日本債券はとても魅力的な投資対象だった

効率的フロンティアに近い日本債券

どの資産クラスに投資すればよいのか思いめぐらすとき、私たちは、リスクとリターンという2つの尺度を使います。できれば、リスクは採りたくないけど、リターンは欲しい。その境目を表すのが「効率的フロンティア」という概念です。過去数十年を振り返れば、日本債券という資産クラスは、効率的フロンティアに最も近い資産クラスだったのです。

横軸をリスク、縦軸をリターンとして平面で資産を表現するとそれぞれの資産の魅力度が目でわかるようになります。左上の(リターンは高いけどリスクが低い)領域は、投資家はうれしいけど実現不可能な領域です。

実現可能な領域と実現不可能な領域の境目を表すのが効率的フロンティアと呼ばれる線です。効率的フロンティアは、リスク・リターンの異なるポートフォリオの集合です。あるリスクを指定したときに、実現可能で最も高いリターンを与えてくれるポートフォリオがつながった線です。

効率的フロンティアと日本債券の関係

実際のデータを用いて、計算した効率的フロンティアと計算の際に使用した各資産クラスのリスク・リターンの特性を比較すると図のようになります。

日本債券は効率的フロンティアにかなり近いところにあることが確認できます。リスクの低い部分の効率的フロンティア上のポートフォリオは、ほとんど日本国債で構成されている状態です。

過去数十年を振り返れば、日本債券(ほぼ国債と同義です)を保有していることはとても効率的な資産運用であったといえるのですね。もちろん同じ環境が将来にわたって続くという保証はありませんので、これから先も日本債券がもっとも魅力的な資産クラスであるわけではありません。

この記事は、「ライフプランニングに役立つ資産運用の考え方(リメイク中)」の一部です。全文をお読みになりたい方は、こちらからダウンロードできます。

リスクが小さくリターンの大きな運用はない

リスクとリターンは比例している

金融商品を考えるときの第一原則は、「リスクとリターンは比例している」ということです。そして、誰がどのリスクを引き受けているのかわからないのであれば、その商品には投資しないほうが賢明であるということです。

 

人気を博した一時払変額年金保険

ちょうどリーマン・ショックがやってくる数年前の2000年代前半に時間を戻してください。一時払変額年金保険が人気を集めていました。なぜ人気を集めていたかといえば、株式などに投資してその運用の成果が年金額に反映される仕組みであるのに、運用が失敗したときには保険会社がその損失を補てんしてくれるというオプションが付いていたからです。運用のリスクはどこに消えたかといえば、投資家から保険会社に移転されていたのです。

投資家がとらないリスクは保険会社が引き受けているわけで、変額年金保険を販売している保険会社は資産運用リスクの塊のような状態になっていました。それでも、人気があって販売できるものは販売したい。保険会社の経営判断は難しいものになっていました。

金融庁による規制の強化

この状態を問題視したのが金融庁でした。株価が下落したときに補てんする金額をしっかりと保険会社内部に積み立てておくように法令を改正したのです。また、保険金の支払い余力を図るための指標であるソルベンシー・マージン比率の計算にも、最低保証にかかるリスクを含めるように改正されました。

リスクとリターンは比例する

保険会社は、それまではなかばサービスとして提供してきた最低保証について、お金を徴収せざるを得なくなりました。最低保証を提供する代わりに、毎年、運用する資産の2~3%程度の費用を負担することを投資家に求めたのです。
実は、変額年金保険の資産運用はそれほど高いリスクをとっているわけではありませんでした。債券の割合が相当入ったバランス型のポートフォリオになっていたのです。つまり、期待リターンで考えると3~4%程度の水準であったのです。この水準の利回りから、最低保証にかかる前述のコストを差し引いて、さらに、保険会社の維持費用を差し引くと、投資家に残るリターンはほとんどゼロに近い水準になっていたはずです。つまり、最低保証を付けてもらって投資家はリスクのない状態になった。けれども、そのためには手数料が必要で、その手数料を支払うと、定期預金程度の利回りにしかならなかったというわけです。
この例から知ってほしい教訓は、引き受けるリスクがなくなると、受け取るリターンは小さくなる。リスクとリターンは比例しているということです。

リスクとリターンの関係