資産運用を考えるには2%と5%を意識しよう

資産運用を考えるには2%と5%を意識しよう

ライフプランの中で資産運用を考える

最近の金融商品は、2%と5%で4つに区分して考えるとよい。2%未満の利回りの商品や、5%超の利回りの商品は、不可欠ではない。インフレを前提に考えるのであれば、最低限欲しい利回りが2%として、無理のない運用で達成できる利回りが5%である。ライフプランの中で資産運用を考えるには2%と5%を意識しよう

4つのグループに大別する

『資産運用を考えるには2%と5%を意識しよう』と覚えておくとよいかもしれない。最近の金融商品をグループ化するときにその境目になるのが2%と5%というのがその意味することころである。2%、5%には、「年率のリターンが」という主語が付く。2%と5%で区切られた、(1)年率のリターンが2%未満のグループ、(2)年率のリターンが2%付近のグループ、(3)年率のリターンが5%付近のグループ、そして、(4)年率のリターンが5%をこえるグループの4つのグループをイメージしてもらえばよいであろう。

(1)年率のリターンが2%未満のグループの代表は、預貯金や円建ての年金保険などである。そのリターンは、2%未満というより、限りなくゼロに近い。市場の金利動向に応じて、金利が変動する個人向け国債(10年)の最近の適用利率は0.05%程度で、そのリターンほぼゼロである。これからの金融商品は、お金を保存しておくという機能は担っていると考えられるが、お金を殖やすという機能は担っていないと考えるのが妥当である。資産を殖やすという運用を考えるのであれば、(1)のグループの金融商品はマッチしないと結論付けるとよい。

(2)年率のリターンが2%付近のグループには、外貨建て保険や保守的なバランス型ファンドが含まれる。現在、日本銀行が物価の目標としている水準が2%である。物価が2%で上昇するのであれば、資産も2%で殖えなければ、実質的な資産の価値は目減りしてしまう。そう考えると、2%付近のリターンを目指す商品は、本来的な意味での資産運用商品というよりは、インフレに備えるための防御的な金融商品と表現するのがよいだろう。

(3)年率のリターンが5%付近のグループには、主力となるバランス型ファンドが含まれる。バランス型ファンドの話をすると、「どのようなアセットアロケーション(資産配分)?」と聞かれることが少なくないが、現実は、運用成績の良いバランス型ファンドであっても、アセットアロケーションはバラバラである。年率5%のリターンに意味をつけるとすれば、リスクをできるだけ抑えて、効率的な運用を現実的に模索すると、だいたい年率5%程度のリターンの金融商品に辿りつくということになる。

(4)年率のリターンが5%をこえるグループに含まれる金融商品は、海外不動産や銀行のプライベートバンキング部門が取り扱っているような”秘密の”金融商品になる。この分野の投資をしようと思うのであれば、自分でリターンの計算ができること、そして、リスクを見つけられることが大切になる。専門的な知識のない人が投資していると、相続が発生した時やリーマンショックなどのような金融危機が起こった時、さらに、戦争などが発生した時などに対応できない。

ポートフォリオの考え方を使おう

4つのグループに分類してみるとわかることは、これからの時代に不可欠になるのは、(2)と(3)のグループということになる。「退職した人が退職金を10年間保存しておきたい」というニーズがあったと考えてみよう。「保存しておきたい=実質的な価値を減らさない」というのであれば、(2)のグループの商品、外貨建て保険やリスクが低いタイプのバランス型ファンドがニーズに合った商品ということになる。もし、「保存しておきたい=リスクはあまり採りたくないけど資産を殖やしたい」と考えているのであれば、(3)のグループの商品が正解になる。運用成績の良いバランス型ファンドは、平均すると、年率5%程度のリターンを提供してくれる。10年間年平均5%のリターンを達成すると資産は1.6倍以上になっている。もちろん、インフレが2%であっても実質的な資産価値は増えている。

2%と5%の中間はどのようにして作ればよいのだろうか。答えは2つの商品を組み合わせることである。そう、ポートフォリオの概念を金融商品のレベル使えば中間の問題に対応することができる。

この記事は、インシュアランス生保版に掲載した記事を転載しています。

資産クラスを2つにグループ分けして考える

景気の良し悪しでグループを大別できる

様々な金融商品が発達した恩恵を受け、日本の投資家が投資できる資 産クラスは多様化しました。多様化した資産クラスは、景気が良いと きに魅力があるグループと、景気が悪いときに魅力があるグループに 大別できます。全体を大まかに捉えてから、より細かい部分を考える ようにするとうまく整理できます。

多様化する資産クラス

世界の市場は、株式、債券のほかに為替や商品などで構成されていま す。日本でも選択肢が増え、たくさんの金融商品に投資できるようになり ました。投資信託は、株式や債券に投資するときに、少額でも投資を可能 にするという選択肢を提供してくれました。そして、近年では、IT技術 の進化によりFX取引が容易になり、さらには、ETF市場が整備される ことを通じて商品先物も購入できるようになりました。気がつけば、日本 の投資家は、たくさんの資産クラスに投資できるようになっています。

資産クラスを2分化する

さて、この資産クラスですが、経済の動きと比較すると2つに大別でき ることがわかります。一つは、“リスクを回避したいと思っている”とき に魅力的な資産クラスです。どんなときでも価値が安定していると考えら れる金・銀といった貴金属、世界の超大国米国の国債、さらに、基軸通貨である米ドルなどはリスクを回避したいときに魅力的に映る資産クラスと いえるでしょう。

もう一つのグループは、“高いリターンを実現させたい”と思っている ときに魅力を感じる資産クラスです。例えば、世界経済が好調であると工 業生産が堅調になります。一般的に、産業用金属の需要見通しも上向きに なり、商品先物の価格が上がることにつながるでしょう。豪ドル、カナダ ドルあるいはブラジルレアルは、そういった産業用金属を産出する国の通 貨です。そして、工業生産が堅調であるのなら、株式市場にも好影響を与 えていることを予想するのは自然なつながりです。

2つの大きな資産クラスとして考える

世界では、リスクを回避したいときに魅力を感じる資産クラスの集合 と、高いリターンを目指したいときに魅力を感じる資産クラスの集合が、 日々、綱引きをしていると考えるとよいでしょう。そして、この綱引きは、 一方が勝って終了という綱引きではありません。永遠に引っ張ったり緩め たりを繰り返しています。たくさんの資産クラスを一度に考えることは難 しいかもしれませんが、2つのグループのどちらが綱を引っ張り、どちら が緩めているのかを考えることは、少しだけ考えやすいかもしれません。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。