分散投資は弱い者の味方

分散投資は最悪の事態を回避する手段

将来の予測に自信が持てるのであれば、資産運用は難しくはあ りません。しかし、多くの人は将来の予測をしても自信が持てま せん。そういったときに、特別な知識がなくても、最悪のシナリ オを回避するための手段が分散投資なのです。つまり、分散投資 は情報や知識が限られたわたしたちの味方といえるでしょう。

資産運用は将来の予測

個人がポートフォリオを考えるときに問題となるのは、これから先の ことを考えないといけないということです。将来の資産クラスごとの騰 落率の比較があらかじめできるのであれば、誰も資産運用に苦労しませ ん。問題はこれから先どうなるかわからない市場をどう組み合わせるの が良いのかが、誰にもわからないということです。

もし、投資家が自信に満ち溢れており、例えば「日本株式は絶対儲か る!」と断言できるのであればまったく問題ありません。すべての資産 を絶対儲かると思う資産に投資してしまえばよいのです。

予測に自信が持てないから分散投資する

問題は、ほとんどの投資家はそういった自信が持てないということで す。市場の動向を機敏につかみ取ることはプロの投資家でも難しいこと ですから、一般の個人が先を読んで成功すると考えるのは少し甘いかも しれません。それでは個人の投資家はどうすればいいかというと、最悪 のシナリオを回避するように動けばよいということになります。そのた めに必要になるのが分散投資なのです。

基本的な考え方は、

  1. 日本で生活する以上、邦貨建資産を中心に考える
  2. 投資するお金を海外株式、海外債券、国内株式、国内債券、不動産および商品(原油や金、穀物など)に分散投資する
  3. 一部のお金を預貯金で保有することに加えて、資金を頻繁に移動させない(一部の資産を解約して、他の資産を買い増す)

ということです。

分散投資を行ううえでは、一部の資産が値上がりしたことを見て、「も っと投資しておけばよかった」と思うのではなく、値下がりした資産を 見て、「他の資産を持っていたから損失が少なくて済んだ」と思えるよ うにならなければなりません。分散投資とはプロのためにあるのではなく、一般の投資家にこそ必要なものです。

実際のデータで確認しよう

2013年から2017年(2017年は5月まで)の資産クラスごとの騰落率を比較してみると、どれかひとつの資産クラスが抜きんでているわけではないことがわかります。

資産クラスごとの年間騰落率

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市場の取引価格は絶対的なものではない

インデックスは市場全体を表していない

パッシブ(インデックス)運用は概念としてはとても魅力的な方法です。しかし、パッシブ運用を実現するには、市場インデックスが必要になります。ところで、この市場インデックスは市場全体を代表するわけではありません。そのため、どうしてもアクティブ運用の要素が残ってしまうのです。

パッシブ運用は魅力的だが…

アクティブ運用は、パッシブ(インデックス)運用に勝てません。なぜなら、アクティブ運用はインデックス運用に比べて信託報酬などのコストが高いから。長期運用を考えるとこのコストの差がボディブローのように効いてきて、結局、コストを差し引いた運用成績を比較すると、ほとんどの場合、インデックス運用が優っているという主張です。

この話は正解です。ただし、市場全体をカバーしているインデックスであるという前提条件が必要です。

市場を細分化するとアクティブ運用

昨今、市場の一部を取り出したようなインデックスがたくさん作られています。例えば、TOPIX(東証株価指数)でいうなら、TOPIXの規模別指数、TOPIX業種別指数などのサブインデックスがこれに該当します。ETFやETNといった上場投資信託(証券)が発達する中で、市場を細分化した指数が整備されてきたのです。

サブインデックスに連動したETFに投資したいときはどういうときでしょう?例えば、世界的な不況から回復過程にあるので、耐久財分野の株式が伸びそうだという判断で、自動車・輸送機のサブインデックスに連動するETFを購入する。一方、市場が冷え込みそうになったときは、自動車関連のETFを売却して、内需関連の堅調な業種、電力・ガスや医薬品などの分野に連動したETFを購入する。サブインデックスに連動するETFやETNを使うと、どうしてもこういった感じの運用になってしまいます。

ところで、こういった運用はインデックス運用でしょうか?いいえ、違います。景気の変動に応じて機動的に業種配分を変動させるアクティブ運用です。

すべての市場をカバーする市場インデックスはない

本当のインデックス運用は、日本株式ならTOPIXや日経平均株価などにトラック(連動)させている運用でしょう。さらに、世界的に考えれば、世界の株式や債券、それに、代替投資などすべてにトラックさせていること。そのような運用を、長期間続けていることが本当のインデックス運用なのです。

そんなカバー範囲の広いインデックスはあり得ない?そのとおり、パッシブ運用とインデックス運用は厳密には違うのです。パッシブ運用という概念は、あくまでも概念で、インデックス運用というのはその実現可能解のようなものです。

ライフプランニングに役立つ資産運用の考え方(リメイク中)の全文はこちらでご覧いただけます。

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