エンディングではないノート②

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さて、エンディングではないエンディングノートはもう一つ考えられる。それは、現役世代にとってのエンディングノートである。このノートの最後は、エンディングではなく、リタイアであろう。だから、「リタイアノート」というべきなのかもしれない。このリタイアノートは、社会人になってからリタイアするまでのことが書き込むことができればよい。

エンディングノートが爆発的に支持された理由は、シニアにとって気になることがそこにたくさん詰まっていたからである。内容は自分たちで埋めてくださいというものノートなので、そこにかいてあることは道標だけなのであるが、そのノートを手にすると、指示された内容をすぐにでも書くことができる自分がいるように錯覚するのである。

そう考えると、リタイアノートの内容も自ずと決まってくる。結婚、子育て(教育)、住宅購入といった、よくあるライフイベントを並べておけばエンディングノートよりも簡単に作ることができるだろう。こんな簡単なノートどこにでもありそうであるが、案外、「ない」のである。

節約の話には時間軸がないのでノートにならない。FPが作成するキャッシュフロー(CF)表には時間軸はあるが、数字の情報だけである。時間軸を持った、ことばになった希望や予想の集まりとしてのノートがあればきっと役に立つと思うのであるがいかがであろう。

ところで、ここでは指し示す名称がなかったので、便宜的に「リタイアノート」という名称を使ったが、もう少し気の利いた名前がよいのかもしれない。私が所属しているシニアコンシェルジュ協会のエンディングノートは、「シニアライフ・ノート」という名称にしている。これを参考にするのであれば、「ライフプラン・ノート」とでも名付けるのが適当である。そして、このノートができあがると私はこんな説明をするだろう。『このノートは、現役世代のみなさまがライフプランを考えるノートなのです』。

 

エンディングノートを使って考える、終活分野におけるFPの役割

エンディングではないノート①

エンディングノートの必要性について話すときの私の説明はこうである。『現役世代はわかりやすいのです。結婚して、こどもができて、教育の問題があり、家を買って、しばらくすると、保険を見直し、老後に備える。多くの人は似たような道をたどることになります。でも、シニアになると様子が変わります。築いた財産も異なりますし、就労や健康の状況も異なります。資産運用の状況も違うでしょう。シニアになると、平均的なライフプランと自分のライフプランのかい離は大きくなる一方です。だから自分のライフプランを整理する道具が必要なのです。これがエンディングノートです。エンディングノートとは、エンディングのためのノートではなく、エンディングに辿りつくまでの期間のことを考えるノート、つまり、シニアのためのライフプランを考えるノートなのです』。

ところで、「エンディングノート」という名前の評判はよろしくない。シニアのみなさまからも、『どうして葬儀のためのノートを用意しないといけないの』という苦情を聞かされることがある。でも、エンディングのためではなく、エンディングまでの生きるためのノートというと、少し表情をやわらげてもらえる。

保険会社にとって、エンディングノートはよい営業ツールになると思うのだが、積極的に活用している例をあまり聞かない。エンディング(終活)のことをあまり知らないので、エンディングとの対比でシニアライフのことを話すことに慣れていないのかもしれない。相続のことを話さなければという意識が強すぎて、相続の話ばかりになってしまっているのかもしれない。クロージングまでに時間がかかりすぎるので、使うことを回避しているのかもしれない

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この記事は、インシュアランス生保版に掲載されたものを、許可を受けて転載しています。