グロース株とバリュー株~その2

(前半部分はこちら)

バリュー株とは、グロース株の反対と考えるとわかりやすい。将来の成長はあまり期待できない。だから、現在の利益の相当部分を配当として還元する。世界的に見れば、コカ・コーラやエクソンモービルなどがバリュー株に分類される。バリュー株は、本体も成熟したビジネスをしている企業が多く、直近1年くらいの配当に重きが置かれるので、グロース株に比べて値動きの幅は小さい。つまり、リスクは低い。インフレになっても、グロース株ほど影響を受けない

バリュー株とグロース株の特徴が理解できると、バリュー株投資とグロース株投資の意味が理解できるグロース株投資とは、将来の企業の成長に投資することである。成長を見誤ると投資は失敗する。今から20年ほど前、筆者は証券アナリスト向けの研修に参加したことを覚えている。そのときの分析対象は、アマゾンであった。「アマゾンは10年先に大化けしている企業になっていると思うか」という課題が出されて、私の回答は、「NO」であった。結果は、ご承知の通り、アマゾンは世界を代表する大企業になった。グロース株投資のアナリストとしては、筆者は失格ということになる。

バリュー株投資は、その企業の適正価格を算出し、現在の株価がその価格以下であれば買い、以上であれば売りという投資スタイルである。ここで、大切なのは適正価格をどのようにして算出するかということである。アクティブ運用の投資信託などの目論見書に、「個別企業の適正価格を分析して・・・」というような記述があればバリュー株投資ということがわかる。

正確な統計情報があるわけではないが、アマチュアの投資家の方はグロース株投資プロの投資家の方はバリュー株投資が多いように思われる。

株式投資で大切なことは、その企業の何に投資しているのかを意識することである。その会社の成長に投資している(グロース株)のか、その会社の評価に投資している(バリュー株)のかということである。トヨタ自動車に投資して、株価の急成長を求めるのはナンセンスである。上場したばかりの企業に安定を求めるのもナンセンスである。

経済が回復してくると、それに先行して株式市場は上昇する。そして、経済が好景気になると、株式市場は右肩上がりで上昇するというより、上下動を繰り返すことが多い。そのようなときに、着目してほしいのが、グロース株・バリュー株の相対的な動きである。

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

グロース株とバリュー株~その1

2021年に入ってから株式市場は一進一退を繰り返している。マーケットの動きを見ていると、「バリュー株」、「グロース株」という言葉が多く出てくるようになった。“今日の市場は、景気の過熱感への警戒から、グロース株が値を下げ、代わりにバリュー株が値を上げました”というような感じである。

バリュー株とグロース株の明確な定義はない。ただし、バリュー/グロースは株価の形成に影響を及ぼしているという意見があるように、株式市場の重要なウォッチ・ポイントである。グロース株は、成長している企業である。利益は赤字、あるいは、利益があっても配当に回さず投資に充てる。株価の源泉は、配当であったり、FCF(フリー・キャッシュフロー)であったりする。将来に高い配当をもらうため、あるいは、高い内部留保を確保するために、現在を犠牲にするイメージである。したがって、グロース株の評価は、どのくらい先に、どの程度の配当やFCFを生み出すことができるかという点に絞られる。もちろん、将来のことなのでわからない。1年先より、10年先の方がわからない。わからないということは、言葉を変えるのであれば、「リスクがある」ということである。30年前であればマイクロソフトはグロース株であった20年前であれば、アマゾンはグロース株であった10年前であれば、Teslaはグロース株であった。当時、これらの企業の株式を購入した人は、将来に成長することを期待して株式を購入したわけである。将来の配当やFCFを現在の価値に割り引くときに、割引率が高いと株価は低くなる割引率は、金利(イールド)で決まり金利はインフレの影響を受ける。したがって、インフレになるとグロース株は値を下げる

(つづく)

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