8月第2週の市況

2020/8/10    月

米国市場では、労働統計が公表され176万人の非農業就労者数増であった。6月の数より大きく少ないが、予想は超える水準。民主党と共和党の間でコロナウィルス対策の景気刺激策はまとまらなかった。SP500とダウは横ばい。昨日史上最高値を更新したNASDAQは値を下げる。T-Mobileは月間の契約者数が堅調で、AT&Tを抜いて全米第2位になった。株価は6.5%上昇。Uberはコロナウィルスのロックダウンの影響から需要が回復せず5.2%の値下がり。トランプ大統領が、中国のメッセージアプリのWeChartと動画シェアアプリTikTokを禁ずると発言したことから、Baidu、Alibabaなどの中国系企業が値下がり。欧州市場では株価上昇。シンセンのTencentに投資しているオランダのProsusは4%株価が下落。レムデシビルの製造を開始したHikma Pharmaceuticalは10.9%上昇。また、T-Mobileの親会社であるドイッチェテレコムは2.7%の株価上昇

2020/8/11    火

米国市場では、最近値を上げていたテクノロジー株が値を下げ、バリュー株が値を上げた。その結果、NASDAQは値下がり、SP500は幾分値を上げ、ダウは1%の値上がりとなった。トランプ大統領は失業給付を強化する大統領令に署名し、ムニューシン大統領は議会で景気対策策の合意がなされる見通しを示す。イーストマン・コダックは政府からの借り入れに不正があったとこが判明し株価は3割弱下落。Tik Tokの買収に難航しているマイクロソフトは2%値を下げた。中国の工場稼働率が戻りつつあり、原油価格が値を上げたことから、欧州市場は幾分値を上げた。BP、RDS、Totalの石油メジャーは1.3%~3%上昇。銀行セクターも2%値を上げた。カーニバルは9月からクルーズを再開すると公表し、株価は9.3%上昇

2020/8/12    水

米国では共和党と民主党で景気刺激策の合意が進展せず、株式市場は下落。アップル、マイクロソフト、Amazonなどが下落したためにNASDAQは1%以上の値下がりになった。欧州市場では、成長ベースの景気循環株にけん引されて市場は3週間来の高値になった。中国の8月の自動車販売が16.4%と大きく上昇したために自動車会社の指数は4.4%上昇。旅行・レジャー、ガス・石油、銀行などのセクターも上昇。ドイツの景況感指数ZEWも予想以上に改善

2020/8/13    木

米国市場では、昨日値を下げた、マイクロソフト、アップル、Amazonが値を上げ、Teslaは1株を5株に分割することを公表し13.1%値を上げた。消費者物価指数は予想以上に上昇。民主党のペロシ上院議員はトランプ政権との間に景気刺激策についてかなりの差異があるとコメントしたが、市場は大きく値を上げた。SP500は史上最高値に迫る水準まで値を上げ、NASDAQ、ダウも大きく上昇。欧州市場では、米国のLiberty Globalがスイスのサンライズ・コミュニケーションを74憶ドルで買収を提案。サンライズは26.8%値を上げ、サンライズの大株主のドイツのFreenetも16.8%値を上げる。英国では経済が6月に予想以上に上昇し、株式指数であるFTSEは2%の上昇。オランダの銀行ABNアムロは北米やアジアからの撤退を公表し、株価は8.1%の上昇

2020/8/14    金

米国市場では市場はわずかに下落した。シスコシステムズは第4四半期の売り上げ・収益ともに予想以下となる見通しで11.2%株価を下げた。アップルが1.2%株価を戻したことが市場の下落を限定的なものにした。失業者に対する給付の効果もあり、新規失業者保険申請者数は5か月ぶりに百万人をしたまわる。欧州市場では、英国のFTSEが、BP、アストラゼネカ、グラクソスミスクライアンなどの大手銘柄が配当落ちとなり、また、ポンド高を要因に、1.5%下落したこともあり、市場全体も下落。銀行、石油・ガス、鉱業、自動車などが0.8%~1.9%の下落。ドイツのティッセンクルップは主力の製鉄部門で10億ユーロの赤字となることを公表し、株価は16.3%下落  

