リスクの説明

「リターン-リスク」または「リターン-リスク×2」が損失の目安

2項モデルのケースを拡大していくと、リスクとリターンの関係を理解することができます。リターンとは実際に起こりうる騰落率の代表値(平均値)になっており、リスクはそのばらつきを表す指標です。そのことから、「リターン-リスク」または「リターン-リスク× 2」を損失の目安とすればよいことがわかります。

拡大した2項モデル

リターンを日本語にすると「期待収益率」、リスクは日本語にすると「標 準偏差」になります。リターンとは、たくさんある経路の代表値になって います。図2.23 は、2.23 と同じケース(リターン2 %、リスク3 %)の場 合の経路の出現回数をグラフにしたものです。横軸が実現した騰落率。縦 軸はその発生する頻度です。もっとも低い騰落率(実際の利回り)は-8% です。もっとも高い騰落率は12% です。しかし、-8% も12% もほとんど 発生しないことがわかります。

リスクとリターンを使った損失の目安の説明

資産運用でリターンとリスクを上手に使って将来の状況を説明するには 次のように説明します。 リターンは将来起こるべき可能性(すべての騰落率)の平均を表してい ます。したがって、リターン2 % というのは、すべてのケースの平均が2% になっているという意味です。そして、すべての騰落率のブレの程度がリスク(標準偏差)になります。「最悪どの程度になるのか?」という 質問があるかもしれませんが、じゃんけんを何度やっても負け続ける可能性があるのと同じで、考えてもきりがありません。そこで、リスクを使っ て説明します。リターンからリスク分だけ離れた範囲を作ります。この範 囲の中に本当の騰落率が落ち着く可能性が68%、リターンからリスクの 2倍離してあげればその可能性は95% です。「リターン-リスク」または 「リターン-リスク×2」が損失の目安と考えればよいのです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

リスクの正体

リスクとは資産運用のばらつき

リスクとはリターンのばらつきですが、実際に簡単な計算をしてみるとその意味がよく理解できます。運用がうまくいくか、失敗するかの簡単な2項モデルを使ってリスクの正体を明らかにしてみましょう。

2項モデル

あるファンドの年換算したリターンが2.0%、リスクが3.0% だとしま す。簡単な方法で、このファンドの運用を推定してみましょう。最初に1 年を4分割します。リターンもリスクも3ヵ月単位にします。リターンは 「2.0%÷4=0.5%」、リスクは「3:0%÷ 40.5= 1.5%」と計算します。

そして、このファンドは3ヵ月間で運用がうまくいったときは「0.5% + 1.5% =2.0%」、運用がうまくいかなかったときは「0.5%-1.5% =-1.0%」の 運用成果になると考えます。3ヵ月の運用は次のようになると想定するわ けです。

これを1年間、つまり、3ヵ月の運用を4回繰り返します。もし、運用 がうまく推移すれば、「2.0% +2.0% +2.0% +2.0% =8.0%」と1年間で 8 % のリターンが得られます。反対にうまくいかなかったとすれば、「-1.0%-1.0%-1.0%-1.0% =-4.0%」です。これを表にすると、次のように なります。

リスクの正体

ところで、経路の数を考えてみましょう。4期とも運用がうまくいく ケース(108 円)にたどりつく経路は1通りしかありません。一方、3期 運用がうまくいって、1期運用がうまくいかないケース(105 円)にたど りつくケースは4通りあります。実際の運用利回りが年換算したリターン (2.0%)と一致するケース(102 円)に至る経路は最も多い6通りありま す。

実は、この経路の数がリスクの正体です。実際のリターンが、予想したリ ターンに一致しない場合が上下にばらついて存在している状態です。その ばらつき具合を示す指標がリスクと呼ばれている標準偏差という指標で す。リターンの上下に±リスクをとってあげると(2.0%+3.0%=5% から 2.0%-3.0%=-1.0%)、その間に入っている経路の数は14 通りです。かな りの高い割合で、実際のリターンがこの間に入ることを意味しています。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。