ライフプラン分析~30歳・世帯【その3】

ライフプラン分析~30歳・世帯【その3】

世帯の情報

ご主人が30歳の家族のライフプラン分析です。

世帯主 川口 拓也さん(30歳)
配偶者 美咲さん(28歳)
お子さま 夕夏さん(0歳)

キャッシュフロー表の期間を延ばす

現在計算しているのはほんの10年間のキャッシュフロー表です。お子さまが小学校低学年のころまでの期間になります。もっと先のことまで考えて見たいと思うのは、当然ですよね。そこで、キャッシュフロー表の期間を20年まで伸ばしてみましょう。

図表16を見ていただければわかるように、お子さまの教育は細分化されます。

図表16 シナリオの比較

そこで、以下のような、教育に関するライフイベントを設定します。支出の欄に記載がある部分です。月額と書いてあるのは通年発生する金額です。一時金と書いてあるのは、その年に発生する年額を表しています。

収入にも金額が入っています。15歳までは児童手当。高校の期間は、高等学校等就学支援金の金額が入っています。

図表17 教育関連のライフイベント

    11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年
  夕夏様 10歳 11歳 12歳 13歳 14歳 15歳 16歳 17歳 18歳 19歳
    小学校(高学年) 中学校 高校 大学
収入 金額(万円) 12 12 12 12 12 12 11.88 11.88 11.88  
支出 月額(万円) 3 3 3 4 4 4 4 4 4 5
  一時金(万円)           50     100  

2020年4月から高等学校等就学支援金や給付型奨学金が拡大されました

2020年4月から、高校や大学に必要な教育費に対する支援が拡大されました。世帯の年収や家族構成などによって、追加で受けられる助成金や奨学金などもあります。

【参考】

私立高等学校授業料の実質無償化【文部科学省】
高等教育の修学支援新制度【文部科学省】子供の学習費調査【文部科学省】

期間を延ばしたキャッシュフロー表を作成し、年間収支と金融資産残高をグラフにすると図表18のようになります。なお、ここでは、インフレ率は、「ぜロ」に戻して計算しています。

図表18 期間を延ばしたキャッシュフロー表

人生の3大資金

人生には3大資金と呼ばれるものがあります。教育資金、住宅資金、老後資金です。3大資金といわれると、「いくら必要なの?」というところにしか辿り着きません。よくわからないから、「平均するとどのくらい必要?」という質問にすり替わります。

ここまで組み立ててきたキャッシュフロー表の教育費の金額を合計すると1,000万円を超えています。

図表19 人生の3大資金

実は、この部分が一番問題なのです。『人によって金額は異なります』というのが正しい答えなのですが、どのように見積もればよいのかわからないというのが本当のところ。そして、この部分を支援するのが、ファイナンシャルプランナー(FP)なのです。実際に、自分で考えてみて、わからなくなったり、自分で見積もったことが正しいのか確認するときに、FPを呼んでいただくのがよいと思います。

しかし、実際にFPのみなさまがやっていることは、『(メディアなどで)世の中を平均するとこのくらいですよ』と人の不安をあおるようなことを発信したり、こういった給付がありますといった給付やサービスの紹介だったりします。

そこで、キャッシュフロー表が役に立ちます。実際にキャッシュフロー表を作成すると、平均的な話から自分たちの具体的な話にたどり着くことができます。可能であれば、キャッシュフロー表もステップ・バイ・ステップで作成することができれば、地に足の着いたストーリーを描くことができます。

もう少し期間を延ばしてみましょう

20年間のキャッシュフロー表を作成しましたが、なんだか少し中途半端です。夕夏様の大学があと3年残っています。そこで、もう10年延長したキャッシュフロー表を作成します。図表20のようになります。夕夏様が大学を卒業すると家計にゆとりが出てくることがわかります。

図表20 ライフイベントによって変動率は異なる

一方で、教育以外のことも考えないといけないかもしれません。図表20の比較は、いずれもインフレ率を考慮に入れていないものです。インフレ率を考えるとどのようになるのでしょう?72の法則を使うなら、もしインフレ率が2%であるのなら、物価が2倍になる期間は、「72÷2=36年」です。現在、キャッシュフロー表を作成している期間は30年なので、もう少しで36年になってしまうくらいの長さですね。図表20をインフレ率2%にして再計算してみましょう。

図表21 インフレによる影響

インフレを考えなければ、一時的にしか発生していなかった赤字が、13年目以降継続して発生することが確認できますね。でも、考えていないこともあります。それはご主人の給与を30年間ずっと一定にしているということ。インフレ率が2%の中で、ずっと変わらないというのはちょっと常識はずれな設定ですね。そこで、ご主人の給与収入を次のように見積もります。

