今月のピックアップファンド(のむラップ・ファンド(普通型))

ファンドの特徴

このファンドは、野村アセットマネジメントが運用する、債券(日本/外国)、株式(日本/外国)、リートの5つの資産クラスに投資するバランス型ファンドです。ポートフォリオの基本比率は公開されていませんが、実際のポートフォリオがどうなっているかは、月次レポートで確認できます。2020年3月末現在、国内株式に約16%、外国株式に約26%、日本債券に約13%、外国債券に約30%、REITに約14%投資するポートフォリオになっています。のむラップ・ファンドにはリスク・リターンのことなる5つのファンドがありますが、このファンド(普通型)は、リスク・リターンが真ん中に位置するファンドになっています。「真ん中」というのが効いているのか、5つのファンドの中では、最大の純資産残高(869億円)になっています。

過去5年の履歴からリスクを計算すると約10%です。株式指数のリスクよりは小さいが、外国債券のリスクよりは大きいい程度の数値です。運用は、各資産クラスでは原則的にインデックス運用になっているようです。アセットクラスの組み入れ比率は、「野村證券株式会社は、独⾃に開発したモデルを⽤い、より効率的と想定される投資配分⽐率を算出します」と記されているので、アセットアロケーションはアクティブ運用ということになるのでしょう。ただし、運用報告書を見ると、株式40%、債券45%、REIT15%で組み入れ比率は固定されているような感じもします。

このファンドには、積極型、保守型という2つのリスク・リターン特性の異なるファンドも用意されています。また、ファンドの設定時期は少し遅れますが、やや積極型、やや保守型というファンドもあります。

※ 2020年4月末時点の情報で記入しています

ポートフォリオ

マザーファンドが設定されています。マザーファンドの運用も野村アセットマネジメントが行っています

運用体制

自社運用

アクティブ/パッシブ

資産クラス:パッシブ運用
アセットアロケーション:アクティブ運用

販売会社の特徴

野村證券、七十七銀行、滋賀銀行、伊予銀行、楽天証券、SBI証券、auカブコム証券など

資産残高の推移

ファンドは2010年3月に設定。ほぼ単調に右肩上がりで純資産残高を伸ばしています。2020年3月末時点では832億円に達しています

購入時手数料

購入時手数料は1.1%を上限に販売会社各社が定める
(伊予銀行の場合: 1億円未満1.1% 1億円以上なし)

信託報酬

1.353%(年額)

収益分配金

分配は年1回(毎年2月)。「分配対象額の範囲内で、基準価額⽔準等を勘案して委託会社が決定」と記載があり、実績ベースでは、年間1万口当たり10円程度の配当ですので、純資産残高の成長に重点が置かれているようです

ファンドに対するコメント

野村證券とほかの販売会社の販売比率がどの程度になっているのか気になるところですが、おそらく、野村證券でも回転売買ベースの商品というよりは、積立指向の商品として位置付けているのでしょう。純資産残高の変動のペースがほぼ一定で右肩上がりになっていることから想像できます。

運用自体は当たり障りのない無難な運用になっていることが想像されますが、購入時手数料と信託報酬の設定水準が、前世代的な感じを受けます。高すぎます。積立商品として勧めるのであれば、購入時手数料ゼロ(ノーロード)、信託報酬は0.5%程度が最近の潮流のように思います。

配当についても、積み立てを意識するのであれば、無理に年間10円程度の配当を支払うこともないと思います。

トレンド・アロケーション・オープンの投資戦術と資産運用の推移⇒一歩先の視点

ファンドの意思決定と運用推移

このファンドは、高リスク資産(先進国株式/新興国株式/先進国リート/コモディティ)と低リスク資産(先進国国債/先進国社債/新興国国債/短期債券・キャッシュ等)に分類して、上昇トレンドの高い時は高リスク資産に多く投資し下方リスクの高い時には低リスク資産に多く投資するバランス型ファンドです。ファンドの運用は三菱UFJ国際投信ですが、実質的にはアリアンツ・グローバル・インベスターズが担当します。

コロナウィルスの影響で各国の市場が大きく値を下げていく中、このファンドがどのような対応をしたのか分析します。このファンドは2月末の時点で約57%の資産を株式などの高リスク資産に配分していました。株式市場全体を表すTOPIX(東証株価指数)は、すでに、2月に10%以上値を下げていました。

ファンドが独自に投資判断をしたのは、3月6日です。この日にファンドは定期的な月次のリバランスで、高リスク資産の比率を13.5%引き下げ、43.4%にしました

次に、3月13日には臨時のリバランスを行いました。これは、このファンドが、「直近1年の最高値から15%以上基準価額が下落したときにはリスクを引き下げる」という方針を採っているためです。3月17日には、高リスク資産の比率は0%になりました。3月末時点のレポートを見ると、このファンドの資産は、78%が日本国債、13%が米国債、8%が現金に配分されています。

このファンドの投資判断をもとに、上図を見ていただくとよいと思います。投資の意思決定があった3月9日は3月第2週に含まれ、3月17日は3月第3週に含まれます。

3月第3週以降は、ほかのバランス型ファンド(eMAXIS8資産均等)や市場(TOPIX)と比較して値動きの幅が小さくなっていることがわかります
リスクを管理するというこのファンドの当初の目論見は、果たせていることがわかります。

一歩先への視点

このファンドで覚えておいてほしいことは、リスクを絞るときは満足を得られるのですが、市場が上昇局面になったときに再び高リスク資産への配分を高めるタイミングが難しいということです。このタイミングが遅れてしまうと、左図で「Aの部分」で示した部分の損失が確定することになるからです。ファンドなので、損失の確定は基準価額に反映されます。

ほかのファンドほど、基準価額が上がらない(運用が悪い)という状況になります。
市場から逃げるという判断は簡単なのですが、市場に戻るという判断は簡単ではありません。ファンドのリスクを抑えようとするのであれば、どうしても高リスク資産の比率を引き上げるタイミングは遅れがちになると思われます。

リスク低減型と呼ばれるファンドは、市場の下降局面には強いのですが、上昇局面に入ったときに、リスク資産への投資を維持しているファンドに比べて運用パフォーマンスが落ちることが想定されます。