介護保険は大切な保険になってきたと思うのですが、少し気を付けてほしいと思います。
誰にとっても、要介護状態になることは避けたいこと。だから介護保険に加入する。
ということに反対する人はいません。一方、
介護保険に支払う保険料はできるだけ低い金額に抑えていたい
ということに反対する人もいないでしょう。 でも、この2つは相反することです。だから、
(1)支払える保険料を決めて、その範囲内で、できるだけ効果的に備える
(2)できるだけ備えを絞り込んで、保険料を抑える
という2つのことを考えます。(1)と(2)はどちらかを行うというより、(1)と(2)を行ったり来たりしながら、自分なりの結論にたどり着くというわけです。
ここまでも間違っていません。
そこで、自分にとっての介護の備え(保障)はどの程度が必要なのか?を合理的に計算することが必要になります。よく雑誌などを見ると、次のような計算が例示されていることがあります。
要介護状態になったときの1か月の追加費用:8万円
要介護状態の期間(=平均寿命-平均余命):8年
必要保障額=8万円×12か月 × 8年=768万円
この方法で、必要保障額を見積もると、過大に金額を見積もることになると思います。『ここが間違い』ということです。
なぜでしょう?
それは、1か月の追加費用が人によって大きく異なるからです。
お金に余裕のある人は、介護にお金をたくさん使うことができ、そのため月々数十万円の費用が掛かる有料老人ホームに入居する
お金に余裕のない人は、できるだけ自宅で過ごし、特別養護老人ホーム(特養)のような公的な介護施設を利用する。介護保険の保障もあるので、月々の費用はそれほど掛からない
特養に入居することだけを取り上げても、支払っている税金の金額に応じて、市区町村が負担する額が異なります。
大切なことは、民間の介護保険が先にあるのではなく、
公的な介護保険や市区町村が独自に展開しているサービスや地域ケアを優先して考える。そのうえで不足する部分を民間の介護保険でカバーする
ということ。
『介護保険より介護保障』という視点が失われると、正しい介護保険は選べない
ということです。