保険のランキングの本

保険のランキングの本

友人のFP(ファイナンシャルプランナー)がSNSに、「今年も協力させていただきました」と投稿していた。協力させていただいたのは、生命保険のランキングの本。保険商品の実名を挙げて商品のランキングをすることが本の趣旨。SNSに投稿した友人に他意はない。単純に本を見てくださいという意味。私はというと、数年前まで協力させていただいていたが、数年前に協力するのをやめた。2,000円の図書カードをもらって、商品のランキングを提出し、編集はそれを集計して、『有名FP〇名によるランキング』として記事にする。2,000円しかもらえないなら、その程度の仕事になるのは当然である。そんな仕事を続ける意味が見いだせなかったのでやめたわけである。

ランキング本はプロ向け

報酬の話は別にして、この手の本の存在価値に疑義があるのは、私の別のFPの友人が発した言葉に表れている。彼女が発したのは、『この本読むのは(消費者じゃなくて)プロだよね』という感想。私もそうだと思う。保険代理店の募集人が商品を勧める証拠のために、保険会社の直販社員が自社の保険商品の位置づけのために読むのだと思う。改めて見返しても、一般の消費者目線で書かれている本ではない

ライフプランに基づくキャッシュフロー分析が抜けている

さらに時代遅れだと考えるところは、保険を商品単位で比較しているところである。商品担当者が金融庁に説明するための資料ではないので、保険商品を比較しても意味がないのではないかと、私は思う。むしろ、FPが一般消費者に説明するのであれば、『あなたの(世帯の)ライフプランを基に将来の収支を予想するとこのような保障が必要です』というキャッシュフローや資産・負債の将来予想に基づく分析に立った保障ニーズを明らかにすることが必要であると思うが、そのような記述は全く見当たらない。

実は、FPの中で、将来のライフプランを予想して、キャッシュフローや資産・負債を予想することができる人はとても少ない。そこで、保険会社は自社のツールを作成している。FPの方に聞くと、キャッシュフロー表の作成は、〇〇生命のツールを使っているという人が多いように思われる。保険会社の作るツールが悪いというわけではないが、FPとして最適の保障を提供するための調整弁となるところが固定されてしまっているケースが少なくない。その結果、どのソフトを使っても結構高額な保障が必要という結果になる。FPが指摘するのであれば、『もっと必要保障額は少なくて大丈夫ですよ』と指摘するのが筋だと思う。

わからないから商品を比較して勧善懲悪型の結論を導く

結局、保険商品を比較するのが楽なのである。しかも、そこで登場するのは単品の保険商品だけである。アカウント型保険などは、『ダメな保険』という烙印を押されて撃沈することになっている。そして、収入保障保険や就業不能保険など、わかりやすい保険が登場して、あれこれと解説を付けられて、『最後は、A商品よりB商品のほうが保険料が安いのでよい商品』と締めくくられる。どうも、水戸黄門式の勧善懲悪のストーリーが背景にあるようである。勧善懲悪のストーリーになると、消費者にも受け入れられるということであろうか。確かに、こういった雑誌が、保険の窓口や保険見直し本舗の店頭に置いてあり、消費者がその本を見ながら保険の見直しの順番を待っているというシーンを想像するのであれば、勧善懲悪型の雑誌は役に立つかもしれない。

商品から出発してもニーズに辿りつけない

私たちは、FP側から、そろそろ保険商品から出発するというアプローチをやめる時期に来ているのではないだろうか。商品から出発するではなく、ニーズから出発する。それも、『入院すると平均して1日あたり〇万円必要です』というような作られたニーズではなく、消費者の本当のニーズである。消費者の本当のニーズを見つけ出すには、保険商品を当てはめるという意図抜きの面談を行って、消費者のニーズを明らかにした後で、保険には何ができるだろうと考えるステップが求められる。保険のランキングの本は役に立つだろうか?

この記事は、週刊インシュアランス(生保版)に掲載した記事です。

ファンドの収益分配金はこうして決まる

ファンドの収益分配金はこうして決まる

一定の制約のもと安定した分配金を目指している

たくさんの収益分配金を支払うファンドは投資家に歓迎されます。 一方、ファンドは収益のすべてを分配金として支払うことができるわ けではありません。そうした環境の下、販売会社の意向も尊重しながら、できるだけ安定した収益分配金を支払うようにしているというのが、運用会社の担当者の本音ということになるでしょう。

投資家は分配金が好き

日本では、投資家がファンド(投資信託)を購入する際の決定要因の一 つは、間違いなく収益分配金です。

ところで、長期投資を考えると、収益分配金を受け取るよりも収益分配金 を受け取らずに元本部分が増えるほうが、「複利の効果で資産が効率的に殖えるのでありがたい」と主張する人もいます。この考え方は、まったく 合理的なのですが、人の投資行動というものは合理的でないところにも特徴があるものです。合理的ではないのですが、株式にしてもファンドにしても、配当(収益分配金)が多いほうが好まれるのです。

インカムゲインとキャピタルゲイン

ファンドを運用する側、つまり、運用会社ではどのようにして収益分配金の水準を決めているのでしょうか。実は、収益分配金の原資にすることができる収益には2種類あります。

それは、インカムゲインとキャピタルゲインです。債券でいえばクーポン 収入はインカムゲイン、株式やREIT などでは配当がインカムゲインにあ たります。インカムゲインはすべて収益分配金の原資にしてよいということが目論見書に記載してあります。一方、キャピタルゲインはファンドに 繰越欠損金があるときはこれを埋め戻してから、その残りを収益分配金の 原資にしてもよいという決まりになっています。キャピタルゲインは、収 益分配金の原資にするときに制限がついているわけです。

できるだけ安定した分配金を目指す

分配金に関する制約の下、運用会社は収益分配金の水準を決めます。株 式の配当も同じですが、投資家は収益分配金(配当)の水準(金額)が一定だと安心する傾向があります。そのため、運用会社としてはできるだけ 収益分配金の金額が一定の金額で推移するようにしたいという思惑が働き ます。

また、販売会社も重要です。特に、専用ファンド(販売会社が1社のみ) の場合には、販売会社の意向も反映されると考えた方がよいでしょう。

 

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。