ファンドにかかる手数料は、2種類に大別できる

販売会社で異なる申込(購入)手数料と差異がない信託報酬

ファンドにかかる手数料は、申込時に必要となる申込(購入)手数料と、ファンドを保有している間ずっと必要となる信託報酬に大別できます。申込(購入)手数料は販売会社により異なる手数料になっていることがありますが、信託報酬はどの投資家に対しても同じレートが適用されます。

申込(購入)手数料と信託報酬が手数料の2本の柱

ファンドにかかる手数料は、ファンドを購入するときに一度だけ支払う手数料とファンドを保有している間ずっと支払う手数料に大別できます。後者の手数料は、信託報酬等の手数料です。信託報酬はファンドのすべての受益者(投資家)で同じ比率になっています。たとえば、信託報酬が年率で1%(税込)だとすると、毎日、純資産価額に1%÷365(366)をかけた金額を信託報酬として(投資家が)負担する仕組みです。

一方、前者の手数料は申込手数料(購入)手数料と呼ばれる手数料で、販売会社が独自に決めることができます。申込手数料については目論見書に記載することになっていますが、実は、多くの投資信託では申込手数料についてはその上限を定めているだけになっています。つまり、目論見書に定めた(投資信託の委託会社と受託会社が定めた)手数料の水準以下であれば、銀行や証券会社などの販売会社が独自に手数料の水準を決められるのです。一般的に、販売会社は顧客層に応じた手数料体系を採用しているようです。ネット系の販売会社は申込手数料を抑える傾向にあります。地方銀行などでは、ある程度まとまった金額で購入してくれる投資家を優遇するような体系をとっているケースが少なくありません。こういった背景を理解しておくとファンドを選択するとき参考になるかもしれませんね。参考までに、ある海外債券ファンドの申込手数料の設定例を例示しておきます。

販売形態の多様化に応じて申込(購入)手数料も多様化

ところで、信託報酬と申込手数料には考え方に差があることにお気づきでしょうか?信託報酬は大口の投資家でも小口の投資家でも同じ比率で手数料がかかります。つまり、大口の投資家だからといって優遇されることはないのです。すべての受益者が平等に取り扱われているのです。一方、申込手数料では大口投資家は優遇されています。
実は、申込(購入)手数料もかつてはどの販売会社でも同一の料率になっていた場合が少なくありませんでした。しかし、販売会社が多様化し、販売形態が多様化していく中で、現在のように販売会社の意向を反映させられる手数料体系に変わっていったのです。

ファンド(投資信託)に投資したお金と情報の管理

資産は受託銀行が、情報は販売会社が管理

ファンドに投資したお金は、販売会社(証券会社や銀行など)から受託銀行(信託銀行)のファンド専用口座に振り込まれます。この口座は受託銀行自身の資産とは分別して管理されています。また、ファンドでは投資家の個人情報は、販売会社が管理し、委託会社や受託銀行に提供されることはありません。(委託会社や受託銀行が販売会社を兼ねているときは除きます)

ファンドの資金管理

投資家(消費者)が投資信託(ファンド)に投資したお金(買付代金)は販売会社から、委託会社を経ることなく、受託会社(銀行)に直接振り込まれます。受託銀行にはファンドの専用口座が開設されています。ファンドのお金はここで一元的に管理されています。
もし、委託会社が倒産しても、ファンドの資産は受託銀行で保管されていますから安全に守られています。受託銀行が倒産したら、受託銀行には分別保管が義務付けられており、預かった資産と自己の資産を混同できないようになっています。したがって、受託銀行自身が債務超過に陥ったとしても、ファンドの口座は安全に守られているという仕組みです。

ファンドの情報管理

お金の動きとは別に情報も流れます。「Aさんが、Bファンドを1万円購入した」とします。Aさんに関する情報は、販売会社から外部に流れることはありません。投資家AさんがBファンドを購入したという情報は、販売会社は知っていますが、運用会社(委託会社)や信託銀行(受託銀行)は知らないのです。
運用会社や信託銀行に送られる情報は、
  • 1万円(手数料を差し引かれるときは差し引いた後の金額)が受託銀行に送金されたということ
  • 売買の口数(ファンドは口数単位で取引されます)

です。

この記事について

杉山 明

ブログでお知らせしましたが、「投資信託エキスパートハンドブック」が絶版になることが決まりました。とても残念なのですが、せっかくの機会なので、視点を変えて作り変えてみようと思いました。「投資信託エキスパートハンドブック」は出版社からの要請もあり、金融機関勤務者向けの視点から書かせていただいたのですが、今度は、一般の消費者の視点から書かせていただこうと思っています。

PDF版もあわせて配信していく予定です。PDF版は、より書籍に近く、図表は作り直してきれいなものになっています。