外貨建て保険の説明

外貨建て保険

米国でトランプ氏が大統領になったからというわけではないのだろうが、最近、外貨建て保険についてテキストを作ってほしい、セミナーをしてほしいという要望を受ける。外貨建て保険の話をする場合、

(1)標準利率が下がると保険料がどの程度上がるのか(保険数理
(2)生命保険会社の資産運用はどのようになっているのか(保険会社の財務戦略
(3)その保険会社にとっての外貨建て保険の商品としての位置づけ(保険会社の商品戦略
(4)その保険会社の販売チャネルの話(保険会社の商品販売戦略
などについて説明しなければならない。

国際分散投資?

さて、資料を作り始めて思うのは、外貨建て保険は、「国際分散投資」といってよいのだろうかということである。個人的には、外貨建て保険を国際分散投資で説明するのはよくないと考える。まったくダメかというと、まったくダメとも言い切れないので少し厄介でもある。
国際分散投資とは、リターンがプラスになるものの組み合わせで、いろいろなものに投資しておくと分散投資の効果によりリスクが低減できるというものである。したがって、株式を中心に話をするときに使う概念である。
為替は、(人によって異論はあろうと思われるが)基本的にはリターンを産み出さないものである。つまり、価格が変動すするのでリスク要因ではあるが、リターンの要因ではない。だから、通貨をいくら組み合わせても国際分散投資にはならない。外国株式は外貨建てであり、為替ヘッジしなければ、結果としてポートフォリオに複数の通貨が組み入れられることになるというのが正解である。

国際分散投資という言葉が使われる理由

なぜ、国際分散投資という言葉が使われるのかといえば、言葉が魅力的だからというのがその理由であろう。分散投資という言葉と、海外投資という言葉は響きがよい。そしてこの二つの言葉を組み合わせた、国際分散投資という言葉はもっと響きがよい。なんだか、素晴らしい投資をしている気分にさせられる。だから、国際分散投資という言葉が使われる。
外貨建て保険については、本来であれば、通貨の話ではなく金利の話が説明の中心になるべきだと思う。高い金利を使うことができる、標準利率の制約も受けないという点が説明され、その結果、割安な保険料になる。また、将来インフレになったとき、外貨建て資産を保有しておくとリスクヘッジになるということも魅力として挙げられるべきであろう。円安になる円高になるといった通貨の見通しを説明してもあまり訴求力はない。そもそも、数十年の期間で為替の動向を予想できる人はいない。だから、為替を資産運用のように表現することは適切ではない

特定保険契約

外貨建て保険は変額保険とともに、特定保険契約に分類される。投資信託並みの情報開示等が求められるので、外貨建て保険と変額保険は同じように論じられることが多いが、この二つの保険は全く別物と考えた方がよい。変額保険は、資産運用の要素が多分に含まれるために投資信託や株式などと比較して説明されるべきであろう。一方、外貨建て保険は、通常は普通の定額保険である。保険料や保険金が外貨建てというだけである。比較すべきは、円建ての終身保険や養老保険などである。

外貨建て保険の本質

セミナーでお話しさせていただくとき、最後は、「外貨建て保険は投資信託や株式ではなく保険です」ということを説明させていただく。「外貨建て保険⇒資産運用⇒為替にリスク⇒為替の説明」となってしまうと、きっとうまく説明できないと思う。保険募集人の方が説明をするのであれば、「日本と外国の金利差⇒外貨のほうが割安⇒円安になるとインフレになる⇒外貨を保有しておけばリスクヘッジに⇒一部を外貨で保有しよう」という説明のほうがおすすめである。
この記事は、週刊インシュアランスに掲載したものを一部修正して掲載しています。

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