図表22 給与収入の予想

拓也様 30歳~44歳 45歳~54歳 55歳~64歳
変動率 毎年3%ずつ上昇 毎年1%ずつ上昇 上昇しない
金額 425万円⇒643万円 663万円⇒864万円 890万円⇒890万円

収入の上昇を見積もると、図表23のように収支予想は変わってきます。インフレを見込まなかったとき、インフレを見込んだとき、さらに、給与収入の上昇も見込んだときで全く様相が変わることがわかります。

図表23 給与収入の上昇を見込んだ収支予想

つづく

ライフプラン分析~30歳・世帯【その2】

 第314号 May 14, 2020

ライフプラン分析~30歳・世帯【その2】

世帯の情報

ご主人が30歳の家族のライフプラン分析です。

世帯主 川口 拓也さん(30歳)
配偶者 美咲さん(28歳)
お子さま 夕夏さん(0歳)

補助金や助成金の情報

修正した情報に基づく結果を修正前の結果と比較しておきましょう。グラフになっているとわかりやすいですね。

図表11 シナリオの比較

国の統一のしくみである児童手当、児童扶養手当等の受給や、市町村独自の手当の受給などをライフプラン分析に含めることは大切です。こういった制度は、時代とともに遷り変ってきていますので、最新の情報を基に分析することが必要です。

補助金等の情報は最新のものを使用しましょう

各種手当や助成金は家計の収支に大きな影響を与えます。こういった制度は、時とともに遷り変りますし、世帯の収入や地域によっても異なります。最新の情報を基に分析するようにしましょう。

【参考】

児童手当【内閣府】
児童扶養手当【東京都保健福祉局】保育料・育成料・補助金等シミュレーション【東京都町田市】

手当の金額はいつ決まる?

公的年金のように毎年年金額が変わるものは、予算がついてから年金額が確定します。国会は1月に開催され予算を審議し、与野党のねじれがなければ年度内に予算が成立し、確定額に基づいて4月から金額が変わるというのが通常のスケジュールです。

新しい手当の創設などにおいても予算がついてから決まることになります。4月から金額が変更になるケースが多いのは、国会の動きに連動してるからです。

金額の変動~インフレなど

72の法則というものがあります。資産運用のセミナーなどで、利回りが高いほうが有利であることを説明するのによく使われるものです。『ある利率を考えて72をその利率で割ってください。答えの数字は、資産が2倍に殖えるために必要な期間です』というのが72の法則です。

これは、インフレにもそのままあてはまります。『あるインフレ率を想定してください。72をそのインフレ率で割った答えは、モノの値段が2倍になるために必要な期間です』というのが、インフレ版72の法則です。

図表12 72の法則を使ってインフレを考える

ライフプランニング統合ソフト「FP-MIRAI」では、インフレ率を0%から2%まで、0.5%刻みで設定できるようになっています。

また、ライフイベントによってインフレ率を異なったものに設定する場合が考えられます。そこで、ライフプランニング統合ソフト「FP-MIRAI」では、ライフイベントをインフレ率に連動して金額を変動させるライフイベントと、個別に変動率を設定できるライフイベントに分類しています。

図表3 ライフイベントによって変動率は異なる

72の法則を知っていると便利です!!

インフレ率に代表される金額の増減率は、キャッシュフロー表を作成する期間が長くなればなるほど、大きな影響を及ぼすことになります。影響の大きさは「72の法則」を使うと想像することができます。

ライフイベントとキャッシュフロー表がどのようにつながっているのかを図示したものが、図表14になります。生活費以外のライフイベントは、個別に増減率(マイナスの設定も可能です)を設定することができます。例えば、固定金利の住宅ローンの返済額は、毎年、一定額(増減率ゼロ)になりますし、保険料も同じです。

表14 ライフイベントとインフレ率・変動率の関係

インフレを1%と設定して、どの程度の影響があるのかを見てみましょう。かなりの影響があることがわかります。

図表15 収支・金融資産グラフ

『お子さまが育ってきたら食費も増加する』という考えもあると思います。これは、インフレなどによって金額が増加するのではなく、食べる量が増えるので金額も増えるということです。ライフプランニング統合ソフト「FP-MIRAI」では、こういった金額の変動にも対応しています。例えば、食費を、「お子さまが小学校に行くまでの期間の食費」と「お子さまが小学校に行ってからの食費」と2つのライフイベントに分割すれば対応できます。

家計の支出は価格と消費量できまる

インフレは私たちの管理できるものではありませんが、消費する量は管理できます。

家計の支出=価格(インフレが関係する)×消費量

という関係を覚えておきましょう

つづく

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