ファンドマネージャーに必要なこと

説明力の高いファンドマネージャーの評価は高い

ファンドを運用するファンドマネージャーに必要な資質は、合理的な 論理能力とそれを支える国語力、さらには、意思決定したことを投資家に適切に伝える情報伝達能力といえるでしょう。ファンドマネー ジャーに求められている資質は、得意な能力ではなく、優秀なビジネ スパーソンとしての能力といえるでしょう。

ファンドマネージャーのイメージと誤解

数年前に、ファンドマネージャーといわれる人たちに会って、「ファン ドマネージャーにとって最も大切なことは何ですか?」と聞いたことがあ ります。独立系のファンドマネージャーから、外資系の運用会社のCIO (チーフ・インベストメント・オフィサー)まで。そして、彼らの回答の収束点は、一番大切な資質は「国語力」ということでした。ファンドマネー ジャーといわれる人たちの仕事は、意外に知られていません。難しい数式 を解いているイメージ、電話で売買を行っているイメージなどがあるかもしれませんが、これらのイメージは適切ではありません。

確かに、難しい数式を解くことや、数値計算が求められる部門もあります。 ただし、そういった仕事はファンドマネージャーの一般的な仕事ではあり ません。つまり、ファンドマネージャーの仕事に数学の知識や能力が、必 ずしも必要ということではありません。

英語はとても大切な能力かもしれません。特に、外資系の運用会社ではコ ミュニケーションの中心は英語ですから、英語ができないと情報を入手できないということになります。社内の情報だけでなく、社外の情報もほとんどが英語で配信されますから、英語はとても大切です。

英語より国語

日本のファンドマネージャーにとってさらに大切なのは、国語です。な ぜなら、投資家の大半は日本語を母国語とする人たちであり、投資家に対する説明責任は日本語で行う必要があるからです。日本語で正確な文章を 書くことができ、日本語を使って運用の成果を正確に伝えることができる 能力が一番大切ということです。

つまり、資産運用に関する意思決定を合理的に行うことができ、そして、 それを正確に伝えることができるというのがファンドマネージャーの必須条件なのです。

もっとも、「資産運用に関する意思決定を合理的に行うことができる」 と、「自分の行った意思決定を正確に伝えることができる」ということは 不可分の関係にあると思います。とすれば、「自分の行った意思決定を正 確に伝えることができる」ファンドマネージャーは、「資産運用に関する意思決定を合理的に行うことができる」ファンドマネージャーであるとい うことになりますね。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

要因分析

運用の方針結果を重ね合わせて分析する

アクティブ運用のファンドのパフォーマンスを詳細に分析するとき には要因分析が用いられます。ベンチマークに対しての超過収益を、 資産配分要因、銘柄選択要因として分解します。ファンドの運用方針 を重ね合わせると、運用結果が運用方針を実現したものになっている かを検証できます。

要因分析とは

アクティブファンドの良し悪しを測る方法の一つに要因分析があります。要因分析とは、ファンドのパフォーマンス(騰落率)がどのような要因によってもたらされたのかを示すものです。これは企業が決算発表などで開示する、業績(利益)の増減の要因分析に似ています。企業の業績分析では、売上が増加した、宣伝広告費の圧縮を図った、等々の理由が積み上げられます。その結果、投資家は、当期の純利益がどのような理由で、どの程度増減したのかを知ることができます。

ファンドにおいても同じことが行われています。それが要因分析というものです。ファンドの基準価額の増減(パフォーマンス)の変動の理由を、原因にまでさかのぼって分析するというものです。

資産配分要因と銘柄選択要因

数値を使った例で見てみましょう。ここでは、ファンドのパフォーマンスの基準となるベンチマークのリターンが4.0% となっています。よりイメージを具体化させるために、このファンドは、日本株式に投資するファ ンドで、TOPIXをベンチマークに採用していると考えましょう。そう考えると、4.0% はTOPIXのリターンになります。

資産配分要因は、業種ごとの投資比率の調整によってもたらされた超過収益(リターンの上乗せ分)を表しています。例えば、ファンドマネージャーが、輸送用機器は見通しがよくないのでTOPIXより低い割合で保有し、その代わりに、小売業はTOPIXより高い割合で保有しようという判断をしたとします。その考えどおりに市場が動くと、資産配分要因はプラスになり、そうでなければ資産配分要因はマイナスになります。

銘柄選択要因とは、個別銘柄からもたらされるリターンです。例えば、このファンドがHONDAの株式を、TOPIXの割合より多く保有したとしましょう。輸送用機器の銘柄の平均よりHONDA株の上昇率が高いと銘柄選択要因はプラスになります。その逆の場合は、銘柄選択要因はマ イナスになります。

手数料はファンドの運用能力と切り離して考えるとよいでしょう。ファンドの運用能力そのものは、「d.手数料控除前リターン」と「a.ベンチマーク」の差と考えます。そして、どの程度のコストでファンドを管理
できるかという、ファンドの管理能力までも含めた全体のパフォーマンスを測るときは、「f.手数料控除後リターン」と「a.ベンチマーク」の差と考えればよいでしょう。ちなみに、基準価額の騰落率は、「f.手数料控除後リターン」です。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。