為替オーバーレイ戦略

為替を独立した資産クラスと考える考え方

為替はコントロールできないものを考えると為替ヘッジ戦略をとりますが、為替はリターンを生じさせる個別の資産だと考えるのであれば為替オーバーレイ戦略という考え方が採用されます。為替オーバーレイ戦略では為替を独立した資産クラスと考えます。

為替への考え方~為替ヘッジあり

為替ヘッジについては、こちらで説明しました。なぜ為替ヘッジを行うのかといえば、為替のリスクが怖いからです。投資家が為替ヘッジを行いたいと考えるのであれば、銀行がそのリスクを引き受けてくれます。たとえば、自動車会社が決算前に日本円での利益を確定させたいのであれば、為替ヘッジを行うことになります。ただし、金利の低い国の通貨と金利の高い国の通貨を、現在と同じレートでヘッジするには相応のコスト(費用)がかかります。

為替への考え方~為替ヘッジなし

為替ヘッジには、通常コストがかかるのでコストを負担したくない。そもそも、株式やREITなどの有価証券に投資するのであれば、原資産(株式やREITなど)のリスクも大きいので、投資家は為替のリスクを含めて投資しているというのであれば、為替のリスクは放置したままになります。これが、「為替ヘッジなし」という状態です。

為替オーバーレイ戦略

さらに、為替を一つの独立した資産クラスと考える考え方があります。これが、為替オーバーレイ戦略です。図を見てください。有価証券のウェイトと書いてある円グラフが、原資産のポートフォリオを表しています。そして、上段の為替のウェイトが為替のポートフォリオを表しています。

ここで原資産の日本株式と日本債券はいずれも円建ての資産です。それぞれウェイトが、25%と22%になっていますから、何もしなければ日本円のウェイトは47%のはずです。ところが、為替のポートフォリオを見ると日本円のウェイトは28%です。一方、外貨建ての資産は、原資産のウェイトより為替のウェイトが大きくなっています。意味するところは、日本円を売って、外貨を保有しておけば、外貨から収益を受け取ることができるという考え方です。 このように原資産と為替を分離して投資を考える戦略を、為替オーバーレイ戦略といいます。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

為替ヘッジにかかかるコスト

為替ヘッジのコストは内外の金利差

為替ヘッジは将来の為替レートを固定するもので、為替にかかるリスクをゼロにしてくれます。その代わりコストがかかり、為替ヘッジにかかるコストは内外の金利差で計算できます。

為替の基本

為替市場は、日々刻々とレートが変わっていきます。変動相場制といわれるものです。米ドルと円の取引は、世界中どこに行っても行われていますから、市場はほぼ1日中開いている状態といってもよいでしょう。為替のレートはすぐに変わってしまいます。

このすぐ変わってしまう為替レートを、一定の水準で保証しましょうというのが為替ヘッジです。外貨である米ドルを保有していて、円安になったら円に戻すときに利益が発生します。逆に、円高になっていると損失が発生します。つまり、為替にはリスクがあるのですが、そのリスクを回避できるのが為替ヘッジです。

為替ヘッジのコスト

図を見ながら考えてみましょう。今日の対米ドルの為替レートは、「1ドル=100円」です。手元に100万円あるとします。外貨に投資しないで、日本で定期預金に預けていたとします(経路1)。そうすると、100万円× 0.1%=1,000円の利息が発生します。

一方、外貨に換えることを考えてみます。手数料や税金を無視すれば、100万円は1万ドルに換わります。そして、米国で定期預金に預けたとすれば、1万ドル× 2% =200ドルの利息が発生します。「1ドル=100円」で為替ヘッジしてあるとすれば、円に換えると、200ドル× 100円=20,000円の利益が発生します(経路2)。

このケースでは外貨投資したほうがお得になりますね。でも、為替ヘッジにはコストがかかります。そのコストは、このケースだと19,000円。だから、経路2を通ったときの収益は、20,000円-19,000円=1,000円になってしまうのです。そう、経路1と同じになります。為替ヘッジのコストは、19,000円=100万円×(2%-0.1%)と計算できるのです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。