市場とプロの投資家・個人投資家

個人投資家の強みは長期投資に耐えられること

株式市場や債券市場には、プロとアマチュアの垣根がありません。アマチュアである個人投資家は、知識・ノウハウあるいは情報の量・質という点でプロの投資家に負けます。一方、運用をプロに委託できる、長期投資に耐えられるという点が個人投資家の強みになります。

株式・債券市場は築地市場と同じ!?

野菜や魚の市場にはプロ向けの市場と一般向けの市場があります。資格を持った仲買人だけが参加できる市場、東京の築地市場などは典型的な市場ですね。一方、一般の人たちは、スーパーなどの小売店で購入します。こちらのスーパーとあちらのスーパー、比較して安いほうで購入する。これも市場の一つです。さらに、欲しいものが確定しているのであれば、オークションサイトで購入することも可能です。オークションも市場の一つです。

有価証券の代表格である株式と債券も、市場で売買されます。株式は、例えば築地市場に個人投資家からプロの投資家までがすべて一堂に会して売買を行っていると考えればよいでしょう。築地市場ですから、並んでいる商品に懇切丁寧な説明書はついていません。プロとアマチュアが同じ目線で売買をしている、それが株式市場です。

一方、債券市場は、オークション市場です。債券を売りたい投資家と買いたい投資家のマッチングで取引が成立します。ただし、売買情報は、継続的に取引を行っている投資家にしか集まってきません。そこで、証券会社が個別の投資家の代わりに売買を行うことになるのです。情報は証券会社に集中することになります。

個人投資家がプロの投資家に対抗するためには

株式市場でも債券市場でも、個人投資家は情報のギャップにより不利益を被ります。どのような株式なのかを分析するには相応の知識と経験が必要になります。
債券市場では情報そのものを集めることがその前段階として必要になります。プロの投資家であれば、相応の知識や経験があり、それなりの情報収集能力がありますが、個人投資家にはありません。

個人投資家がプロの投資家に対抗するためには、2つの方法が考えられます。一つは、運用をプロの投資家に助けてもらうこと。投資顧問契約を締結する、プロの投資家が運用する投資信託を購入するというのが具体的な手段です。もう一つは時間を味方につけることです。プロの投資家は、四半期ごとには成果を求められますから、長期的に値上がりする銘柄を中心に投資することは難しいのです。ところが、個人投資家であれば、数年あるいは数十年と待つことができます。長期投資は、個人投資家がプロの投資家に対抗すための対抗手段の一つなのです。

 

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

カリスマファンドマネージャーがいない理由

ファンドマネージャーとファンドの運用実績とは無関係

現在の資産運用ビジネスで、カリスマファンドマネージャーが出現する可能性はとても低くなっています。むしろ、注目したいのは運用チームです。そして、運用チームが集まって運用会社を作っていると考えれば、投資家は運用会社に注目したほうが賢明といえるでしょう。

カリスマファンドマネージャーはなぜいない?

現在では、ヘッジファンドなどの一部の分野を除いて、カリスマファンドマネージャーはほとんどいないといっても過言ではありません。なぜなら、一般の投資信託の場合、ファンドマネージャーの仕事は、市場の抜け道を探し出して大儲けするというようなものではなく、リスクを適切に管理しながら預かった資産を着実に殖やしていくということだからです。金融派生商品(デリバティブズ)を使うことも限定的でしょうし、したがって、相場を張るといったイメージも適切ではありません。

そもそも、ファンドマネージャーも運用会社の組織の一員であり、独立して仕事をしているわけではありません。そのような環境の中、普通のファンドの運用において、カリスマファンドマネージャーが現れる可能性はとても低いものです。ファンドマネージャーの個性を追ってみたところで、あまりファンドの運用成績の説明にはならないというのが実際のところです。

運用チームに注目する

一方で、実際のファンドの運用は、ファンドマネージャーを含む運用チームで行われていることが少なくありません。株式ファンドであれば、個別企業を分析するアナリスト、経済や市場動向を調査するストラテジスト、投資判断を行うファンドマネージャーとCIO(チーフ・インベストメント・オフィサー)、決済を行うバックオフィスなどがチームになっているのです。

この運用チームがどのような運用戦略を持っているのか、それをどのように実行しているのか、さらに、運用結果をどのように開示しているのかなど、実際にファンドを分析するときは運用チームの分析を中心に行います。ですから、現在では、ファンドの良し悪しは、カリスマファンドマネージャーがいるかということではなく、運用チームがどのような運用を行っているかにかかっているのです。

運用チームが集まって運用会社ができる

運用会社は、運用チームが集まってでき上がっていると思えば間違いありません。そして、運用チームの中で、特に優秀で規模も大きくなっている運用チームがその会社を代表していると思えばよいでしょう。

欧米の会社であれば、債券運用に強い会社、特定のスタイルの株式運用に強い会社、新興国投資に強い会社など特徴を持つ運用会社が少なくありません。つまり、ファンドがよい運用成果を上げられるかどうかを調べたいのであれば、そのファンドを運用している運用会社に十分な能力が備わっているかをチェックしたほうがよいといえるでしょう。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。