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GPIFの資産運用【2020年第1四半期】

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、2020年度第1四半期の運用状況(速報)を公表しました。GPIFとは、公的年金(国民年金と厚生年金保険)のお金を運用する組織です。全額政府がっ出資する法人で、管轄は厚生労働省になります。

最初は、この四半期(2020年4月~2020年6月)が始まる直前のポートフォリオの確認です。

内側のグラフは基本ポートフォリオです。基本ポートフォリオとは、名前のとおり、基本になるポートフォリオです。外側のグラフは、四半期の始まる時点での実際のポートフォリオです。国内債券、外国債券、外国株式に“アンダーウェイト(under weight:基本ポートフォリオより投資割合を下げること)”し、日本株式と短期資産には、“オーバーウェイト(over weight:基本ポートフォリオより投資割合を上げること)”していたことがわかります。

GPIFは、『日本株式はきっとほかの資産より値上がりするだろう。国内債券、外国債券、外国株式はほかの資産ほど値上がりしないかもしれない。リスクもあるので資産の一部は非難させよう』と思っていたようですね。

2019年度末のポートフォリオ

次の円グラフは、第1四半期が終了した時点のものです。内側が基本ポートフォリオ、外側が実際のポートフォリオです。気が付くことがありませんか?そう、基本ポートフォリオが変わっているのですね。国内・外国、株式・債券と区分した資産クラスをすべて等分にしたのです。

オーバーウェイトの資産クラスは、外国株式と国内債券、アンダーウェイトの資産クラスは、国内株式と外国債券となりました。

2020年6月末のポートフォリオ

運用の点検もしておきましょう。下図は、市場の代表的な指数とGPIFの運用を比較したものです。国内債券以外は、GPIFのほうが、少しずつ良くなっていますね。

ポートフォリオ全体でみると、次のようになります。GPIFは市場に勝っていたといえそうですね。

2020年第1四半期の騰落率

市場

GPIF

2020年第1四半期

7.3%

8.3%

参考資料:2020年度第1四半期運用状況(速報)、2019年度業務概況書

おまけ・・・筆者がFacebookに書きこんだ内容

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用のニュースが載っている。8月5日(昨日)公表されたようだけど、8月6日朝の時点でGPIFのウェブサイトで同様の情報を見つけられない。【8月7日にGPIFはウェブサイトで、「2020年度第1四半期運用状況(速報)」を公開しました。】
マスコミに公表するのと、一般投資家に公表するタイミングがずれているなら問題マスコミに公表すると一般投資家も見るからよいというのは2つの点で間違い
一つは、タイムラグを利用してアービトラージ(裁定取引)ができるということ
もう一つは、マスコミがまとめるとバイアス(歪み)が発生する
今では、上場企業であれば、アナリスト向け資料は一般投資家でも閲覧できるようになっているし、企業が公表するとすぐにウェブでも閲覧できるようになっているはず。

おまけ・・・その2

GPIFは理事長が運用状況に関して、8月7日(速報をウェブで公開した日)、下記のようなコメントを出していますが、ファンドマネージャーがコメントするような内容ですね。

GPIFの理事長は、マネジメントというよりは、CIO(チーフ・インベストメント・オフィサー)のような位置づけなのでしょうか?

2020年度第1四半期の運用状況の公表にあたっての宮園理事長コメント

2020年度第1四半期(4月~6月)は、新型コロナウイルスを封じ込めるためのロックダウンが各国において徐々に解除に向かい、経済活動の再開や各国政府による手厚い財政政策・金融当局による積極的な金融緩和策を受けて米国を中心に経済指標が改善し、国内外の株式市場は大幅な上昇となりました。また、為替は対ドルでは概ね横ばいも、対ユーロでは円安が進行しました。このような結果、4月から6月までの運用資産全体の運用実績はプラス8.30%となりました。