アカウント型保険の将来~その2

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数十年前、投資信託(ファンド)の世界では黒船がやってきた。黒船の名前は、『ファンド・オブ・ファンズ(FOF)』FOFは投資信託がほかの投資信託に投資するしくみである。つまり、後発の投信会社であっても、海外の有名な投資信託に投資するようにすれば、投資先の投資信託の運用成果を採り入れることができるのである。FOFで画期的であったのは、投資するファンドは、自社が運用するファンドでなくてもよいということであった。複数の(歴史がありよい運用成果を挙げている)よいファンドに投資するファンドを作れば、後発の運用会社でも消費者から評価を得ることができるようになったのである。

筆者はアカウント型保険が、FOFのようなものになればよいと考えている。つまり、アカウント型保険を作るのはA社であるが、そこに含まれるがん保険はがん保険の長年のノウハウがあるB社の商品、あるいは、介護保障は、子会社に介護ビジネスを手掛けるネットワークが充実しているC社の商品というように、自前主義をあきらめて、本当によい商品をラインナップするようにするということである。そうすると、保険会社は分野ごとに寡占が進むことになる。保障を提供できない保険会社は保険グループとしてのアカウント型を組成する役割を担うことになる。

アカウント型保険が不要な保険だとは思わないが、消費者に広く受け入れられるには2つの改良が必要であると思う。一つは、販売員の質の向上である。PCにいくつのかの数値を入れるだけではライフプラン分析は完了しない。自力でライフプランが分析できて、初めてアカウント型保険の提案ができる。もう一つは、保険商品に対する発想の転換である。すべてを自社でまかなうことができる保険会社はないと考え、外部のノウハウを安いコストで取り入れてしまうようにすればよい。数十年前に解禁されたFOFは、今ではファンドの世界では当たり前のしくみになっている。

<この記事は、週刊インシュアランス生保版に掲載されたものを転載したものです>
 

アカウント型保険の将来

アカウント型保険は、直販社員を販売の主力に据えている日本社の主力商品である。一言で定義するならば、「ライフプランの推移に応じて保障のポートフォリオを変化させることができる保険グループ」ということができるであろう。保険グループというのは、2つ以上の保険が組み合わされて一つの商品になっているという意味である。若いときには医療保障が必要で、家族が増えると死亡保障を中心とした保障に切り替え、さらに、時間が経過すると、老後の貯蓄や介護の保障に切り替わる。そういったニーズに対応するのがアカウント型保険である。

保険グループと表現したが、もう少し、それなりの言葉を使うと、「ラップ型商品」ということになる。ここでいうラップ(Wrap)は、“サランラップ”のラップと同じで、『包み込む』という意味である。実は、保険商品が他の金融商品と比べて優れているのは、このラップ機能を発展させることができるという点である。海外で販売されているユニバーサル保険もラップ型保険である。保険という大きな枠組みの中に、資産運用と保障機能を合わせて含めてしまうのがユニバーサル保険。保険契約者から見ると、ひとつの保険商品を契約してしまえば、その中で何でもできてしまう。そういったメリットがある

FP(ファイナンシャル・プランナー)はアカウント型保険に否定的な人が多い。理由は二つ考えられる。一つはFPは外資系の保険会社の商品を扱っている保険代理店の保険募集人である場合が少なくないということ。これは、単に、競合商品をよく思っていないというだけの話である。もう一つは保障のポートフォリオを、本当に適切に切り替えることができるのかという問題である。年齢に応じて保障のポートフォリオが変わっていくということに異論はないが、それでは、「その都度、しっかりライフプランを考えて、キャッシュフロー表を作成して分析しているのか」と、販売している保険会社に尋ねると、胸を張って、『ハイ』といえる状況ではないと思う。

<続く>

この記事は、週刊インシュアランス生保版に掲載されたものです。