為替ヘッジにかかかるコスト

為替ヘッジのコストは内外の金利差

為替ヘッジは将来の為替レートを固定するもので、為替にかかるリスクをゼロにしてくれます。その代わりコストがかかり、為替ヘッジにかかるコストは内外の金利差で計算できます。

為替の基本

為替市場は、日々刻々とレートが変わっていきます。変動相場制といわれるものです。米ドルと円の取引は、世界中どこに行っても行われていますから、市場はほぼ1日中開いている状態といってもよいでしょう。為替のレートはすぐに変わってしまいます。

このすぐ変わってしまう為替レートを、一定の水準で保証しましょうというのが為替ヘッジです。外貨である米ドルを保有していて、円安になったら円に戻すときに利益が発生します。逆に、円高になっていると損失が発生します。つまり、為替にはリスクがあるのですが、そのリスクを回避できるのが為替ヘッジです。

為替ヘッジのコスト

図を見ながら考えてみましょう。今日の対米ドルの為替レートは、「1ドル=100円」です。手元に100万円あるとします。外貨に投資しないで、日本で定期預金に預けていたとします(経路1)。そうすると、100万円× 0.1%=1,000円の利息が発生します。

一方、外貨に換えることを考えてみます。手数料や税金を無視すれば、100万円は1万ドルに換わります。そして、米国で定期預金に預けたとすれば、1万ドル× 2% =200ドルの利息が発生します。「1ドル=100円」で為替ヘッジしてあるとすれば、円に換えると、200ドル× 100円=20,000円の利益が発生します(経路2)。

このケースでは外貨投資したほうがお得になりますね。でも、為替ヘッジにはコストがかかります。そのコストは、このケースだと19,000円。だから、経路2を通ったときの収益は、20,000円-19,000円=1,000円になってしまうのです。そう、経路1と同じになります。為替ヘッジのコストは、19,000円=100万円×(2%-0.1%)と計算できるのです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

通貨選択型ファンドを解明する

3つのリスク・リターンの組み合わせ

通貨選択型ファンドのリターンは、円と適用される通貨の為替リターン、適用される通貨と原資産の通貨の為替プレミアム、さらに、原資産のリターンの3つの部分に分解できます。したがって、そのリスクもリターンに応じて3つの部分に分解することができます。

ファンドの仕組み

通貨選択型というタイプのファンドがあります。一言でいえば、金利の高い国の通貨を保有することによる為替からのリターンと、株式や債券など実際に投資するものの値上がりからのリターン、両方を追い求めるタイプのファンドということができます。

金利の高い国の通貨で思い出されるレアルを介してドル建てのREIT(不動産投資信託)に投資する例を考えてみましょう。

まず、①投資家は日本円で投資します。②ファンドは日本円をブラジルレアルに転換します。③その後、ブラジルレアルから米ドルに再転換します。このとき、ブラジルレアルから米ドルに対して将来の為替レートを固定します(為替ヘッジ)。米ドルになった資金は米国のREITに投資します。④数年経過してREITを売却します。⑤売却金額は、米ドルからブラジルレアルに転換されます。このとき、為替ヘッジがかけられているので、ブラジルレアル-米ドル
の為替レートはすでに決まっています。⑥そして、ブラジルレアル
が日本円に転換されて投資家の手元に届きます。

リターンの分解

このファンドのリターンは、下図のように3つの部分に分解できます。一つは、日本円とブラジルレアルの為替の変動部分。ここは市場頼みです。円安になれば為替益が発生し、円高になれば為替損が発生します。為替プレミアムは、為替ヘッジをかけた時点で確定します。REITの運用も市場頼みです。REITの価格が上がれば利益が発生し、下がれば損失が発生するしくみです。確実な部分は、為替プレミアムの部分だけなのです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。