かんぽ生命の問題とSDGs(持続可能な開発目標)~その2

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一つ目のポイントは保険の製造と販売を兼ねるのがよいのかということである。製造と販売を兼ねるから、いずれか一方の弱い部分に引きずられるというのは、郵便局・かんぽ生命だけの問題ではないのかもしれない。郵便局としては、かんぽ生命の保険商品以外の保険会社の保険商品をさらに販売できるようにして、保険代理店としての立場を鮮明にしたほうがよいのではないだろうか。そう考えると、日本郵政グループで問題の解決策を検討すること自体が矛盾をはらんでいる

二つ目のポイントは、郵便局の価値をどこに置くのかで決まると思う。私が講演で接した、まじめで人の好い人たちがいるところということに価値を置くのであれば、収入保険料で評価するというしくみ自体を改める必要がある。日本郵政株式会社の株主構成をみると、政府および地方公共団体が6割弱の株式を保有しているわけなので、政府および地方公共団体に丁寧に説明すれば、利益のみを追求する私企業とは一線を画した企業経営が許されるのではないだろうか

実は、二つ目のポイントも郵便局・かんぽ生命だけの問題というよりは金融機関全体の問題である。投資家(株主)の立場から企業を考えると、高い配当を払い続けてくれる企業がよい。さらに配当が増えていくのであればなおありがたい。そのために、企業は配当の原資となる利益を維持する必要がある。増配のためには、増益が必要である。そして、そのためには、より利益率の高いものを販売するか、よりたくさんのものを販売する必要がある。企業は毎年の目標を立てて、それを傘下の各部門に割り当てる。そして、このビジネスモデルはいつか破たんする。破たんするとコンプライアンスの問題だと言われる。果たしてそうであろうか

昨今ではSDGs(持続可能な開発目標)で主張されることが多い。日本郵政株式会社傘下の企業の中でも、特に、郵便局株式会社においては、SDGsの観点が重要視されるべきなのではないかと考える。日本郵政株式会社から、郵便局株式会社を分社・独立させて、より社会的な使命を担う役割を与えてもよいのではないだろうかと思料する。

【この記事は、週刊インシュアランスに掲載したものです】

かんぽ生命の問題とSDGs(持続可能な開発目標)~その1

かんぽ生命の保険の不適切販売が問題になっている。「ノルマが厳しくて、不正とは知りながらやってしまいました」という現場の意見「現場の暴走を許してしまったガバナンスの不行き届き」と謝罪するトップの図式は、何度か見てきた構図である。筆者は、かんぽ生命や郵便局のみに存在する問題が状況を悪化させたのではないかと考えている。

最初に指摘したいのは、商品とニーズの不適合の問題である。周知のとおりかんぽ生命の保険には、同一被保険者あたりの保険金額の上限が設定されている。営業成績を年換算保険料で測るのであれば、保険金額あたり単価が高くなる養老保険が重視されることになる。学資保険も同様で、少なくとも、終身保険を売りたいというのが、会社側のニーズになる。ところが、保険契約者側は、低金利で元本割れする養老保険は求めていない(ニーズがない)のである。顧客に求められないものを販売することほどつらいビジネスはない

筆者は、かつて、郵便局の保険募集人のみなさまに向けて講演をしたことがある。ここでいう、郵便局は、昔の特定局に分類される小さな郵便局である。保険募集の担い手は、各局1名ないし数名という規模。保険募集人のみなさまはみなさんとてもまじめで、だけども、予定利率の相次ぐ引き下げで自分たちの商品の魅力度を見失っていたのである。一方で、講演を統括している郵便局の方に聞くと、前述の、養老保険や終身保険を売っていきたいのだが、現場がついてこないというようなことを言っておられた。私が指摘したい二つ目のポイントはココである。

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この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものです