介護保険を考える~その2

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そもそも、要介護状態になったときにどの程度の資金が必要になるのだろう?そこをもう一度考えるべきではないだろうか。実は、介護保障の準備は完全に2極化している。生命保険文化センターの平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」によれば、過去3年間に介護経験をした人に尋ねた場合の介護の初期費用は、「25万円以下と回答している人が約43%いる一方で、100万円以上と回答している人も14%いる」のである。つまり、高額な有料老人ホームに入居するのであれば相応のお金が必要になるが、そうでなければ、一時金で必要になる資金はそれほど多くないという現実が読み取れる。民間の保険で、ことさら、一時的な介護保障を強調する必要もないのではないだろうか。

一方、要介護状態になった後、毎月の支出が増加することは考えられるだろう。前述の調査によれば最も多い支出の増加額は5万円~7.5万円のゾーンである。『一時金はそれほど必要ないけど、介護年金は少しあれば生活が楽になる』と考える人は少なくないと考えられる。そして、もし、保険料払済みの年金保険や終身保険があれば、このニーズに応えられるのではないだろうか。要介護になったので、確定年金で解約返戻金を受け取ることができれば、商品に“介護”という文字が入っていなくても立派な介護保険といえるだろう。

介護保険を考えると近視眼的な見方しかできなくなる必要なのは、介護保障を考えることである。介護保障になると、公的介護保障を考える必要がある。そして、公的介護保障では、介護給付に加えて、介護予防も強調されるようになった。『要介護にならないようにどうするのか』、『要介護状態になったらどういった公的な給付を受けられるのか』、『地域独自の保障制度があるのか』ということと並んで、『いざとなったら民間の(介護)保険でどのような給付を得られるのか』ということを考えるようにしたい。公的介護保険や地域のケアシステムを無視して、民間の介護保険だけを考えるとニーズの押し売りになる可能性がある

この記事は、「週刊インシュアランス」に掲載したものを、出版社の許可を得て転載したものです。

介護保険を考える~その1

最寄りの駅の保険ショップ介護保険のパンフレットをもらってきた。この店では、どのような介護保険を勧めているのだろうと気になったからだ。棚の一番上に配置してあった二つのパンフレットをもらってきた。一つは、少額短期保険の介護保険もう一つは保険会社の介護保険であった。

少額短期保険の介護保険は、要介護2までの状態になったら保険金額の半分を受け取ることができ、要介護3以上になると残りの半分が受け取れる仕組みのシンプルな介護保険であった。パンフレットやウェブサイトで約款等を見たが、この保険は毎年保険料が更新される(上がる)ということが、どこにも書いていないことが気にかかった。保険のプロが見れば、毎年更新するので保険料も毎年変わると理解するだろうが、一般消費者に同じことを求めるのは少し無理があるように思う。

FPとして消費者に伝えたいのは、『この保険、60歳で加入したら、保険料2700円程度ですが、80歳まで継続すると、支払う保険料はトータルで(保障金額度同額の)約80万円になります。それでも保険に加入しようと思いますか?』ということである。医療保険なども同様の質問を消費者に問いかけることがある。『その保険必要ですか?』。

保険会社の介護保険は、『米ドル建介護保障付終身保険(低解約返戻金型)』という保険であった。いまどきの保険といえるだろう。低解約返戻金型は保険料を低く抑えるため。米ドル建てにしているのは、予定利率を引き上げるため。介護保障付終身保険だと、遺族保障にもなるし、介護保障にもなるというわけである。ただし、死亡保障に介護保障を上乗せすると、将来一定の介護状態になった場合も保険金を支払うことになるので保険料は割高になる。保険会社からすると、保険料収入のアップということになるのだろうが、消費者の目線に立ては、単に割高な保険ということになるのではないだろうか。

後半に続く

この記事は、「週刊インシュアランス」に掲載したものを、出版社の許可を得て転載したものです。