繰上償還に関心を持とう

ファンドの繰上償還にご用心

繰り上げ償還とは、ファンドや債券が運用をやめてしまうことをいいます。投資家は、解約をしていないのにお金が返ってくることになります。お金が返ってきたので安心というわけではありません。そのお金の次の運用先を見つけなければならないからです。

ファンドの繰上償還

ファンドには投資期間が決められています。「このファンドは10年経ったら解散してお金を投資家に戻します」というような記述が信託約款には書かれています。信託約款とは、委託者(運用会社)と受託者(信託銀行)の間で定めたファンドの運用に関する取り決めです。

ところで、株式の場合、「10年経ったら解散します」と宣言している会社はありませんよね。株式会社は永遠に活動を続ける営利組織として考えられているのです。ファンドでも同じように永久に運用し続ける運用システムと考える場合があります。そのようなとき、信託約款には、「このファンドの投資期間は無期限です」と記載されます。

そして、その例外が、繰上償還なのです。つまり、「このファンドは原則としていつまでも運用を続けます。だけども、ある状況になったときはファンドを解散(繰上償還)してお金を投資家のみなさまに戻します」ということになるのです。

ファンドの損益分岐点

どのようなときに繰上償還になるのかといえば、ファンドが赤字になったときです。ファンドの損益は、

ファンドの損益=ファンドの収入-ファンドの費用

と表されますが、ファンドの収入は、ほぼ信託報酬です。信託報酬は純資産残高の数%で計算できますから、純資産残高に比例します。一方、ファンドの費用は2本立てで計算されます。会社に対してほぼ一律に必要となる費用(固定費)と人件費のように会社の希望に応じて増えていく費用(変動費)です。 図示すると、次のようになります。

そう、ファンドが赤字にならないためには、ファンドには一定の規模(純資産残高)が必要なのです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

資産運用は集約化されている

ファンドはどんどん集約化、巨大化している

ファンド・オブ・ファンズなどの運用形態を使えば、すでに運用されている他のファンドに投資することが可能になります。運用成績の良いファンドを選んで投資することができるため、「後出しじゃんけん」のようにリスクを減らすことができます。その結果、世界的に実質的な運用拠点は集約化されてきています。

ファンド・オブ・ファンズは後出しじゃんけん

ファンド・オブ・ファンズというファンドがあります。世界的に広く使われている運用形態です。ファンドがほかのファンドに投資する。ファンドをできるだけ簡単に組成する(立ち上げる)ときに有効な手法です。

一からファンドを立ち上げようとすると、運用資産を集めるところから始めなければなりません。しかし、ファンド・オブ・ファンズを使えば、すでに運用され、運用履歴(トラックレコードといいます)のあるファンドに投資することができますから、後出しじゃんけんのようなものです。よいファンドだけをピックアップしてくれば、結果として、よいファンドができ上がるという仕組みです。

資産運用の集約化

ところで、ファンド・オブ・ファンズの流行は、世界的な運用機関に資金が集約されるを意味しています。日本の運用会社が、米国株式に投資するときに、現地に拠点を作って運用を始めるよりも、運用実績のある現地の運用会社のファンドに投資してしまうほうが合理的なのです。

実は、ファンド・オブ・ファンズによらない運用においても同じような実態があります。日本の運用会社が運用している外国株式ファンドや外国債券ファンドの多くは、その運用の主要な部分は海外の運用機関に運用を再委託しているのです。各社のホームページから請求目論見書をダウンロードして運用に関する記述を探してください。信託約款(運用会社と受託銀行の間での運用の取り決めをした契約内容)があれば、運用の再委託についての記載があります。海外の具体的な運用機関の名称が記載してあり実質的な運用は海外で行われていることが確認できます。

この事実を、運用会社の側から見れば、運用の拠点はどんどんと集約して巨大化しているということになります。例えば、ETFやETNの運用は運用会社ブラックロックがガリバー化しています。
また、米国株式のアクティブ運用であればフィデリティ、国際債券のアクティブ運用であればPIMCO、新興国のアクティブ運用であればJPモルガンというように、資産クラスによって集約化される運用会社(マネージャー)が固定化していることも知っておくとよいでしょう。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。