通貨選択型ファンドを解明する

3つのリスク・リターンの組み合わせ

通貨選択型ファンドのリターンは、円と適用される通貨の為替リターン、適用される通貨と原資産の通貨の為替プレミアム、さらに、原資産のリターンの3つの部分に分解できます。したがって、そのリスクもリターンに応じて3つの部分に分解することができます。

ファンドの仕組み

通貨選択型というタイプのファンドがあります。一言でいえば、金利の高い国の通貨を保有することによる為替からのリターンと、株式や債券など実際に投資するものの値上がりからのリターン、両方を追い求めるタイプのファンドということができます。

金利の高い国の通貨で思い出されるレアルを介してドル建てのREIT(不動産投資信託)に投資する例を考えてみましょう。

まず、①投資家は日本円で投資します。②ファンドは日本円をブラジルレアルに転換します。③その後、ブラジルレアルから米ドルに再転換します。このとき、ブラジルレアルから米ドルに対して将来の為替レートを固定します(為替ヘッジ)。米ドルになった資金は米国のREITに投資します。④数年経過してREITを売却します。⑤売却金額は、米ドルからブラジルレアルに転換されます。このとき、為替ヘッジがかけられているので、ブラジルレアル-米ドル
の為替レートはすでに決まっています。⑥そして、ブラジルレアル
が日本円に転換されて投資家の手元に届きます。

リターンの分解

このファンドのリターンは、下図のように3つの部分に分解できます。一つは、日本円とブラジルレアルの為替の変動部分。ここは市場頼みです。円安になれば為替益が発生し、円高になれば為替損が発生します。為替プレミアムは、為替ヘッジをかけた時点で確定します。REITの運用も市場頼みです。REITの価格が上がれば利益が発生し、下がれば損失が発生するしくみです。確実な部分は、為替プレミアムの部分だけなのです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

外貨投資を考えるときのポイント

外資投資を考えるときのポイントは“米ドル中心”

外貨投資を考えるとき、円を中心に考えると通貨の分散という言葉を 過信します。通貨は米ドルを中心に動いているのです。たとえユー ロに投資しても、円―ユーロの為替レートが、円―ドルの為替のレー トから独立して決まるわけではありません。為替は基軸通貨である 米ドルを中心に考えるようにしましょう。

円を中心に考える

通貨の分散という言葉をときどき耳にします。円建て資産だけで保有し ていると円安になったときに困るから、外貨も保有したい。外貨も、ドル だけでなく、ユーロも、豪ドルもという具合にたくさんの通貨を保有して おけば分散投資効果が働く。例えば、ユーロとドルに半分ずつ投資する ポートフォリオを組んでいたとすると、円高になってもポートフォリオに 与える影響は半分で済むと考えます。

米ドルを中心に考える

しかし、実際の為替の世界は、図 に示すように米ドルを中心としたものです。この考え方の下では、仮に円とドルの為替が円高になると、そ れと同程度以上に米ドルとユーロの為替レートがユーロ高にならない限り、円とユーロの関係も円高になります。

ドルを中心に考えるのであれば、円ドル為替の変動は、円とほかの通貨のすべての為替レートに影響を及ぼすことになるのです。言葉を代えるのであれば、『ドル建資産に投資している割合が50%であるから、円ドル為替の変動から受ける影響が50%である』とする考え方は、通貨の分散という言葉を過大評価した結果になっているのです。

分散投資という考え方そのものが間違っているわけではありません。しかし、為替や株式といった資産クラスは、グローバル化の進展に伴い、より相互依存性が増しています。この相互依存性を低く見誤ると、予想している以上のリスクをとっている事態に陥ってしまうのです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。