繰上償還に関心を持とう~その2

コーラブル債に投資するファンド

コーラブル債というタイプの債券があります。通常の債券より少し利回りが高いので、コーラブル債に投資するファンドはパフォーマンスがよく見えます。でも、コーラブル債には繰上償還リスクがあります。コーラブル債に投資するファンドでは、特に、繰上償還に気をつけましょう。

コーラブル債に投資するファンド

ファンドの繰上償還は、ファンドの規模だけでなく、ファンドの投資している証券によってももたらされます。コーラブル債というタイプの債券があります。コーラブルとは、コールとブルに分けて考えるとわかりやすいです。コールというのは“売る”というものです。ブルは可能を表します。つまり、“売ることができる”というのがコーラブルの意味です。だれが売ることができるのかといえば、債券の発行体です。

つまり、債券の発行体がいざとなったら売ることができる債券が、コーラブル債です。債券に償還条件が付いていると考えるとよいでしょう。ただし、それだけだと投資家にとってマイナスにしかなりません。そこで、コーラブル債は少しだけ高い金利が設定されるのです。保有している債券の金利が高いと、ファンドもたくさんの収益分配金を支払うことができる。そのため、コーラブル債に投資するファンドはパフォーマンスがよくなるのです。

コーラブル債の価格と繰上償還リスク

コーラブル債はどのような時に償還されるのでしょう。それは、金利が下がった時です。金利が下がると、債券の発行体は金利の高いコーラブル債を償還してしまって、新たな金利の低い債券を発行してしまうほうが金利の負担が少なくて済むのです。

一般の債券を考えると、金利は低いほうが価格が上昇します。なぜなら、将来のキャッシュフローを割り引くときに、金利が低いほうが金額が高くなるからです。国債をイメージして、金利が低い時は景気の悪い時、だから、株式より債券のほうが人気が高い。だから、債券の価格が高くなる。そう考えても構いません。

ファンドで考えるのであれば、通常、債券に投資するファンドは金利が下がると価格が上がるといえます。でも、コーラブル債に投資しているファンドの場合、金利が下がりすぎると繰上償還のリスクが発生するために、逆に価格が下がることになります。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

繰上償還に関心を持とう

ファンドの繰上償還にご用心

繰り上げ償還とは、ファンドや債券が運用をやめてしまうことをいいます。投資家は、解約をしていないのにお金が返ってくることになります。お金が返ってきたので安心というわけではありません。そのお金の次の運用先を見つけなければならないからです。

ファンドの繰上償還

ファンドには投資期間が決められています。「このファンドは10年経ったら解散してお金を投資家に戻します」というような記述が信託約款には書かれています。信託約款とは、委託者(運用会社)と受託者(信託銀行)の間で定めたファンドの運用に関する取り決めです。

ところで、株式の場合、「10年経ったら解散します」と宣言している会社はありませんよね。株式会社は永遠に活動を続ける営利組織として考えられているのです。ファンドでも同じように永久に運用し続ける運用システムと考える場合があります。そのようなとき、信託約款には、「このファンドの投資期間は無期限です」と記載されます。

そして、その例外が、繰上償還なのです。つまり、「このファンドは原則としていつまでも運用を続けます。だけども、ある状況になったときはファンドを解散(繰上償還)してお金を投資家のみなさまに戻します」ということになるのです。

ファンドの損益分岐点

どのようなときに繰上償還になるのかといえば、ファンドが赤字になったときです。ファンドの損益は、

ファンドの損益=ファンドの収入-ファンドの費用

と表されますが、ファンドの収入は、ほぼ信託報酬です。信託報酬は純資産残高の数%で計算できますから、純資産残高に比例します。一方、ファンドの費用は2本立てで計算されます。会社に対してほぼ一律に必要となる費用(固定費)と人件費のように会社の希望に応じて増えていく費用(変動費)です。 図示すると、次のようになります。

そう、ファンドが赤字にならないためには、ファンドには一定の規模(純資産残高)が必要なのです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。