一方、30代・40代は子育て世代でもある。親の介護に拠出できる資金は限られている。前もって準備しておくことができなければ、保険で準備しようというのがリスク管理の基本であるが、子の世代は保険料を拠出することも大変かもしれない。片方の親だけ介護保険に加入させるということになると不公平感もある。やはり、介護保険は介護を受ける側が負担すべきだと思うが、一部の受取人を子の世代にすることはできないだろうか?
つまりこういうことである。要介護状態になったときは介護保険金や年金を親の世代自身が受け取る。現金で受け取る保険であれば、そのお金を周りの人の交通費に充てることも可能だろう。一方、要介護状態に陥らずに亡くなった場合には、一定の金額を死亡保険金として受け取れるようにしておくのである。要介護状態になったときの保険金は被保険者が受取り、死亡保険金は相続人が受け取るように設計されているのであれば、税制上の問題もないであろう。結果的に介護保険のお世話にならなければ、一定の金額が相続財産に加えられることになる。
保険をキーに考えると、保険料が高くなるという苦情になりそうであるが、相続をキーにして考えるとそうでもないように思う。だれでも、できるだけ次の世代に多くの資産を遺しておきたいものである。その反面、要介護状態になったときにはたくさんのコストがかかると認識している。前述の平成24年度生命保険に関する全国実態調査によれば、要介護状態になったときに必要と考える初期費用の金額は平均で262万円になっている。自分たちが要介護状態になったら民間の介護保険で一定のお金を確保して、そうならずに済んだときは一定のお金を遺しておく。こうしておけば、介護保険に加入して、それとは別に、死亡保険に加入するよりはコストを抑えられる。
最近では、保険料が絶対的に安いことだけが強調される傾向があるが、金額や給付を受ける確率がどの程度なのかといった保障内容と保険料を比較することが強調されるようになるべきであろう。そして、もう一つ大切なことは、同じ給付金額であっても、消費者によってその価値は変わるということである。消費者の多様性を前提にするのであれば、特徴のある介護保険がたくさん登場するとよいと思う。
※この記事は、2012年、週刊インシュアランスに記載したものです