2019年の株式市場から学ぶべきこと~その2

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さて、一歩話を進めるとすれば、どうしてそうなったの?という原因を明らかにしておくことである。2018年は、年の半ばに米中の貿易戦争ともいうべき状態が勃発した。米国が貿易赤字に業を煮やし、相手国に個別に関税の引き上げをちらつかせながら交渉を行い始めた。その影響がはっきりと表れたのが2018年であった。ちなみに、米国の経済は減速したわけではない。ただし、2018年の年末にかけてその兆しはあった。債券市場で逆イールドという状況が出現したからである。

景気悪化の前兆といわれる逆イールド(カーブ)

2019年に入って米国では、トランプ大統領がパウエルFRB議長に圧力をかけ金利を引き下げることに成功した。トランプ大統領は、米中貿易協議でも、市場に気を持たせながら1年かけて、なんとなく一部の合意に至った。FRBはトランプ大統領の求めるように金利を引き下げ、英国のBrexitの混乱による一時的な落ち込みはあったものの、2019年は各国の株式市場が、最終的には、史上最高値を更新し続ける市場になった。

覚えておくと役に立つことは、「日本円」という資産クラスである。為替は、普通、外国株式や外国債券の騰落率の中に組み込まれている。2018年の、円ドル為替は、2.7%円高に動いたのである。円高になると、外貨建て資産は、(為替ヘッジをしていなければ)一様に影響を受ける。

景気が悪くなると、投資家は安全資産に資金を戻す。日本円は、安全資産の一つと考えられている。だから、円高になる。円高は外貨建て資産の大敵である。円高は株安と同時に起こることが考えられる。

さらに、理解しておきたいことは、米国市場は史上最高値を更新し続けているということである。つまり、株式はとても高い評価を受けているわけである。株式がどの程度の評価を受けているのかは、

PER(株価収益率=株価÷1株当たり純利益)

で測ることができる。

しかし、

実際の市場で考えられているPERは、「株価÷1株当たりの予想される純利益」

である。予想される純利益が引き下げられたら、PERが変わらないとすれば株価が下がることになる。市場で付けられている株価は、予想の業績に基づく数値なのである。37万台しか自動車を生産しない電気自動車のテスラモーターズの時価総額が、GMとフォードの2社の時価総額の合計額を超えたと、2020年1月に報じられた。これも同じである、テスラモーターズの予想される純利益が大きいので、株価が高くなる。同じ理由で、予想が覆ると株価も大きく損なわれることも容易に理解できる。

この記事は、「週刊インシュアランス」に掲載したものを、出版社の許可を得て転載したものです。