用してアービトラージ(裁定取引)ができるということ
もう一つは、マスコミがまとめるとバイアス(歪み)が発生する
今では、上場企業であれば、アナリスト向け資料は一般投資家でも閲覧できるようになっているし、企業が公表するとすぐにウェブでも閲覧できるようになっているはず。

おまけ・・・その2

GPIFは理事長が運用状況に関して、8月7日(速報をウェブで公開した日)、下記のようなコメントを出していますが、ファンドマネージャーがコメントするような内容ですね。

GPIFの理事長は、マネジメントというよりは、CIO(チーフ・インベストメント・オフィサー)のような位置づけなのでしょうか?

2020年度第1四半期の運用状況の公表にあたっての宮園理事長コメント

2020年度第1四半期(4月~6月)は、新型コロナウイルスを封じ込めるためのロックダウンが各国において徐々に解除に向かい、経済活動の再開や各国政府による手厚い財政政策・金融当局による積極的な金融緩和策を受けて米国を中心に経済指標が改善し、国内外の株式市場は大幅な上昇となりました。また、為替は対ドルでは概ね横ばいも、対ユーロでは円安が進行しました。このような結果、4月から6月までの運用資産全体の運用実績はプラス8.30%となりました。

8月第1週の市況

2020/8/3    月

米国市場では、アップルが四半期決算が好調で史上最高値を更新し1株を4株に分割することから株価は10.5%上昇。世界最大の時価総額のサウジ・アラムコを超える。Amazonも利益が過去最高になり株価は3.7%上昇。Facebookも予想以上の決算となり8.2%上昇。アルファベットは四半期売り上げが初めて下落して株価は3.3%下落。NASDAQは1%以上上昇したが、ダウとSP500は少しの上昇にとどまる。マイクロソフトはTik Tokを買収すると報じられ市場外で上昇。Kansas City Southernは敵対的買収がうわさされており9.7%株価上昇。欧州市場では、株価はほぼ横ばい。域内のGDPは予想以上に下落。フランスではGDPの下落は予想以下であったが株価下落。IT関連は米国のGAFAにけん引されて上昇。BNP Paribaは決算が予想以上に良かったために0.8%株価上昇。Nokiaは予想外に増益となり12.5%株価上昇

2020/8/4    火

米国ではIT関連が値を上げ、NASDAQは史上最高値を更新。ダウもSP500も値を上げる。マイクロソフトはTik Tokの米国のオペレーションを買収すると報じられ株価は5.6%上昇。ホームセキュリティのADTはアルファベットが発行済み株式の7%を購入したことから株価は56%上昇。決算が好調であったアップルは2.5%上昇し、医薬品販売のMckesson Corpは通年の利益予想を引き上げ6.5%値を上げた。欧州市場は、製造業が緩やかに回復してきたことから株価上昇。ドイツでは工場活動指数が20108年以降初めて上昇し株価指数であるDAXは2.7%上昇。フェラーリは通年の収益予想は引き下げたが、第2四半期の受注は大きく伸びたとして株価上昇

2020/8/5    水

米国市場では、アップルが5日連続で値を上げ、さらに、エネルギー関連が値を上げたことから市場全体も値を上げた。投資家は、政府から公表される景気刺激策の内容を待っている。決算が芳しくなかったAIGは7.5%値を下げ、Tik Tokの買収に乗り出しているマイクロソフトも1.5%値を下げる。ラルフローレンはコロナウィルスの関係で四半期の売り上げが減少し4.4%の値下がり、公益銘柄のEvergy Incは買収提案を取締役会が拒否し12%の値下がり。欧州市場では、BPが生産の減産と代替エネルギーへのシフトを公表し6.5%と大きく値を上げた。他の銘柄の値下がりを穴埋めして、市場全体としては横ばい。ジョニーウォーカーの製造元であるDiageo’sは売り上げが予想を超えて下落して5.6%の値下がり。ドイツのBayerはラウンドアップ関連の訴訟で92億ユーロの損失が発生し2.4%株価下落

2020/8/6    木

米国市場では、ウォルト・ディズニーが予想外に利益を上げて8.8%の株高になったことに加え、新たな金融対策への期待感から株式市場は上昇。決済会社のSquare Incは、パンデミックによりオンライン決済が増えたことにより第2四半期の売り上げが64%上昇し株価は7.1%上昇。米国のサービス産業の活動状況は7月に改善され、ISMの調査では新規受注も史上最高になっているが、ADPレポートでは雇用の伸びは予想以下という状況になっている。欧州市場では、BHP、リオ・ティントなどの資源関連が金属価格の上昇を背景に株価も上昇したことにより市場全体も上昇。BPやTotalなどの石油関連も2%程度上昇。ドイッチェポストは、オンライン決済の恩恵から収益が改善し2.5%株価上昇。Dialog Semiconductorも第2四半期の売り上げが予想以上となり9.1%株価上昇。IAG、ルフトハンザ、EasyJetも6.5%ないし10.5%の株価上昇。BMWは第2四半期赤字になり株価は3.5%下落

2020/8/7    金

米国市場では、アップルが3.5%値を上げ、Facebookも6.5%の上昇。そのおかげでNASDAQは史上初めて11,000の水準を超えた。雇用統計では、新規失業保険給付者数は減少したが、7月の解雇は54%上昇と相反する結果が明らかになった。新しい景気刺激策の内容は共和党と民主党で乖離がある状態。通信・テクノロジー関連がけん引して市場を引き上げた。欧州市場では、グレンコアが資源関連企業で初めて無配を宣言し株価は8.1%下落。原油関連もBP、RDS、Totalといったメジャーが2%ないし3.8%の下落。資源・エネルギー関連が中心の英国のFTSEは1.3%下落。ドイツのシーメンスは受注が緩やかに回復すると予想して株価は1.6%上昇。イタリアの銀行ウニクレディトは決算は予想より堅調であったが、イタリア国内の金融機関で統合が進むとの感想から株価は3.9%の下落

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