グロース株とバリュー株~その1

2021年に入ってから株式市場は一進一退を繰り返している。マーケットの動きを見ていると、「バリュー株」、「グロース株」という言葉が多く出てくるようになった。“今日の市場は、景気の過熱感への警戒から、グロース株が値を下げ、代わりにバリュー株が値を上げました”というような感じである。

バリュー株とグロース株の明確な定義はない。ただし、バリュー/グロースは株価の形成に影響を及ぼしているという意見があるように、株式市場の重要なウォッチ・ポイントである。グロース株は、成長している企業である。利益は赤字、あるいは、利益があっても配当に回さず投資に充てる。株価の源泉は、配当であったり、FCF(フリー・キャッシュフロー)であったりする。将来に高い配当をもらうため、あるいは、高い内部留保を確保するために、現在を犠牲にするイメージである。したがって、グロース株の評価は、どのくらい先に、どの程度の配当やFCFを生み出すことができるかという点に絞られる。もちろん、将来のことなのでわからない。1年先より、10年先の方がわからない。わからないということは、言葉を変えるのであれば、「リスクがある」ということである。30年前であればマイクロソフトはグロース株であった20年前であれば、アマゾンはグロース株であった10年前であれば、Teslaはグロース株であった。当時、これらの企業の株式を購入した人は、将来に成長することを期待して株式を購入したわけである。将来の配当やFCFを現在の価値に割り引くときに、割引率が高いと株価は低くなる割引率は、金利(イールド)で決まり金利はインフレの影響を受ける。したがって、インフレになるとグロース株は値を下げる

(つづく)

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

JP4資産バランスファンド 成長コース

ファンドの特徴

このファンドは、JP投信株式会社が運用するファンドで、内外の株式、債券に投資するファンドです。リスク・リターンによって、「安定コース」「安定成長コース」「成長コース」の3つのファンドが設定されています。

直近5年のデータを基に計算すると、ファンドのリターンは7.9%、リスクは11.5%となっており、TOPIXより高いリターンでリスクが低くなっています。バランス型ファンドとして効率的な運用が行われていることがわかりますが、TOPIXとの連動性は高く、相関係数は0.94になっています。『日本株式だけに投資するのではなく、世界や株式外にも分散して投資して投資効率を上げているが、日本の株式市場との連動は高い』と見ておくと間違いないでしょう。

運用そのものは、JP投信ではなく、三井住友信託銀行の子会社に運用を委託しています。運用は、それぞれの資産クラスの運用でパッシブ運用になっています。アセットアロケーションについては基本配分比率が設けてあり、その比率を維持するというパッシブ運用になっています。

ファンドは2016年2月に設定・運用開始されていて、2019年初頭ごろまでは純資産残高も右肩上がりで積みあがってきていますが、その後、横ばいで推移しています。2021年5月末現在で純資産残高は、約475億円です。

※ 2021年5月末時点の情報で記入しています

ポートフォリオ

2021年4月末時点のポートフォリオは、日本株式44.2%、海外株式25.9%、日本債券19.8%、海外債券9.7%キャッシュ等0.3%となっています

運用体制

三井住友トラスト・アセットマネジメントが運用

アクティブ/パッシブ

パッシブ運用

販売会社

ゆうちょ銀行、スルガ銀行

資産残高の推移

ファンドは2016年2月に設定。設定以来、2019年初頭までは純資産残高は右肩上がりで上昇していた。その後、純資産総額は横ばい。2021年5月現在の純資産残高は約475億円

購入時手数料

1.1%(ゆうちょ銀行店頭)無手数料(ゆうちょ銀行インターネット、スルガ銀行)

信託報酬

0.63965%

収益分配金

分配金は2か月に1回。おおむね1万口当たり10円の分配金
現在の基準価額15,098円(2021年5月末)を勘案すると、分配金利回りは、0.39%(=10×6÷15098)程度

このファンドに対するコメント

バランス型ファンドの資産配分を考えるとき、最近では、不動産や新興国市場も考えるのが多くなってきていますが、このファンドでは、日本の内外の株式と債券に資産クラスを限定しており、また、海外についても先進国だけの設定になっています。加えて、運用もパッシブ運用で資産配分比率も大きく変えない投資戦略となっています。資産運用に詳しくないひとが一定数存在するゆうちょ銀行の顧客層を勘案した運用戦略のように思えます。

収益分配金が2か月に1回、しかも、公的年金の受取り月でない奇数月に支払われること、分配金の利回りが貯金の金利と比較してお得感があるように設定されていることを考えると、このファンドのメイン顧客層は、『公的年金を受け取ることができるシニア層』といえるのではないでしょうか。『2000万口程度保有していれば、年金を受け取れない月に12万円程度の自分年金が受け取れますよ』と勧誘されそうですね。