「バリュエーション」と「ファンダメンタルズ」

ファンダメンタルズとバリュエーションは株価の表と裏

株式の本源的な価値を分析することをファンダメンタルズ分析といいます。一方、バリュエーションとは投資家が思う株式の価値の収束点のことです。

本来であればこの2つの価格は一致するはずなのですが、実際の市場では一致することはほとんどありません。

「バリュエーション」と「ファンダメンタルズ」

株式関連のニュースを見ていると、「バリュエーション」という言葉と、「ファンダメンタル(ズ)」という言葉が出てきます。それぞれ、「Valuation」、「Fundamentals」という英語なのですが、直訳すると、「評価」、「基本」となります。

「バリュエーション」はその株式の「評価」ということです。評価が高いということは人気が高いということを意味します。株式のレポートで、『バリュエーションの観点から売却した』と書いてあると、『人気が出すぎて割高になったので売却した』という意味になります。

「ファンダメンタルズ」は、その株式の本来の価値という意味です。業績や業界内でのポジションなどを勘案して企業価値を求めて、それに基づいて計算した株価を指すことが多いです。株式のレポートで、『ファンダメンタルズの改善が期待できるために・・・』と書いてあれば、売上高の好転や営業利益の回復など、会社の業績そのものがよくなるということを意味しています。

「バリュエーション」と「ファンダメンタルズ」の狭間で動く株価

ところで、実際の株価は、「バリュエーション」と「ファンダメンタルズ」の狭間で動いています。ファンダメンタルズが改善するまでじっと待っている投資家はいません。売上げが2倍になった企業の株価は、その発表がある前に上がってしまいます。だから、投資家はその企業を継続的に値踏みしています。それが、バリュエーション、企業評価です。

バリュエーションの内容は投資家によってまちまちです。まちまちの段階では株価にあまり影響を与えません。しかし、投資家のバリュエーションにあるトレンド(傾向)が生まれるとそれは株価に影響を及ぼします。

株価水準を測るための基準が必要

負のトレンドが生まれると、株価にマイナスの圧力がかかることになります。ここで投資家に差が出ます。ファンダメンタルズの話ができる人にとって、株価の基準は自分で推し量った株価ということになります。できない人にとって、株価の基準は他人の評価の平均ということになります。

負のトレンドが発生したときに、“分散投資”や“長期投資”を話しても適切な説明はできません。必要なのはなぜ負のトレンドが発生したのかその理由の説明と適正な株価水準の説明になるでしょう。

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定食かア・ラ・カルトか

正しい知識を糧に金融商品を取捨選択しよう

金融商品の発展とわたしたちの知識は密接に連動しています。人気のある金融商品とは、一般的なわたしたちの知識・経験に照らし合わせて受け容れられるものになっています。よい商品というためには、わたしたちに広く受け容れられていることが必要です。ただし、人気があるだけで十分ということではありません。

日本で初めて変額年金保険を作ったとき

外資系の生命保険会社で商品設計を担当していた筆者は、20世紀の終わりごろ、日本で初めての変額年金保険の設計に没頭していました。それまで、前例のない商品を日本に持ち込むわけですから、手探りでさまざまな仕組みを考えなければなりませんでした。心を砕いた取扱いの一つに、「変額年金保険でどのようにポートフォリオを提供するべきか?」という問題がありました。

具体的にいえば、(1)あらかじめ一定の比率で日本株式や海外債券といった資産クラス(パーツ)を組入れたいくつかのタイプから投資家に好みのものを選択してもらう方法を採用するのか、それとも、(2)日本株式、海外債券といったパーツごとに投資家が投資する割合を自由に指定できる方法にするのかという問題でした。わたしたちは、あらかじめ組み合わせが決まっているということで、(1)を「定食」方式、自由に組み合わせを選ぶことができるということで、(2)を「ア・ラ・カルト」方式と呼んでいました。この定食方式と、ア・ラ・カルト方式、つぎのような一長一短がありました。

  長所 短所
定食方式 投資の知識がなくても投資配分を決めることができる 投資の知識が豊富な投資家には物足りなさが残る
ア・ラ・カルト方式 投資家ニーズに自在性をもって対応できる 投資経験が少ないとサポートが必要

ア・ラ・カルト方式を選択して失敗した理由

結局、わたしたちは、ア・ラ・カルト方式を選択しました。そして、その選択は失敗でした。なぜなら、当時、わたしたちは、「資産クラス」といわれてもあまり馴染みがなく、ましてや、「アセット・アロケーション(資産配分)」などといわれてもチンプンカンプンの人が圧倒的に多かったのです。自分でポートフォリオを組み立てるア・ラ・カルト方式は時期尚早だったわけです。

私は、『金融商品はそれを受け容れる人がいて始めて成立するものである。』ということに気づかされました。

この話を、金融商品を購入時点での判断に活かすのであれば、『理解できないものには手を出さないほうがよい』といえるでしょう。わたしたちが全体として金融商品を取捨選択していくことにより、よりよい金融商品だけが残っていくことになるのです。

金融教育や金融知力が必要なのは、良質な金融商品を育てる土壌となるからなのです。

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