介護保険を考える~その1

最寄りの駅の保険ショップ介護保険のパンフレットをもらってきた。この店では、どのような介護保険を勧めているのだろうと気になったからだ。棚の一番上に配置してあった二つのパンフレットをもらってきた。一つは、少額短期保険の介護保険もう一つは保険会社の介護保険であった。

少額短期保険の介護保険は、要介護2までの状態になったら保険金額の半分を受け取ることができ、要介護3以上になると残りの半分が受け取れる仕組みのシンプルな介護保険であった。パンフレットやウェブサイトで約款等を見たが、この保険は毎年保険料が更新される(上がる)ということが、どこにも書いていないことが気にかかった。保険のプロが見れば、毎年更新するので保険料も毎年変わると理解するだろうが、一般消費者に同じことを求めるのは少し無理があるように思う。

FPとして消費者に伝えたいのは、『この保険、60歳で加入したら、保険料2700円程度ですが、80歳まで継続すると、支払う保険料はトータルで(保障金額度同額の)約80万円になります。それでも保険に加入しようと思いますか?』ということである。医療保険なども同様の質問を消費者に問いかけることがある。『その保険必要ですか?』。

保険会社の介護保険は、『米ドル建介護保障付終身保険(低解約返戻金型)』という保険であった。いまどきの保険といえるだろう。低解約返戻金型は保険料を低く抑えるため。米ドル建てにしているのは、予定利率を引き上げるため。介護保障付終身保険だと、遺族保障にもなるし、介護保障にもなるというわけである。ただし、死亡保障に介護保障を上乗せすると、将来一定の介護状態になった場合も保険金を支払うことになるので保険料は割高になる。保険会社からすると、保険料収入のアップということになるのだろうが、消費者の目線に立ては、単に割高な保険ということになるのではないだろうか。

後半に続く

この記事は、「週刊インシュアランス」に掲載したものを、出版社の許可を得て転載したものです。

介護保険より介護保障

介護保険は大切な保険になってきたと思うのですが、少し気を付けてほしいと思います。

誰にとっても、要介護状態になることは避けたいこと。だから介護保険に加入する。

ということに反対する人はいません。一方、

介護保険に支払う保険料はできるだけ低い金額に抑えていたい

ということに反対する人もいないでしょう。 でも、この2つは相反することです。だから、

(1)支払える保険料を決めて、その範囲内で、できるだけ効果的に備える

(2)できるだけ備えを絞り込んで、保険料を抑える

という2つのことを考えます。(1)と(2)はどちらかを行うというより、(1)と(2)を行ったり来たりしながら、自分なりの結論にたどり着くというわけです。

ここまでも間違っていません。

そこで、自分にとっての介護の備え(保障)はどの程度が必要なのか?を合理的に計算することが必要になります。よく雑誌などを見ると、次のような計算が例示されていることがあります。

要介護状態になったときの1か月の追加費用:8万円
要介護状態の期間(=平均寿命-平均余命):8年
必要保障額=8万円×12か月 × 8年=768万円

この方法で、必要保障額を見積もると、過大に金額を見積もることになると思います。『ここが間違い』ということです。

なぜでしょう?

それは、1か月の追加費用が人によって大きく異なるからです。

お金に余裕のある人は、介護にお金をたくさん使うことができ、そのため月々数十万円の費用が掛かる有料老人ホームに入居する

お金に余裕のない人は、できるだけ自宅で過ごし、特別養護老人ホーム(特養)のような公的な介護施設を利用する。介護保険の保障もあるので、月々の費用はそれほど掛からない

特養に入居することだけを取り上げても、支払っている税金の金額に応じて、市区町村が負担する額が異なります。

大切なことは、民間の介護保険が先にあるのではなく
公的な介護保険や市区町村が独自に展開しているサービスや地域ケアを優先して考える。そのうえで不足する部分を民間の介護保険でカバーする
ということ。

『介護保険より介護保障』という視点が失われると、正しい介護保険は選べない

ということです。