パッシブ運用の盲点

手数料の低さだけでファンドを選ぶのは早計

「アクティブ運用のファンドはコストが高くて、パッシブ運用のファンドに負けてしまう」といわれることが少なくありません。
しかし、本当は、運用成績が優れているアクティブ運用のファンドを見つけるのが難しいだけなのです。

アクティブ運用とパッシブ運用

ファンドに設定されたベンチマーク(ファンドの運用の基準となる指標)よりよい運用成績を求める運用スタイルがアクティブ運用。ベンチマークと同じような運用成績を残すことを目指す運用スタイルがパッシブ運用です。
日本の株式に投資するファンドであれば、代表的なベンチマークは、TOPIX(東証株価指数)が挙げられます。

アクティブ運用のファンドは見つけるのが大変

ここで、具体的なファンドを見てみましょう。パッシブ運用の代表は、三菱UFJ国際投信が運用する「eMAXISTOPIXインデックス」です。アクティブ運用の代表は、フィデリティ投信が運用する「フィデリティ・日本成長株・ファンド」です。

ともにたくさんの金融機関で取り扱われているファンドです。この2つのファンドに、20010年1月から2018年6月まで、毎月、月初に3万円ずつ投資した結果を比較したものが、こちらになります。

申込手数料は、アクティブ運用のファンドである「フィデリティ・日本成長株・ファンド」が高くなっています。また、この表には掲載されていませんが、信託報酬も「フィデリティ・日本成長株・ファンド」が高くなります。
それでも、累積騰落率に示すように、ファンドの運用に大きな差異はありません。

アクティブ運用がパッシブ運用に負けるというのが正しいのではなく、パッシブ運用に勝るようなアクティブ運用を探してくるのが一苦労というのが本当の話です。ちなみに、ここでは、「フィデリティ・日本成長株・ファンド」の申込手数料を3.24%として計算していますが、販売会社によっては、ノーロード(0%)にしている会社もあります。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

⼈⽣100年時代に求められる保障と貯蓄

先日なにげなくウェブを見ていたら「新商品「ジャスト」の裏側に迫る」という第一生命の記事広告に目がいった。新商品の販促の一環として商品開発の裏側を消費者に伝えることを目的として、お金を払って載せてもらう記事にしたものである。記事では、新商品「ジャスト」の特徴を3つに絞って紹介してあった。一つ目は主契約をなくしたこと二つ目は3大疾病や要介護状態などになったときにたくさん給付金が支払われること三つ目は、健康診断を提出して割引を受けることができるということである。

正直に申し上げれば、一つ目の主契約をなくしたことは第一生命が初めてではない。二つ目の生きているうちに一定の状態になったときに給付金がもらえるというのは、収益性の高い定期保険タイプの特約の組み合わせでしかないのではと考えてしまう。三つ目の健康診断書の提出は、自営業者ではない、サラリーマン層を狙ったもの?とも思える。それでも、営利性が求められる保険商品なので、会社の利益が透けて見えるから悪いというわけではない。会社がもうけを出せそうにない商品を売り出して、やっぱり続けられそうにないから早々に売り止めにするというような姿勢よりは、しっかりと収益が見込める商品を送り出している方が生命保険会社としては正論なのであろう。

さて、もう一つ指摘しておきたいのは、記事の中に、「⼈⽣100年時代」、「健康寿命」、「QOL(クオリティー・オブ・ライフ)」という文字が入っていることであろう。内閣が、人生100年時代構想会議を立ち上げるような超高齢社会になって、消費者としては死亡が遠くに感じられるようになったのではないだろうか。死ぬことも考えないといけないけど、その前に生きるためにどうしたらよいのか。金融の分野にも、生きていくために必要不可欠な金融商品を用意してほしいという要望が突き付けられているのだと思う。

確かに、保障の観点から考えると、第一生命の「ジャスト」のような商品が求められるのかもしれないが、貯蓄の面からも消費者のニーズに応えられる保険があるとよいと思う。例えば、複数の終身保険を特約化して1つのパッケージにしてしまうというのはいかがであろう。一つは、無解約返戻金型の終身保険。一つは、外貨建ての終身保険。そして、もう一つは、終身保険に変更できるオプションの付いた投資信託。

無解約返戻金型の終身保険は、定期保険を伸ばしたものと考えることができる。これだけだと、中途解約の場合に、何も戻ってこないというリスクがあるので、全部がこのタイプの保険だと困る。しかし、一部であれば問題が小さい。外貨建て保険は、現在販売されている平準払タイプのものが基本。一時払のものを買い増しできるようにしてもよい。そして、終身保険に変更できるオプションの付いた投資信託は、運用と保険の”いいとこ取り”を狙ったものになる。

運用に透明性があり、運用効率が高い投資信託と、死亡時に税制面でメリットがあり、さらに、保険金を通じて遺産の分配方法に柔軟性をもたらせてくれる終身保険組み合わせるのである。「ジャスト」のような商品は、保障の多様性とそのニーズの時系列による変化に対応できることを謳っている。これは、悪いことではない。一方、貯蓄の部分についても、消費者はそういった柔軟性を確保しておきたいと思っている。

投資信託と終身保険を対立するものとしてとらえるのではなく、大きな商品の一部になっていると、商品の中での柔軟性が生まれる。もっとも、大きな商品にすればするほど、説明が煩雑になり、募集態勢を整備するのにコストがかかるという負の側面も予想される。それでも、そう遠くない将来に、ポートフォリオ型の終身保険が登場するような気がしている。

 

この記事は、週刊インシュアランス(生保版)に掲載したものです