損切りすることも大切

損切りすることも大切

損切り水準の設定で投資に安心感が生まれる

市場が下がったとき、どのタイミングで保有している株式やファンド を売却するのか、損切りラインをあらかじめ考えておくことはとても 大切です。そうすることで、さらに、投資する銘柄やファンドを十分 に吟味するという効果も期待できるのです。

日本人は株式を売却しない

日本銀行が公表している、資金循環統計の「資金循環の日米欧比較」に よると、リーマン・ショック前の2007 年3月末、家計の資産に占める株 式・出資金の割合は、日本が12.4%、米国が38.3% でした。そして、2012 年3月末には、同じ割合は、日本が6.5%(変動分-5.9%)、米国が31.9% (同-6.4%)に低下しています。

日本では株式等の割合が6.5% にまで下がっているのに、米国ではまだ 3割以上の資産を株式で保有していると感じるかもしれません。しかし、 この期間に日本の株式は半分に値を下げましたが、米国の株式はほぼ同じ 株価水準だったのです。それを加味すると面白い結果になります。

損切りラインを設定する

実は、日本の投資家は、株式を保有したらその株式を継続的に保有す る傾向が高いのかもしれません。それに対して、米国の投資家は結構早く 見切りをつけているといえるのかもしれません。

そして、ここで考えておきたいのは、投資に見切りをつけるタイミングで す。パニックになって売却するのはよくありませんが、あらかじめ決めら れていた一定水準(損切りライン)を下回ったら株式を売却するという方針を立てておくことは、とても大切なことであろうと思います。市場が大 きく下がったときにとるべき行動が決まっているというのは安心感を与え るからです。そして、この話は、株式だけでなく、投資信託(ファンド) にも拡大して考えてよいでしょう。

損切りラインの設定には副次的な効果もあります。損切りラインを考える ためには、現在の株価や基準価額の水準を考えることになります。さら に、銘柄やファンドの特徴を考えて予想される下落幅も考えることになり ます。つまり、投資家は投資する対象を自分で吟味するということになり ます。投資に区切りをつけることもあらかじめ考えておくことは大切なこ とです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

市場とプロの投資家・個人投資家

個人投資家の強みは長期投資に耐えられること

株式市場や債券市場には、プロとアマチュアの垣根がありません。アマチュアである個人投資家は、知識・ノウハウあるいは情報の量・質という点でプロの投資家に負けます。一方、運用をプロに委託できる、長期投資に耐えられるという点が個人投資家の強みになります。

株式・債券市場は築地市場と同じ!?

野菜や魚の市場にはプロ向けの市場と一般向けの市場があります。資格を持った仲買人だけが参加できる市場、東京の築地市場などは典型的な市場ですね。一方、一般の人たちは、スーパーなどの小売店で購入します。こちらのスーパーとあちらのスーパー、比較して安いほうで購入する。これも市場の一つです。さらに、欲しいものが確定しているのであれば、オークションサイトで購入することも可能です。オークションも市場の一つです。

有価証券の代表格である株式と債券も、市場で売買されます。株式は、例えば築地市場に個人投資家からプロの投資家までがすべて一堂に会して売買を行っていると考えればよいでしょう。築地市場ですから、並んでいる商品に懇切丁寧な説明書はついていません。プロとアマチュアが同じ目線で売買をしている、それが株式市場です。

一方、債券市場は、オークション市場です。債券を売りたい投資家と買いたい投資家のマッチングで取引が成立します。ただし、売買情報は、継続的に取引を行っている投資家にしか集まってきません。そこで、証券会社が個別の投資家の代わりに売買を行うことになるのです。情報は証券会社に集中することになります。

個人投資家がプロの投資家に対抗するためには

株式市場でも債券市場でも、個人投資家は情報のギャップにより不利益を被ります。どのような株式なのかを分析するには相応の知識と経験が必要になります。
債券市場では情報そのものを集めることがその前段階として必要になります。プロの投資家であれば、相応の知識や経験があり、それなりの情報収集能力がありますが、個人投資家にはありません。

個人投資家がプロの投資家に対抗するためには、2つの方法が考えられます。一つは、運用をプロの投資家に助けてもらうこと。投資顧問契約を締結する、プロの投資家が運用する投資信託を購入するというのが具体的な手段です。もう一つは時間を味方につけることです。プロの投資家は、四半期ごとには成果を求められますから、長期的に値上がりする銘柄を中心に投資することは難しいのです。ところが、個人投資家であれば、数年あるいは数十年と待つことができます。長期投資は、個人投資家がプロの投資家に対抗すための対抗手段の一つなのです。

 

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。